ミステリー小説の感想をブログに書き始めて、読んだ本の冊数が200冊を超えました。
約4年で200冊は1週間に1冊も読んでいないですね。
相変わらずスローペースで読んでいますが、このペースは変わらないでしょう(笑)。
さて201作品目は歌野晶午さんの「そして名探偵は生まれた」です。
今まで読んだ歌野さんの4作品は、どれも見事にだまされてきたので、この作品も見事にだまされたいと思って読み始めました。
読み終わってみて・・これは短編集だったんですね。
読んでいる最中は、それぞれ独立した短編も最後には何かに集約されると信じていたのですが・・そして何か驚きの結末が待っていると信じていたのですが・・
それは私の期待しすぎだったようです。
それぞれの短編は100ページ前後でありながら本格ミステリーとして成立しており、質が高いと思います。
特にタイトルにもなってる「そして名探偵は生まれた」は圧巻だったと思います。
難事件を解決しても訴訟になり借金を抱えて、真実にいち早くたどり着いた事を利用し恐喝者に落ちぶれた名探偵の影浦と、紅坂と影浦の犯罪を利用して影浦を殺し、新たな名探偵候補となった武邑。
今までにない新しい名探偵像が生み出されたような気がします。
そして何よりも武邑の名言
『探偵は職業だが、名探偵は違う。生き方なのだ。』
は昨今いろんなタイプの名探偵が活躍している中で、古き良き清廉にして高潔な名探偵の理想を端的に表現していると思います。
もっともどんなに立派なことを言っても結局武邑も犯罪者になったわけで、説得力もあったものではありません。
そしてこの作中での武邑の探偵としての能力を見る限りでは、今後武邑が探偵として活躍できるのかが心配になります。
「生存者、一名」は2冊前に読んだ「ひかりごけ」のような取り残された者たちのサバイバルですが、純文学とミステリーではやはりテイストがまるで違っていました。
歌野さんらしいミステリーなので、私では誰が犯人か分からなかったですし、仁美が妊娠したことも分かりませんでした。
そして問題のラストで、最終的に三春か仁美のどちらかが生き残ったのか、子供の名前である「春仁」からでは分かりませんね~。
なんて意地悪な歌野さん(笑)。
私は三春が生き残ったのかな~と思っていますが。
後の2編「館という名の楽園で」と「夏の雪、冬のサンバ」は・・よくできているとは思いましたが、特に印象に残っていません(汗)。
しかしミステリー小説を読み続けていたために、分かったトリックが一つありました。
「夏の雪、冬のサンバ」で犯人の名前が「キノシタ」であり、アパートには様々な国の外国人が居住しているという状況から、”犯人は日系外国人”は当たりました!
そこで犯人はペレだと思っていたのですが、まさか全く出てこなかったインティだったとは思いませんでした。
そしてメイントリックの傾いた床を利用した隠し場所や、ブラジル時間に合わせた時計というのは夢にも思いませんでした。
歌野さんの作品はやっぱり読み応えのある長編がいいな~と思った作品でした。
(個人的評価)
面白さ ☆☆
登場人物 ☆☆☆
本格的 ☆☆☆☆
アイデア ☆☆☆☆☆