※※ この本を読んで一言 ※※

数々の異質な作品(笑)を世に送り出して私たちを楽しませてくれるメフィスト賞受賞作

そんなメフィスト賞受賞作の中にあってもこの作品をさらに異質に感じるのは、私がミステリの素人だからでしょうか・・

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さて今回読んでみるのはメフィスト賞受賞作である秋月涼介さんの「月長石の魔犬」です。

 

タイトルを見て、怪物や魔界が出てくるファンタジー物だと思いましたが、れっきとしたミステリでした。

 

細かく章が分かれていて、章ごとに一人の登場人物にスポットを当てて、物語全体が進んでいくという一風変わったスタイルです。

 

またストーリーもなかなかに凝っています

自殺したい少女と殺人をする「先生」の存在から始まり、次々と起こる猟奇的殺人事件、猟奇的殺人事件の犯人を狩る「見えざる左手切断魔」、不思議な雰囲気をたたえるオッドアイの風桜など、作中では常にミステリアスな雰囲気が漂っています。

 

読み終わってみると・・いつも私は「メフィスト賞は懐が深い!!」と絶賛していますが、これはメフィスト賞受賞作らしくない気がします。

ライトノベル的というか、もはやキャラモノ小説です。

 

今まで読んだメフィスト賞受賞作の中にも、高里椎奈さんの「銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談」や西尾維新さんの「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」があり、ライトノベル的やキャラモノがいけないというわけではないです。

 

しかしこの作品はなぜかキャラクターがあまりにマンガ的なのが気になってしまいます。

名前からして”こんな奴いねえ”というくらいマンガ的です。

 

そして主要登場人物はみんな美男美女で、オッドアイの不思議な魅力のアクセサリー職人とその押しかけ女房的な美人女子大学生、美人監察医で殺人犯、かなり間抜けな美人キャリア警察官、欲望のない美少女など、ライトノベルもかくやというくらいのキャラクターのオンパレード。

 

登場人物の性格もステレオタイプと言っていいくらいです。

そしてなぜか鼻につきます(汗)。

特に静流と冴葉と悠璃と京香と・・女性のほとんどですね(笑)。

 

またこの作品の展開は”長編の序盤”という感じで謎を残して終わります。

調べてみたら、この青紫シリーズ?(それとも沙遊良シリーズ??)はまだあと3冊はあるようなので、多分長編を想定して執筆したのでしょう。

 

その肝心な展開も、悠璃のいう「先生」が最初は青紫かと思っていたら実は沙遊良だっというのはちょっと驚きましたし、「月狂の魔犬」の被害者の3人が全て別の人物に殺されたというのも意外でしたが、なぜか思い切り印象が薄いです。

 

また警察があまりに無能すぎるのも目に余ります。

展開の都合上、そうならざるを得ないのでしょうが、殺された犬について調べない警察はひど過ぎます。

そして監察医が毎回殺人現場に臨場するというのもどうやらドラマの中での話のようなので、沙遊良が犯した殺人現場に沙遊良の髪の毛が落ちていても、沙遊良が殺人現場に検視で臨場するので誰も不思議がらないというもの現実にはあり得ないみたいですね。

 

帯に『欲望と退屈。犬首屍体と救い。究極の境界線ミステリ登場!』とあり、これは沙遊良と悠璃の関係をだったり、作中にも出てくる正常な人・異常な人についての事だと思います。

そして審査員の方々にとってはこの作品は見るべきものがあり受賞作になった訳なので、私の読解力の問題で面白さを感じないのかなとも思います。

 

いろいろ不満を書いてきましたが、小説にリアリティを求めすぎるのも良くないのは分かっています(笑)。

なので青紫シリーズ?の続編では「面白いありえなさ」に昇華され、評価がガラッと変わるかもしれません。

そうなることをぜひ期待しています!

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆

ラノベ的  ☆☆☆

マンガ的  ☆☆☆☆

あり得なさ ☆☆☆☆☆