※※ この本を読んで一言 ※※

行ったことのない国の文化、風土を感じさせてくれて、その中にミステリーを盛り込んだ贅沢な一冊だと思います。

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インターネットでミステリー小説を検索して見つけた作品で、梓崎優さんの作品を初めて読むので、どんな作品かとても楽しみにして読み始めました。

 

語学が堪能な斉木が海外の国を取材や情報収集のために訪れた時に遭遇するミステリーと謎解きは、その土地の文化や風俗に根付いたモノでなかなかに新鮮でした。

 

それにしても行く先々で殺人事件や謎に遭遇する斉木は、コナン君や金田一君と同様の死神体質ですね。

 

5つの短編から成る連作で、5つ目の「祈り」が全体のネタバレ的・・といかまとめ的な短編でした。

ちなみに「祈り」の中には絶対になにか「仕掛け」があると思っていましたが、これを読んだとき「ほ~・・そうきたか~!」と感心しました。

 

全体に綺麗な文章で4編が語られているうえに、さらにまとめ的な「祈り」で綺麗な終わり方をしているので、記憶が戻っていないが、斉木はこれからは記憶が戻ると思わせる希望が持てる終わり方だったと思います。

 

4つの短編の感想ですが、最初の「砂漠を走る船の道」では、久しぶりに叙述トリックに引っ掛かりました(笑)。

まさかメチャボがラクダだったとは!!

 

殺人の動機は、私利私欲のためというのは日本国民も砂漠の民も同じなのだな~と変なところで感心してしまいました(汗)。

しかし死体を砂漠の中の目印にするために、連続殺人を犯すというのは砂漠ならではですね。

 

「白い巨人」はサクラは日本人ではないのは最初からバレバレでしたが、アヤコの消失トリックが「・・ナニコレ??」って感じで信じ難かったです。

 

でもスペインの風車の描写がとても鮮やかで、しかも大団円的に終わったので、この短編はこれで良かったと思います。

 

「凍れるルーシー」は私には謎のまま終わりましたし、読んでいて気分の良くない短編であったと思います。

 

私にはスコーニャは狂信的で独善的に思えます。神(聖人)を信じ神(聖人)に仕える者であっても、神(聖人)のために人の命を奪うことはあってはならないと思う・・というのは平和に日本で暮らしているからこそ思える事なのでしょうか?

 

これを読んで宗教観の違いというのは、かくも相容れないものであるのだなと実感しました。

 

「叫び」も「凍れるルーシー」と同じく、文化の違いは如何ともし難く理解できないものだと思いました。

最後まで生きて名を残す事がデニムの集落では何よりも重要な事なんですね。

 

ちなみに私が密林の奥地でエボラのような感染症を見たら、恐怖のあまり真っ先に逃げ出すと思います。

 

梓崎さんの作品は余り多くないようですね。

単行本としては「リバーサイド・チルドレン」があるようなので、これはそのうち読んでみたいです。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆

驚き   ☆☆☆☆

文の綺麗さ☆☆☆☆

国際色  ☆☆☆☆☆