※※ この本を読んで一言 ※※

オンライゲームは密室と言えるのか(笑)??

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この本を買ったのは本当に偶然でした。

中古本サイトで、清涼院流水さんの「コズミック 世紀末探偵神話」をカートに入れたときに、サイトからの“あなたへのオススメ”みたいな紹介の中にありました。

 

もしかしたら「密室」繋がりで紹介に出てきたのでしょうか。

普通はスルーするところですが「超巨大密室」が何なのか知りたくて、全く初見で買ってしまいました。

二宮敦人さんの作品も初めてなので、ある意味賭けでした(汗)。

 

作品としてはオンライゲーム(MMORPG)の中キャラクターが織り成す出来事と、それを操作している人間が起こす現実の事件が密接に絡みあい、とても面白く一気に読めました。

 

物語の序盤はバカ正直な仁菜(まぐまぐ)と廃人ゲーマーの照(イナスカ)にイライラすることもありましたが、洋治(ミカ)が謎をどんどん解いていくにつれて、右肩上がりで面白くなってきました。

 

そして終盤の怒涛の展開は驚きの連続でした。

顔なしが新庄なのも思いもよりませんでしたし、直子が照に殺されていたのも驚きました。

 

ただ玲(ココリコ)の家で、新庄がナイフを構えている前で延々と携帯電話でメッセージを送る洋治にはちょっとあり得ないと思いましたが(汗)。

 

そしてゲーム内のアカウントを殺す(ゲームから追い出す)ために、現実の世界で予行演習的に殺人を繰り返してきた新庄もあり得ないと思いましたが・・ゲームと現実の優先度がゲームの方が高い人にしてみたらそれも当然のことなのでしょうか。

 

そういったツッコミどころはありますが、最終的には謎も回収されてスッキリとした爽やかな終わり方だったと思います。

 

さてここからはストーリーとは直接関係のないオンライゲームについての私の雑感を書いていきます。

 

最初に思うのは、仁菜以外の人はネットワークゲームにのめり込みすぎだろうと思うのですが、たまにニュースなどでも話題になったりもしていますから、実際にそういう人たちはいるのでしょう。

 

そして新庄(Jティス)のようにオンライゲームの中の世界を支配したいと思うユーザーは実際にいるのでしょうか。

 

ゲームのキャラクターがどんなにゲームの中で偉そうに王様を気取り、ゲームの中のアイテム等を牛耳ろうとも、結局はゲームの世界を構築している「運営」と言う名の神が、調整や修正を入れちゃえば今までのやり方が役に立たなくなるし、極端な話、サービスが終了したら世界そのものが消滅してしまいます。

 

だったら新庄や照のように、そんないつなくなるとも知れない虚構の世界で目くじら立ててやらなくても・・とゲームの素人の私はそう思うのですが、そう思わないのが廃人ゲーマーなんでしょうね。


そしてそんなゲーマーがたくさんいて、そういう人たちに支えられてゲームが運営できるんでしょう。

 

次に思うのは物語の中で、主要なイナスカやミカはゲームの方に生き甲斐を見出だしていました。

 

私も照の“ゲームの方が現実”と言う言い分も理解できなくはないですが、人間が肉体を持っていて、肉体でゲームを操作している間はあくまでもリアルは“こっち側”だと思います。

 

しかしこの理論でいくと、「ソードアート・オンライン」や「マトリックス」のような仮想現実だったら、もうどちらが現実なのかわからなくなりそうです。

そしてそのうち脳とコントローラーを直結して脳でゲームをプレーするようになったら、現実には戻ってこない人が続出しそうです。

 

3つ目に思うのは作中に出てくるので廃人ゲーマー4人(照、新庄、洋治、玲)は特殊な環境の部類の人たちだと思います。

特に男3人は経済的な不安は皆無で、働く必要がないわけです。

しかも洋治は親が金を使えと言っているくらいです。

 

働かなくても生きていける照に向かって直子は「ネットゲームをやめろ。現実の世界で健全な生活をしろ」というのは果たして正しい事だと言えるのでしょうか。

 

確かに不規則な食生活と睡眠で、健康を害するのは間違いないでしょう。

 

しかし経済的余裕があり、かつ誰にも迷惑をかけていないなら、廃人ゲーマーという生き方も他の趣味と同じで、尊重されるべきかも・・と思うのです。

 

直子(ラミーチ)の場合、照はラミーチ(直子)を愛してしまい、しかもかなりこじらせてしまっていたので、直子としては心配するのは当然でしょう。

しかし直子はラミーチのまま照が飽きるまでゲームに付き合うか、サービス終了(何年かかるか分かりませんが(汗))までそのまま過ごしていれば結末は違ったものになっていたでしょう。

 

ただ私には身内にそういう者がいないからそう思うだけなのでしょうね。

そしてもし身内で裕福でもない親の脛をかじりながら、親に依存(寄生)して引きこもっていたり、生活保護を受けながらもネットゲームをしていたら、私だったらブチギれるでしょう(汗)。
 

さてこの感想も最後になりますが、この本について書きます。

どうやらタイトルの「超巨大密室」はおそらくオンライゲームのことでしょうが、これほどタイトルがしっくりこない感じがするのは珍しい気がします(笑)。

 

そして読み終わってから気がついたのですが、この作品は「角川ホラー文庫」から出てたんですね。

表紙後ろのあらすじにも『ゲームと現実が混ざり合う、戦慄のサスペンス・ホラー!!』とあります。

でも私の感覚ではホラーではないです。

 

強いて言うなら仮想現実と現実が交差するミステリー小説かなと思います。

そして題材が新しいせいか、若干ライトノベル的でもあるような気もします。

 

二宮さんは他にも多数の作品を執筆されているようなので、次は推理小説を読んでみたいです。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆☆

ストーリー ☆☆☆☆

驚き    ☆☆☆☆

密室度   (ゼロ)