この作品はインターネットでミステリー小説と検索すると、結果に多く出てくる作品なのでかなり気になっていましたし、本格ミステリー小説が読みたくて買ってみました。

巻頭に「21世紀の『そして誰もいなくなった』登場!」とあるのを読んで、かなり大きくでたな~と思い、期待に胸を膨らませて読み始めました(笑)。

 

読み始めたら面白くて先の展開が楽しみで一気に読めました。

 

読んでいる途中はこれが叙述トリックものだとは全然気がつきませんでした。

そしてエピローグでの種明かしがされたときに疑問が一気に解決していくのは読んでいて爽快です。

 

巻末の解説にもありましたが、この作品は「そして誰もいなくなった」系の作品ではありましたが、それを進化させたものだったと思いました。

 

クローズドサークルを設定するのに時代を1980年代としていたのも見事だったと思います。

現代の設定だったらジェリーフィッシュの自動航行システムの制御が高度化・複雑化してエドワード1人で全てを制御できたか疑問です。

そして軍との通信手段も無線ではなく通信衛星を使うでしょうから、これで連絡が取れなかったらすぐに怪しまれます。

その他にも「その時代だからこその穴」をうまく利用していたと思います。

 

ちにみに巻末の解説でも少し触れていましたが、作中でマリアがエドワードに対してページが変わった最初に「あんた、誰?」と質問をしたのは、綾辻行人さんの「十角館の殺人」を意識しているのかなと思いました。これは作者の市川憂人さんの遊び心とリスペクトの表れてでしょう。

 

登場人物たちもみな個性的でよかったと思います。

 

ます漣の毒舌ぶりとマリアの天然ぶりのコンビが面白い。

マリアの普段のズボラさと推理の鋭さのギャップはまさに物語の主役にふさわしいと思いました。

 

また慇懃無礼とも思える漣も、毒舌はマリアに対してだけに発揮され、周りには常に礼儀正しい態度なので好感が持てます。

 

二人の掛け合いはおちゃらけてはいるけれどもそんなに回数も多くなくしつこくないせいか、特に不快感を感じずに面白く読めました。

 

ジョンもボブも登場回数は多くないもののメインキャラとしてしっかりと印象が残ります。

 

レベッカは頭脳は天才的であり、女性としても魅力的であったため本人は意図しないのに周りの人物の人生を狂わせる事になったわけで・・かわいそうな女性でした。

 

エドワードは偽名のようで結局本名は明かされていません。そして最後は空へ飛んでいき、その後は書かれていませんので想像でしかありませんが・・明るい未来はないでしょうね。

ジョンが軍を派遣して追跡してそうですが、レーダーに捕捉されないのでせめて軍に拘束されずに人知れず生きていてほしいと思いますね。

 

愛憎とテクノロジーとトリックと推理が融合した、評判どおり質の高い本格ミステリー小説だったと思います。

これを読んでよかったと思います。

他にもマリア&漣シリーズがあるとのことなので、ぜひとも読んでみたいです。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆☆☆

トリック ☆☆☆

登場人物 ☆☆☆☆☆

世界観  ☆☆☆☆