※※ この本を読んで一言 ※※

当時の時代背景や登場人物の設定をうまく生かし、ハラハラドキドキの展開、緻密に練られた伏線、そして最後に綺麗に収束する読み応えのあるストーリー。

殺人事件ではないですが、これぞまさに本格ミステリ小説です。

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下村敦史さんの作品を読むのは初めてです。

江戸川乱歩賞受賞の作品という事で楽しみにして読み始めました。

 

そして私が初めて読む中国残留孤児の物語でした。

 

始まりは謎だらけの密入国のシーンから始まり、その時には先の展開が全く読めませんでした。

そしてやがて中国残留孤児の話だと分かり、ミステリ小説の題材としては変化球に感じました。

しかし主人公が盲目であるがゆえの絶望感や緊迫感があり、また残留日本人孤児の設定を生かしたアッと驚く展開、同時に娘との確執、孫の腎臓移植など、いろいろな要素が複雑に絡まりながらもラストに綺麗に収束していく、まさに本格ミステリと言える作品であったと思います。

 

ラストもきれいにまとまった、まさに大団円と言えるいい終わり方だったと思います。

 

疑問に思ったことは終盤、本当の兄の徐が、別の病院で村上の代わりに腎臓の適合検査を受けて合格だったとのことです。

過去に本物の村上が検査を受けて不合格になったことはことを黙っていたようですが、検査結果の情報は病院同士では共有されていないようですね。

 

プライバシーの問題で敢えて共有していないのか、それとも検査自体は納得のいくまで何回も受けることができるものなのでしょうか・・とにかく問題にならず夏帆に移植できそうなので何よりです。

 

また徐は物語後はどういう扱いになるのでしょうか❔

始まりは密入国ですから日本での対応がどうなるのでしょうか。

また日本にいても蛇頭からも狙われるでしょうし・・前途多難だと思いますが、夏帆への移植だけは済ませてほしいですね(汗)。

 

さて読み終わってから知ったのですが、この作品が下村さんのデビュー作だったんですね!

30代前半でデビューと言うことは10代や20代の頃から中国残留日本人孤児の問題や数々の社会問題に対して関心や疑問を持ったりしたのでしょう。

 

さらにインターネットで検索すると、「下村敦史 家」という候補が出るので調べると、下村さんのこだわりの家が紹介されてました。

作家として成功する人はやることも感性もスゴいことを実感しました!!

 

これだけ緻密なストーリーが書ける作家さんなので、別作品もぜひ読んでみたいです。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆☆☆

緊迫感  ☆☆☆☆☆

暗さ   ☆☆☆☆

終わり方 ☆☆☆☆☆