※※ 注意 ※※※※※※

この詠坂雄二さんの「電氣人間の虞」の感想の後半では殊能将之さんの黒い仏」の内容に触れています。

殊能将之さんの黒い仏」を未読の方はご注意ください。

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この作品は以前に面白そうなミステリー小説をインターネットで検索したらヒットしたので買ったのだと思いますが・・買っていたことを忘れていました(汗)。

未読の棚にあったので読んでみました。

 

読み終わってとても面白いと思いました。

しかも久しぶりに私がブログを書くときに使うセリフ・・「こうきたか!!」と思わせる物語でした。

 

読み始めた時は電気人間という怪異ものか、都市伝説を利用した殺人鬼による現実的な殺人事件になるのか・・

どういう展開になるか全く先が読めなくてワクワクしました。

 

読んでいる途中は、誰の視点で語られているのだろうと違和感を感じていました。

これは巻末の解説にも書かれているので、読者の多くはそう思ったのでしょう。

そして23章のラストでページをめくり「わたしを見た」でしばらく訳が分からなくなりましたが、24章を読んで納得しました。

 

そして解説を読んで改めてこの物語に仕組まれた仕掛けを知り、かなり作り込まれた手の込んだ作品だと理解しました。

 

さてここから細かい作品の感想やツッコミを書いていきます。

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召喚されるルールが”電気人間”と声に出されなければいけないというのは、ルールだからそうだ!と納得するしかないですが、どこにでも存在し思考も読めるなら、「電気人間」と考えただけで現れることが出来てもいいのにな~と思います。

 

もっともそのルールを定めた存在がいるのか?それとも人間にはわからない世界の法則に沿っているのか??・・考えれば考えるほど訳が分からないです。

 

そもそもなぜ電気人間になったのかも明らかにされてないですね。

どうやら囀り林に懐かしさを感じているようなので地下壕で生まれたと思えますが、そのあたりは続編で語られるのでしょうか。

 

続編と言えば、衝撃のラスト(笑)でこの後に電気人間は韮澤とともに妖魔と戦う事が示唆されています。

しかし詠坂さんはおそらく続編は書く気はないのではと・・そんな気がします。

いわゆる「投げっぱなし」というやつです(笑)。

 

作中の世界では電気人間が存在し、他にも妖魔が存在しているようです。

そして韮澤のような人間がいるということは、韮澤の他にも特殊な能力を持った人間が当然いると思われます。

 

続編はバトルもののようなので、詠坂さんの原案で漫画で出した方が面白いかもしれません。

 

最初の0章での書店での会話はかなり核心に触れた内容だったようですね。

最後の24章での電気人間が回想で少しだけ書店の店長の事に触れていましたが、この会話で電気人間はかなりの事に気づいたり学習したりしたのではないでしょうか。

 

0章の中学3年女子は日積鈴なのでしょうか。

鈴の話し方は自分を「オレ」というなど男っぽい話し方で書かれていて、書店の女子は知性は感じられるが普通の感じで書かれているので、やっぱり別人なのかもしれませんが、敢えて中学生女子を2人出してきたことに詠坂さんの作為を感じます。

 

そして書店の店長は誰なんでしょうか。流川かとも思いましたが、流川は誰にでも敬語で丁寧に話すという記述があったと思うので、この店長ではないと思います。

知性の高さを感じさせ、電気人間にも少しですが記憶される人物なので、このまま名もない登場人物にしておくにはもったいないですね。

それとも作中に名前が出ているけど私が気が付かなかっただけでしょうか。

 

赤鳥と日積が電気人間について調べて始めた時、この二人にははっきりと「死亡フラグ」が見えました(笑)。

これは詠坂さんが敢えて分かりやすくしてくれたおかげでしょう。

 

なお竹峰が死ぬとは思っていなかったですし、柵馬はもしかしたら死ぬかもと思い、詠坂は作者と同名なので死ぬわけがないと思っていました。

 

この作品の登場人物はみなどことなく知性を感じさせるところがありますし、文章全体も読みにくくはないですが、表現が難解だったり理屈っぽかったりと感じることは多々あります。

 

きっと詠坂さん自身がそうだからでしょうか(汗)。

 

ただ、言われてみれば当たり前だけど、言われなければ気が付かいことに気が付かされ、なるほどと思ったことは多数あります。

覚えている範囲では地下壕の記述で「扉は壁でもあり通路でも柱でもある」や「扉が初めから開いていれば警察は密室であるという認識はない」など・・

 

こういう変化球的な作品を書く事ができる作家さんは、おそらくどストレートな本格ミステリーも書いていると思うので、詠坂さんの文体で書かれた本格ミステリーはそれはすごい物でしょう。

ぜひ読んでみたいです。

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さてここから殊能将之さんの黒い仏」の内容に触れますのでご注意ください。

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私が「電氣人間の虞」を読んでどことなく似てるなと思った作品が黒い仏」です。

 

・最初からどんな方向に向かっているのかわからず

・人智を超えた怪異の存在が出てきて、探偵役の推理を根底からひっくり返す。

・作品がどのジャンルに分類されるのか判断に困る。

・そして何より「投げっぱなし」のラスト1行(笑)

など類似点が複数あるように思われます。

 

「電氣人間の虞」では「小説作家の詠坂」が電気人間についての解釈や3人の死亡の状況について、「ミステリー小説的」に解説していました。

しかも詠坂は何度も”どうとでも説明できる”と言った内容の発言をしています。

 

これはミステリー小説においては多重解決ものであったり、探偵役が何度も間違えて最終的に正しい解決に導くことはよくあります。

 

私は黒い仏」の感想の中で「ミステリー小説への一つの挑戦」と書いていますが、まさに「電氣人間の虞」もミステリー小説においての一つの挑戦をしたのではないかと思います。

※※ ここまで ※※

 

次に読む詠坂さんの他の作品は何なるのか・・楽しみです。

 

(個人的評価)

面白さ   ☆☆☆☆

登場人物  ☆☆☆

驚き    ☆☆☆☆☆

続編に期待 ☆☆☆☆☆