この本は読書の先輩から借りた本です。
これを借りた理由は伊坂幸太郎さんの原作の漫画「魔王 JUVENILE REMIX」が面白いということで、漫画と原作を同時に借りました。
久しぶりに伊坂さんの作品を読み始め、出だしから安藤の思索や言葉の端々に「伊坂節」を感じ思わずうれしくなります。
さて内容としては面白く、「魔王」「呼吸」と最後まで一気に読むことができました。
しかし読み終わって思った事は「物語的ではない」というものです。
何と言いましょうか・・一般的な物語は”起承転結”があって、導入で引き付けて結末で驚かせたり感動させたりするものだと思うのですが、これはまだ途中の”承”くらいで終わっている事に戸惑いました。
そう思っていたら、「文庫あとがき」で伊坂さんが『・・(直接的な続編とは言いにくいのですが)『モダンタイムス』が、二〇〇八年の秋に発売される予定です。・・』と言っているので、やはりまだその後があったんだと思い、ひと安心をしたものです(笑)。
この状態で終わるのはあまりにも消化不良なのでちょっと安心しましたが・・しかしこの物語は政治が絡んでいる「ゴールデンスランバー」とも毛色が違い、先の展開が全く予測不能なので「モダンタイムス」がとても楽しみです
さて伊坂さんの物語に登場する人物は相変わらずみんな博識ですね。そして今回は政治思想や国際情勢について語っているのでさらに知的に感じます。
特に安藤とドゥーチェのマスターの会話は難解ですね。
もっともその答えの出ない事を「考える」ことがこの物語の主題であると思うので、登場人物は、それぞれが考えて自分の意見を言っています。
それは伊坂さんが答えの出ない問題に対して、ご自身の思うところを登場人物に語らせているのでしょう。
そして『考えろ。考えるんだマクガイバー』の安藤と『考えすぎないようにする』潤也との対比は日本の未来を考えている者と、大多数の無関心の者との対比だと思います。
しかし安藤の死後は潤也の中で何かが変化して日本を変えようと密かに(?)企んでいるようなので、そのあたりは「モダンタイムス」でのその後の展開が楽しみですね。
それにしてもなぜ伊坂さんはこのような話を書いたのだろうかという疑問が常に頭に残ります。
読んでいる最中は、伊坂さんが現在の政治に対する憤りや外交問題、憲法問題など問題の多い日本の政治、そして何事にも無気力・無関心で状況に流される日本人の国民性を憂いて問題提起するために書いたのだと思いました。
しかしあとがきでは
『この物語の中には、ファイズムや憲法、国民投票などが出てきますが、それらはテーマではなく、そういったことに関する特定のメッセージも含んでいません。・・』
と書いています。
また好きだった小説などに書かれていた不穏さ、切迫感、青臭さが好きだから、この物語にも盛り込んだと書いています。
しかし読者の立場でこの物語を読んでみて、伊坂さんはやはり日本の未来を憂いているのだろうな~と思います。
そして一番言いたいのは詩織のセリフの『でも、クラレッタのスカートを直すのは、お金ではないような気がする。お金じゃなくて、勇気かも。』に凝縮されているような気がします。
私は政治的なことはニュースで知る限りの知識しかありません。しかしこれからも政治家やメディアに煽動されるのではなく、常に自分で考えて行動していかなければと思う次第です。
そして私も安藤の「考えろ。考えるんだマクガイバー」を常に心に置いておこうと思います。
さて次は「グラスホッパー」を読んで、次に「魔王 JUVENILE REMIX」を年末年始でゆっくり読みたいと思います。
楽しみです(笑)。
(個人的評価)
面白さ ☆☆☆
登場人物 ☆☆☆☆
考えろ ☆☆☆☆☆
続編 ☆☆☆☆☆