この作品を読んだ理由はただ一つ!

いつも通り私の大好物「メフィスト賞受賞作」だからです(笑)。

 

新堂冬樹さんの作品を読むのも初めてで、あらすじ等の事前情報を全く仕入れずに読み始めました。

 

読み始めた時は街金融の社長による「闇金ウシジマくん」のような残酷物語かと思っていたら、途中からマフィアとの戦いになるハードボイルドになってきてました。

 

しかしいまひとつハードさが足りないです。

それは主人公の野田が基本的に善人で、しかもやや押しの弱いキャラクターなのでハードボイルドになり切れずソフトボイルドに感じてしまいます(笑)。

 

そしてところどころに挟まれる大崎と京子の「神」の話がより物語をソフトにしています。

 

ただしこの作品はハードボイルドではなく、人の悲しい生き方を描いたハートフル物語であると思えば、ラストは悲しくもとてもきれいにまとまっている作品であると思います。

 

そしてストーリー的には都合のよさが随所に見られます(汗)。

さらに人間関係や世間って狭いなと思わせます。

 

しかし新堂さんの丁寧できれいな背景や心情の描写があり、アクションシーンや残虐シーンは迫力があり、しかも物語がどう展開するのか想像もできなかったため先が知りたくなり、飽きずに一気に読むことができました。

 

今まで読んだメフィスト賞受賞作に比べると「正統派」といえるような作品だったと思います(笑)。

とても面白かったです。

 

ここからはどうでもいい私のツッコミどころを書いていきます。

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大崎と京子の言葉は理想論というか夢物語が過ぎて響かないです。

特に京子はあまりにも利他的で自己犠牲が過ぎます。

 

大崎は最後に高場静夫として化けの皮がはがれたからいいんですが、京子の理想は現実離れしてて変です。

京子のような人が本当にいたら、今の世の中では生きにくいでしょう。

 

物語をソフトにしている原因の一つは、合間合間に野田の過去のエピソードが入り、それがなんとも言えず説教くさい話だったり、いかにも物語の場面に合わせたご都合的なエピソードのせいだと思います。

 

しかし善と悪の話で草食動物と肉食動物の例えは、聞けば当たり前な話ですが今まで聞いたことがない説だったので感心しました。

 

木田は数年間の外国人傭兵部隊にいて殺しのプロになって、傭兵仲間のレイザーやクレイジーを従えていました。

一応作中でも野田への怒りがあったとか周囲の顔色をうかがうのが得意だったなど、戦闘員としての成長が早いことへの記載もあるんですが、今まで日本で普通に生きてきた20歳前の若者が、傭兵部隊に入って数年で無敵の殺人者になるのものなのでしょうか。

 

想像でしかありませんが傭兵部隊にはもっとベテランはいるでしょうし、木田よりもっと強い者もいたでしょう。

 

そんな木田は殺しのプロ中のプロのはずなのに荒木が来ているのに気が付かなったのでしょうか?

荒木に撃たれる前の木田は『木田の眼は、世界中の憎悪をいう憎悪を独り占めしているかの如く血走り涙ぐんでいた。』とあるので、それだけ野田にとどめを刺すのに気を取られていたようですが、本当の殺しのプロなら荒木が来たことにも気が付かなかったのかな~と思います。

 

この作品は街金や闇金を描いていますが、新堂さんは実際に闇金で働いていたそうですね。

この作品に書かれている債務者の様子は実際に体験している事も含まれているのでしょう。

なんにしても借金はしない方がいいですね。

 

タイトルの「血塗られた神話」・・血塗られてはいましたが、神話というほど神話していなかったと思いますが(汗)。

ラストで京子の『命に、始まりも終わりもないの。』から続き、魂は生き続けるというセリフがあるので、この辺りが神話っぽいという気もします。

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この作品は私のイメージするメフィスト賞的作品ではありませんでしたが(笑)、とても面白かったので、新堂さんは他の作品も機会があれば読んでみたいです。

 

(個人的評価)

面白さ     ☆☆☆☆

グロさ     ☆☆

ハードボイルド ☆☆

ソフトボイルド ☆☆☆☆