※※ この本を読んで一言 ※※
若い女性の心理が分からないおじさんにしてみると、読んでいて何だかくすぐったいような気恥ずかしい気分になります。
それでいて読者の裏をかくような展開(笑)。
さすが懐の深いメフィスト賞受賞作なだけあります!
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図書館の魔女」に続き、メフィスト賞受賞作です。
図書館の魔女」が内容的にもボリューム的にも大作だったので、もう少し肩の力を抜いてやってるん読めるような作品を選びました。

表紙やタイトルからして何だかポップな感じで、少しウキウキしながら読み始めました。
大雑把に言ってしまえば、奈良の大学に通う女子大生の恋愛物語です。
タイトルの「恋都」も当然「古都」の奈良にかけています。

ちなみに「古都」と「狐」の組み合わせと言えば、京都の伏見稲荷を思い浮かべ、奈良に狐のイメージはないのですが、当然奈良にも狐にまつわる寺社仏閣はあるのでしょう。

読んでいる途中、若い女性の気持ちの分からない私は、終始主人公である「私」は恋愛に飢えているという印象を持ちました(汗)。

 

しかしそれは「私」が恋に対して真面目というか真剣だということと思います。

そもそも作者の北夏輝さんがまだお若く、この作品の執筆は20代前半かと思うので、「私」の気持ちは、若い女性の偽らざる一面なのでしょう。
そう思いながら若い女性とはこういうものかな~と思って読んでました。

そして読み終わって・・最後はちょっとポカーンとした後に、「えっ!これで終わり!?」というツッコミをしてしまいました。
まさかあまりにも意外な結末に唖然!!
私の予想を裏切る衝撃の展開でした!!

「私」は恋愛に対して不器用な女の子なので、1人で盛り上がって狐さんや揚羽さんの気持ちも考えず突っ走っちゃったのかな~と思わなくもないですが、ここは物語ですから、ハッピーエンドで締めくくって欲しかったです。

それとも初めから続編の予定があって、敢えてこの結末にした作品なのでしょうか?
狐さんシリーズがあるようなので、そこに続きがあるのでしょうか?・・とにかく続きが気になります。

この物語のもう1人の主人公である狐さんは「この世に在らざる物の怪」と予想してたんですが、予想に反して顔に怪我はしていたものの普通の若者でした。

ただいくらマジックが得意とはいえ、いきなり駅前の広場で見事な口上とともに大道芸を始めるなんて、もともと狐さんは社交的で度胸もある人のようですね。
そして知識も豊富で頭の回転も速い毒舌キャラなので、顔に傷を負わなければ、おそらく長身イケメンな俺様キャラに育っていたことでしょう(笑)。

いろいろ思うところはありますが、全体的には面白かったと思います。
そして以下に私の細かな雑感を書いていきます。

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主人公の「私」の名前は結局最後まで明かされませんでした。
これは読者、特に女性読者が「私」に没入できるようにとの配慮でしょうか。
男性読者の私としては主人公の「私」に名前があった方がしっくり来るんですけどね。

 

この物語は「私」に限らず、登場人物の誰一人としてフルネームが判明してませんけどね。
狐さんは言うに及ばず、揚羽さんも本当の苗字かどうか物語の中では分かりません。
そんな中で、飯田さんは本名であると思われる稀有な人です。


そしてその飯田さんが都合よすぎるキャラクターです。
とにかく出会います。

奈良の有名な行事に参加していれはたいがい居合わせるでしょうが、街中で会い、行事で会い、狐さんの運ばれた病院は飯田さんが昨年まで勤めていた病院・・いいように利用されてます。


この作品は奈良の観光PRに一役買っていますね。
これを読んだら奈良の寺や神社の行事を見に行きたくなります。
北さんは奈良女子大学出身ということなので、実際に行事に参加した体験をもとに執筆したのでしょう。

なお私も奈良は好きでメジャーなお寺や博物館に行ったことがありますが、作中にあるような年中行事に参加したことがないです。
飯田さんのように定年後に悠々自適な生活をしながら、お寺などの年中行事に参加できれば最高ですね。


「私」は自分の容姿(顔や胸)に自身がない事を散々嘆いています。
そんな「私」が作中の采女神社のエピソードで「私」が溺れた時に見た夢(?)の中で采女様を
『(略)ゆとりの多い衣装でも肥満体型であることを隠せていない。あえて分かりやすい表現を使うと、采女様はブスでデブだった。』
と言い切ってしまうあたり、「私」ってなかなか残酷だなと思いました(笑)。

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さて衝撃的なラストを迎えて、果たしてこの後で『私』はどうなるのか、狐さんはどうなるのか・・とても気になるのでそのうち続編を読んでみたいです。

(個人的評価)
面白さ   ☆☆☆
登場人物  ☆☆
結末の驚き ☆☆☆☆
奈良の良さ ☆☆☆☆☆