※※ この本を読んで一言 ※※

猫アンソロジーも2作目。

「猫」を題材にしていてもいろいろなパターンがあるんだな~と実感!

※※※※※※※※※※※※※※※

猫が見ていた」に続き、図書館で借りた猫アンソロジーの2冊目になります。

さすがに猫アンソロジーも2冊目になるとだいぶ猫の物語にも慣れ、1冊目に読んだ感動を2冊目で味わうことはない事がちょっと悲しいですね。

 

しかし「猫」を題材にした話のバリエーションは無限にあるらしく(笑)、どれも驚いたり面白かったと思います。

 

本のタイトルが「猫ミス!」なので人が死にまくる展開に猫が絡む推理モノかと思ったのですが、そこまでがっつりミステリーではなかったです。

しかし「猫が見ていた」よりは人が死んでた気がします(汗)。

 

さて早速ですがここから個別のネタバレ感想を書いていきます。

 

【黒猫ナイトの冒険(新井素子)】

新井素子さんは有名なので名前は存じていますが、作品を読んだ事がなかったので、これが私が読む新井さんの最初の作品になります。

 

動物に人のように思考を持たせ、猫を主人公にした冒険作品で、気ままな猫には冒険活劇はよく合いますね。

そしてナイトを主人公に長編ができそうです。

 

ちなみに新井さんの作品に猫に関する題名がついた作品がいくつかあるので、きっとご自身も猫が大好きなのでしょう。

 

さて作中ナイトが地域猫ボランティアがいるのに対して、『カラスというのは、野良猫と同じ「人間社会に属していない生物の集団である」にもかかわらず、なんか、ひたすら、人間から迫害されている動物らしいのだ。カラスボランティアなんてまったくいない。・・』

という考え方はちょっと衝撃的でした。

 

確かにカラスボランティアはいないし、野良猫もカラスもごみを漁るのは一緒なのに・・これも人間の都合ってやつでしょうか。

 

【呪い(秋吉理香子)】

この作品は読み終わるとちょっと戸惑います。

結末をどう解釈したらいいのでしょうか?

瀧本がヤマカガシを中西の家に放したのかどうか不明です。しかしもしそうなら結局滝本は自分の好き嫌いで猫を助け、そしてヤマカガシを利用して人間を殺したことになります。

 

瀧本の評価が反転した、ある意味ものすごいどんでん返しのオチです。

 

なお「黒猫ナイトの冒険」と「呪い」では野良猫(今は地域猫)にエサを与えたり避妊手術をするボランティアの存在が取り上げられています。

 

私は猫は外を自由に歩いているものだと思っているので、野良猫だろうが飼い猫だろうが外にいてもいい存在だと思っています。

 

しかし猫が人の庭を荒らしたり車に乗ったりするので迷惑をかけているのも事実なので、特に管理されていない野良猫を管理しようとすることには反対はしません。

ただこれもやはり人間の都合でやっていることで、猫は猫らしく生きているだけなのに・・共存というのはなかなか難しいですね。

 

そもそも”共存”ということ自体が人間目線の思想なので、共存というのはむしろ人間からみれば”動物の管理”なのかもしれません。

 

【春の作り方(芦沢央)】

芦沢さんは「許されようとは思いません」でイヤミス的で人の業というものを考えされられる作品だったのを覚えています。

 

しかしこの物語では日常系ミステリで、主役は小学生でイヤミスとはほど遠い安心して読める作品でした(笑)。

そしてアーモンドの花が桜の花びらそっくりだったことを利用した題材(トリック)に驚きました。

 

最後のおじいさんの態度は、「僕」が桜茶の作り方を覚えていたことに感動しているのだろうか・・よく分かりません。

 

それにしても水谷君の安心感はすごい!

小学生でここまで達観したような精神状態で、冷静で的確な判断が下せるのは天才だからでしょうか。

 

調べてみると、水谷君は他の作品にも出てきているようで・・これはそのうち読んでみたいです。

 

ちなみにこの短編に猫はアーモンドアレルギーをごまかすために使われたので、物語にはあんまり関係ないかなと思えます。

 

【一心同体(小松エメル)】

この短編はミステリとしては最初から最後までわりと分かりやすい物でした。

しかし最初からどことなく不穏な空気が漂う作品で私は好きです。

 

【猫どろぼう猫(恒川光太郎)】

この作品はこの作品群の中では一番ぶっとんでいる!という印象です。

ハチャメチャな登場人物たちが面白いです。

展開もぶっ飛んでいて、なかなかこういう話には出会えないので、それだけでこの本を読んでよかったと思います。

 

この短編の作風は戸梶圭太さんのグロテスクな描写と登場人物のクレイジーっぷりをマイルドにした感じですが、実際恒川さんはもっと洗練された作品を書く作家さんのようですね。

 

【オッドアイ(菅野雪虫)】

この話は少年の日常(人生)を描いた話ですが、背景描写や登場人物の描写などが落ち着いていて、展開も程よくのんびりでとても好きな作品です。

 

日常系でありながら果歩は危うく変質者に何かされそうだったから、それを防げたのは充功と冬路はお手柄です。

 

【四月のジンクス(長岡弘樹)】

この「四月のジンクス」は「猫ミス!」の最後にふさわしい作品だと思います。

 

「猫」を話の中心に持ってきながらも「人と猫の関係」、「人と人とのつながりとは何か」そして「人の人生の終わりについて」を考えさせられる話だったと思います。

 

そして「猫はにおいで人を覚える」という事を利用して、服を変えることで「ペットの飼い主ロスを軽減させる」というミステリー的な考え方(トリック)には驚かされます。

 

私はミステリー小説を中心に読んでいるので、80歳を越えた女性たちの生活や人生の終わり方について読んだ事はなかったと思いますし、自分でも考えたこともありません。

 

しかし誰でも人生が終わる時が来るので、どう終わるかある程度は考えておかなければならないことを実感しました。

 

なおこの短編で長岡さんを知ったのですが、調べてみたら「教場」の作者なんですね。

そんな有名な作家さんを知らなかったとは、私もまだまだ読書の初心者です(汗)。

 

【猫探偵事務所(そにしけんじ】

上の「四月のジンクス」で「アンソロジーの最後」と書きましたが、実質のラストの作品はこのマンガ「猫探偵事務所」です。

 

”ニャンロックホームズ”と”ニャトソン”は癒されます(笑)。

そしてこのおかげで、最後にほのぼのとした気分で読み終われます。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆

ミステリ ☆☆☆

読み応え ☆☆☆

猫    ☆×100