久しぶりに戸梶圭太さんの作品です。
この「迷宮警視正」より先に二作目の「迷宮警視正 最後の秘境」を読んでしまったため、せっかくなので「迷宮警視正」を買って読むことにしました。
読んだ感想としては、戸梶さんらしいと言えばらしいですが、私が過去に読んだ「バカをあやつれ」と「迷宮警視正 最後の秘境」と比べると、エロさ、グロさ、激安さ等はマイルドです。
まあそれでも変人の主人公と周りの人間たちが織りなす荒唐無稽とも思えるようなゲスな人間模様が極端な形で描かれています。
しかし小山のおかげで、この本の主題は人間の醜さを認めつつも、それでも前を向いて歩こうとする人間の強さであったのだと思います。
ストーリーはとしては驚きなどはほとんどなく、そんなもんかな~という感じです(汗)。
しかしこれはミステリー小説ではなく、「戸梶作品」であるので、ストーリーとは別のところで楽しむのが醍醐味だと解釈しています。
この作品では主人公の星乃神は得体の知れないインパクトのある人物ですが、作品を通じて印象に残るのは脇役の方です。
特に星乃神に厳しく指摘(激しく罵倒?)された生徒3人の変貌ぶりが笑えます。
その生徒3人を星乃神が精神的に追い詰めている時の間中の心の言葉がまた面白い。
ただしその現場に居合わせたら、間中ではなくとも正視に堪えないでしょう。
もっともこの生徒3人に限らず、戸梶さんの作品では人間を徹底的に罵倒したり蔑むような記述がよく出てきます。
心の中で思っていることをここまで下品に表現できるとは、さすがは戸梶さん!!と言ったところです。
そして中でも数少ない常識人の間中、唯比、小山の語りのパートはものすごくホッとします(笑)。
特に小山は初めはあまりの熱血教師ぶりに、後になって醜い本性が表れると思ってましたが、最後まで熱血指導のいい先生でした。
そして最後にこの物語全部を小山に持っていかれます。
そのおかげで戸梶さんの作品なのにさわやかないい話で終わります(笑)。
その他に印象に残っていることは、序盤で星乃神がヴァイオリンを弾いて校内放送を感動的なものに仕上げるシーンで”星乃神めっちゃいい人やん”と思いましたが、その後は安定の自己中心的でしたね(汗)。
ただそれでも唯比には優しく、すぐに唯比が惚れるくらいなので星乃神は魅力的な男性のようです。
あとは間中が縛られた結束バンドをライターで焼き切る『自分で自分を拷問』のシーンは、間中には悪いですがとても笑えます。
そして都知事の顔が印刷された玄関マットが登場し、間中がこの上で靴をぬぐいます。
この作品が発表された時の都知事は石原慎太郎さんでしょうから、玄関マットの顔写真も石原さんでしょうか・・そしていったい戸梶さんは何を思ってこれを登場させたのでしょうか??
ものすごく謎です。
最後に戸梶さんの作品はエロ・グロ・下品・低俗・暴力・汚職・・世の中の負の部分がこれでもかと記述されていますが、作中に書かれていることは実際に起きている社会問題であり、それを極端にしたものであると思います。
だから戸梶さんの作品を通して現実を見つめ、これからの自分の人生をよりよく生きるために考え直すいい機会に・・ならないでしょうね(笑)。
ただこういう毒のある(?)物語を読むと、自分が恵まれた環境で生きていることを実感できていいですね(汗)。
(個人的評価)
エログロ ☆☆
人間のクズ ☆☆☆
面白さ ☆☆☆
読後感 ☆☆☆☆