※※ この本を読んで一言 ※※

インターネットで「ミステリー小説」を検索したときに、数ある海外の作品の中からこれが紹介されている理由がよく分かりました。

読んで良かったと思える作品でしたが、これほど登場人物が許せないと思える作品も多くはないと思います。

※※※※※※※※※※※※※※※

 

この作品はインターネットでミステリー小説を検索してヒットした作品です。

監禁された女性の物語という事でちょっと敬遠していましたが、やはり気になったので買ってみました。

結果、読んでよかったと思える作品でした。

 

海外の作家の翻訳モノの面白さは「原文の面白さ」プラス「翻訳者のセンス」によるところも大きいと思います。

この作品における橘明美さんの翻訳がとても読みやすく、そして読み手を引き付ける文章でした。

 

第一部の冒頭に誘拐され監禁されたアレックスですが、最初からアレックスは訳ありな女性としての雰囲気があり、この誘拐・監禁の裏に何か事情があることが伺えます。

 

そして第二部でアレックスが逃げ出して次々と人を殺していくのも、何か事情がありそうな雰囲気を漂わせています。

ラストの第三部でなぜアレックスが自殺したのか、そしてなぜアレックスが人を殺し続けたのか真相が明るみに出ます。

 

この物語は部が変わるごとに、「アレックスの立場」、言い換えれば「物語」が反転します。

これは驚きました。

 

そして、読む前は女性が監禁される物語で嫌な気分になるかと思いきやそんなことは決してなかったです。

第一部より第二部、第二部より第三部と、後半になればなるほど嫌な気分になります!

監禁よりも嫌な気分になる展開が後半に待ち受けているとは驚愕です(笑)。

 

それにしてもアレックスは周りの人間に恵まれなかったのがかわいそうです。

人間のクズである異父兄と母親はもちろん、暴行を知っていた学校の先生や友達も同罪に思えてきます。

 

またアレックスの被害者(=加害者)たちの言動もどこか無責任・自分勝手・自己弁護ばかりで、読んでいて嫌な気分になります。

これはフランス人の特徴を敢えて端的に表しているのかもしれませんね。

 

また途中ではヴィダールの尊大さやアルマンのタカリと言える倹約ぶりも見ていて嫌になります。

もっともラストではアルマンがカミーユへ絵のプレゼントしたことや、ヴィダールとカミーユが握手して、ヴィダールが物語を締めくくるセリフを言ったことで、だいぶ二人の印象がよくなりましたが(笑)。

 

ただヴィダールについては、そもそも最初からカミーユたちの意見の通りにトラリユーの確実な確保を優先していれば、もしかしたらトラリユーからアレックスの監禁場所を聞き出し、自力でアレックスが逃げる前にアレックスを確保できたかもしないと思うと、なんともヴィダールの最初の判断が残念に思います。

 

しかしアレックスが誘拐の被害者の状態で警察に確保されたら、その後のアレックスによる殺人は起こらなかったかもしれない・・そう思うと物語としてはつまらなくなったかもしれません(笑)。

 

最後に・・いつも思うことですが、本の裏表紙のあらすじのことです。

私は絶対に裏のあらすじは読まないようにしています。

今回も見ることなく読み始めました。

 

商売的に序盤のあらすじを書くのは全く知らない読者を惹きつけるのにはいいでしょう。

しかしあらすじ以外の事を書いてあることはどうなのかと思います。

ネタバレは書いてないにしても、「衝撃の事実が・・」とか「怒涛のごとき展開・・」と書かれるだけで、後半どうなるのか予想がついてしまいます。

 

今回の

『孤独な女アレックスの壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。』

は明らかに書きすぎです。ネタバレレベルぎりぎりだと思います!

 

第一部でアレックスは孤独で何やら秘密がありそうな女性で、誘拐・監禁され自力で逃げ出します。第二部では被害者だと思ったアレックスがシリアルキラーだと判明し、監禁されていたのもそれが原因で、その後次々と人を殺していきます。第三部ではアレックスが殺してきた理由は実は復讐で、それは兄からの性的虐待と硫酸による傷害(?)が原因だった・・と裏表紙のあらすじがそのまま当てはまります。

 

もしあらすじを読んでいたら、第一部を読んでいる最中から、「でもアレックスも怪しいじゃん?どうせ人に言えない何かがあるんでしょ!」と思うでしょうし、第二部を読んでいても「この後、何かどんでん返し的な何かがあるんでしょ!」と思ってしまうことでしょう。

 

しかし本が売れない昨今では、これくらい仰々しく裏表紙に書かないと手にも取ってもらえないから仕方ない事なんでしょう。

そして書店で売られている本の帯にも仰々しくネタバレに近いことが書かれているのも手に取ってもらうための作戦なので仕方がないと思います。

 

でも書くのはせめてあらすじだけに留めていただければと思います。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆☆☆

登場人物  ☆☆☆☆

ミステリー ☆☆☆☆☆

胸クソ度  ☆☆☆☆☆