※※ この本を読んで一言 ※※

奥泉光さんの趣味を生かした作品なのかもしれませんが・・なんかいろいろもったいないと思える作品でした。

次は奥泉さんの本格ミステリーをぜひ読んでみたいです。

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(注意:この「シューマンの指」をこれから読もうと思っている方は、このブログには「シューマンの指」を読み終わってからお立ち寄りいただいた方がよろしいかと思います。

予備知識が一切ナシのほうが「シューマンの指」を10倍楽しめますから!)

 

奥泉光さんの作品を読むのは初めてです。そしてこの作品はインターネットで面白そうなミステリー小説を探していて、そこで見つけました。

 

そしていつも通り、紹介文や帯の説明、裏表紙のあらすじなど一切見ずに読み始めました。

 

序盤から後半に入っても正直、読むのがつらかったです。

文章は「音楽」について、とりわけ「シューマン」についての音楽論が多くを占めます。

もうそれだけで理解することが難解なため、字面だけ追って内容をよく理解しないまま進みます。もっとも音楽論の部分を読み飛ばしてもストーリーにあんまり影響がないと思いますけどね。

 

それでも最初に切り落とされた修人の指が復活する事が謎として示されているので、その結論が知りたくてずっと読み進めました。

そして中盤にはピアノを弾く修人のシーンの直後に岡沢が殺された展開に、この先ミステリーとして面白くなる予感がしていました。

 

しかしその後、特にミステリーとしての盛り上がりがなく終盤までは淡々と進み・・終盤怒涛の展開に!!

この物語は「三転」するどんでん返し物語だったんですね!

 

ミステリー小説の楽しみの一つが終盤に一気に謎が解けていく展開や、物語が二転、三転するどんでん返しがありますが、今回はその両方があって最後まで読んでいてよかったと思えます。

 

最後によかったと思えればそれはいい作品なんですけどね。

それでもあえて苦言を2つ言わせいただきます(笑)。

 

1つ目はこの作品の最大の特徴でもある「シューマン推し、シューマンアゲ」がスゴいです!

音楽、とりわけシューマンについての「資料的小説」。音楽の解説部分を除いたらページはだいぶ減るでしょう(笑)。

ミステリー部分の引き込み方、展開の仕方、どんでん返しの発想はとても魅力的なので、もう少しミステリー寄りな展開であれば面白かっただろうな~と思わざるを得ません。

 

そして音楽批評については作曲家の作った音楽、演奏家が演奏する音楽は解釈次第で何とでも言えると思うので、人が思った感想が全てだと思います。

なので架空の人物とはいえ修人に「音楽とは」「シューマンとは」について断定的に言われると、本当なのかな~と反発したくなります。

 

2つ目は修人と里橋の性格の悪さです(汗)。

修人は里橋が作り出した架空の人物だったというのには驚きました。

ミステリーとしてこの展開もアリだと思います。

(この作品自体が里橋の「架空(妄想)の手記」なので何でもアリになってしまってますけどね(笑)。)

しかし修人と里橋に性格の悪さを感じていたので、メインキャラ2人の魅力が全くない事がマイナスになっているのが惜しいところです!

 

里橋の性格が悪いから、その分身でもある修人の性格が悪くなるのは当然かもしれませんが・・奥泉さんは敢えて里橋にそういう性格を与えたのでしょうが、もう少し共感できる主人公にしたほうがよかったのでは・・と思います。

 

ちなみに主人公であり語り手の「里橋優」は最初の手紙で名前が出てきますし語り口から男性と思わせておきながら、実は女性の「性別錯誤の叙述トリック」と思っていました(名前も「優」(読み方は出てきていないはず)で男女どちらでも使われますし)。

 

しかし第2章で『家の息子、つまり私のせいだ』とあったのでやっぱり男性のようですが・・それでも私は最後まで女性かもと思っていました(笑)。

 

この「シューマンの指」については苦言を言わせていただきましたが、奥泉さんの書くミステリー小説に興味が出ました。

次に奥泉さんの作品を読む時が楽しみです。

 

(個人的評価)

面白さ    ☆☆☆

登場人物   ☆

ミステリー  ☆☆☆

もったいない ☆☆☆☆☆