※※ この本を読んで一言 ※※

紛うことなきキャラ小説!

”田舎育ちで人との距離感バグった昆虫食を生で食べちゃう美少女JK探偵役”爆誕(笑)。

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この本を知ったのは、私が二つ前に読んだ太田忠司さんの「名古屋駅西 喫茶ユトリロ 龍くんは美味しく食べる」を読書の先輩に話したとき、読書の先輩から「名古屋が舞台の小説なら「スガリさん」がある」と教えていただきました。

 

そして早速検索し、平田駒さんの「スガリさんの感想文はいつだって斜め上」を発見!

タイトルからすると読書感想文を題材にしているようなので、これは私は絶対に読まなければと思いました!

 

インターネットで調べると「5分シリーズ+」という一見ラノベ的な枠で出版されており、児童書がベースのようでした。

もしかして近くの図書館にあるかと思ったら、本当に児童書の棚にあったので早速借りて読みました。

 

そして読み終わって・・若干タイトル詐欺的なところもある気がしますが、タイトルにつられ本を手に取らせた出版社や平田さん作戦勝ちです(笑)。

 

タイトル詐欺は前半は顕著ですが(汗)、後半はスガリさんの感想文にも「こうきたか~」と思うところはあり、タイトルに納得できるところはあります。

 

さて物語は日常系の謎やトラブルを聡明なスガリさんと背の高いが気弱な杏介で解決していくというシリーズ物のようですね。

 

メインの探偵役のキャラ付けも大変だな~と思いつつ、その相棒(?)役も魅力的でないとどうも物語に集中できないものですね(汗)。

 

「スガリ」の名前はどうしても「のだめカンタービレ」の「のだめ」を彷彿とさせます。もっとも「スガリ」は本名と虫の名前(すがり)のダブルミーイングなので「のだめ」より凝ってますけどね

 

また作中ではスガリさんに特徴的な話し方やしぐさをさせようとか、杏介にはもじもじしながらも印象的なセリフを言わせて活躍させようというのが目につくのは私だけでしょうか。

 

スガリさんは実は気を遣いすぎて人付き合いが苦手、もっと言ってしまえばある意味コミュ障的に感じます。

 

人との距離感が近すぎているかと思ったら、高校や居候の戸部家ではいまいち周囲に馴染んでいないようだし・・どこかちぐはぐです。

 

田舎育ちで他人との距離が近すぎて、それをスガリさん自身が自制して名古屋での学校生活や居候の戸部家では変な距離感があるのではないか。

 

エピローグではスガリさんは杏介が感想文を読んでいることに喜んでいるようですが、読む側の杏介のことを考えていないのがちょっと怖いと思いました。

杏介自身はうれしいと思いながらも、少しプレッシャーに感じてるようでしたし・・

 

終盤からエピローグにかけて、スガリさんの両親が離婚したり、居候先では無理していそうに思えるのは、もしかしたらスガリさんは人には言えないつらい過去を抱えているのではと思いました。

 

今後スガリさんの過去がどんどん語られていくのでしょう。

 

さて肝心の感想文のことですが、前半の夏目漱石「こころ」を題材としています。

しかし私は残念ながら読んだ事がないので判断できませんが・・スガリさんの感想は果たして斜め上なのでしょうか?

 

そもそも感想文は本人の感じたことをそのまま言語化すればいいわけですし、読者が作者を上から目線で見ようが重箱の隅をつつこうが揚げ足を取ろうが自由。

それこそ感想なんて十人十色です。

 

だからスガリさんの「こころ」の感想は独特ですが斜め上という感じはないです。

 

杏介も「こころ」の感想を『そこ・・・・・・かなぁ?』と言っているのは、平田さんが「揚げ足取りなのは分かってて書いてますよ」と言って読者からのツッコミに対して予防線を張っているように思えます。

 

後半は新美南吉の「手袋を買いに」が題材となっているので、未読の私は後半を読む前にまず「手袋を買いに」を読みました。

そして私とスガリさんとの感想の違いを比べてみようと思いました。

 

== 以下が私の「手袋を買いに」を読んだ直後の感想です ==

人間が怖いと思っている母狐はなぜ子狐を一人で行かせたのか。

そしてどうせなら片手だけじゃなく全身人間の子にするべき。

そして人間の格好で昼に行け。

帽子屋は金さえもらえれば誰にでも物を売るドライな商売人か。

それとも過去にも狐に化かされた経験があって慎重になっている善良な商売人なのか。

 

そもそもお母さんの友達は人間の家にある物を勝手に盗もうとして追いまわされた。

しかし狐は普通は人間の事情など分からないから仕方ないし、人間も狐に食糧を盗まれたら怒る。分かり合うって難しいことの比喩か。

新美さんは人間の現実(優しさと残酷さの両面)を描きたかったのか。

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そして私はスガリさんの感想を

 ・家の中から聞こえた親子の会話は子狐の死亡フラグ。

  つまり子狐はそのうちこの優しそうな子に捕まるという未来予想。

ではないかと思っていました。

 

しかし作中のスガリさんの感想を読んで目からうろこが落ちる思いでした(笑)。

子狐に「シャッポ」を理解できたことは確かに「言われてみれば!」というくらい盲点でした。

母狐の「レベル」や「MP」が足りないという発想はなかったです!!これは面白い発想!!!

この話自体が「狐の人間に向けた小芝居」には「なるほどそうきたか~」と思いました。

 

さて最後にスガリさんがバイトしている「揚輝荘」の「べんがら」は実際にあるとは知りませんでした。機会があればぜひ行ってみたいところです。

 

この作品は面白く読めましたので、2作目も読んでみたいです。

そして斜め上の感想を読みたいです。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆☆

読みやすさ ☆☆☆☆☆

感想文   ☆☆☆☆

名古屋感  ☆☆