※※ この本を読んで一言 ※※

またでました!!大御所だからできる実験的(お遊び的)作品(笑)。

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東野圭吾さんの作品を読むのもこれで5作品目になります。

しかし既読の4作品のうち2作品は「名探偵の掟」「名探偵の呪縛」です。

この2作品は東野さんをよく知らないライトな読者の私から見たら、「内輪ネタ」「普段東野さんが思っている事」を題材にした実験的作品、もしくは遊び心満点な作品だと思います。

 

そしてこの「超・殺人事件 推理作家の苦悩」も同じ印象を持った作品でした。

なおこの作品はタイトル買いで、いつも通り内容は一切知らずに買ったのですが・・まさかこれが”この系統の作品”だったとは(汗)。

 

もっともプロの作家の作品を生み出す苦しみは私には分かりません。なので私が「実験的作品」という印象を持った作品であっても書き上げるのは決して楽だったり、楽しみながら書けるものではないと思います。

 

それなのにこの2作品と今回読んだ「超・殺人事件 推理作家の苦悩」をリリースするという事は作家として訴えたいことがあるからでしょう。

 

ここから短編ごとの感想を書いていきます。

 

「超税金対策殺人事件」や「超長編小説殺人事件」は作家と編集者は現実にこういうやりとりをしているのかと思わせます。

 

「超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)」の中で『二時間ドラマの犯人なら、役者を見ればわかるんだけどな』は二時間サスペンスあるあるですね。もしかしたら東野さんの原作のドラマや映画でも、東野さん自身が見てそう思うことがあったのかもしれませんね。

 

「超高齢化社会殺人事件」の中で木造の駅舎はまだあるし、子供が座って待っているときに漫画を読んでいるのも現在でも違和感はないです。ただ感覚が古い事を表現しているのでそういう記述になったのでしょう。

しかし作品で指摘の通り、子供たちは今はスマホかゲーム機で遊んで待っていることが多いと思います。

 

ちなみに作中の90歳の藪島のボケた小説はとても面白いです。笑えます。

しかし実際に本になって、読者としてお金を払って買ってしまったらきっと壁本待ったなしの作品だと思います。

そしてオチの担当者も70歳には驚きました。まさかここで叙述トリックがブチ込まれるとは思っていもいませんでした。

ちなみに「超高齢化社会殺人事件」は一般の高齢化社会とともに出版業界の高齢化を皮肉っているのでしょう。

 

「超予告小説殺人事件」は編集者が犯人なのはそう思っていましたが、編集者が作家を犯人に仕立てて自殺に見せかけて終わらせるのには気がつきませんでした。ただこの話はあまり面白味を感じませんでした。

 

「超長編小説殺人事件」の、崖の上で探偵役が犯人と対峙し、犯人が崖から飛び降りて終了というのはサスペンスドラマの展開の鉄板ですね。

 

執筆中に編集者から枚数を増やせと言うオーダーは実際にあるのでしょう。

しかし『砂の焦点』最終部(改稿後)と改稿前を比べると内容は一緒なのに表現の違いがよくわかり面白いです。

プロの作家はスゴいです。ただ作中にも語られている通り「言い方を変えただけの水増し」と言われても仕方がないですが・・

 

そして『曲球』はこの物語だけのなかのことだけと思いたいです。もしこれを現実にやられたらさすがにヤバいでしょう。

 

しかしこの短編のでは東野さんの偽らざる感想を書いているのではないでしょうか。

本当は作家としては書きたいものをそのまま作品にしたいのに、編集者は売るためにいろいろ注文をつけるのでしょう。

 

それにしても編集者は本当に売れるためならば水増ししてもいいと思っているのでしょうか。そういう水増しは最近の読者には見抜かれると思うんですけどね。

しかしこの1冊の中で何回も「本が売れない時代」と書かれていることから、減っている読者を囲い込むためにはとにかく何事も話題性が必要ということでしょう。

 

「魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)」はネタとしては面白いです。

そして実際の作家さんは普段からこのように悩みながら書いているのではと思わせます。

 

「超読書機械殺人事件」は業界全体を皮肉っています。

ちなみに最後の読者向けのシッタカブリックスは私には必要ないです。

ほとんどの一般の読者には必要ないと思いますが、作中で語られるように職業で読書に関わる人には需要があると思います。

もしくは一般人ならYouTuberが欲しがりそうですね。

 

なおこの作品は平成16年(2004年)に発刊されていますが、現在(2021年)はさらにAI技術が進歩して、ショッヒョクスに近いことはできるのではないでしょうか。

ここ数年はRPAの技術も進歩し、AIとRPAの普及により職をなくす人が出てくると言われています。

もしかしたら作家や書評家もその対象になるかもしれないのですね。

 

感想も最後になりますが、東野さんの思っていることが垣間見える作品でした。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆

内輪的   ☆☆☆☆☆

読みやすさ ☆☆☆

作家の苦労 ☆☆☆☆☆