この本はいつものインターネットでミステリー小説を探した時とは違い、通販サイト(アマゾンかブックオフオンライン)で”あなたにおすすめ”のようなカテゴリに出てきたので目にしたことがきっかけでした。

 

表紙の感じがホラーチックで面白そうでしたし、「たまには表紙買いもいいかな~」と思い購入しました。

 

相変わらず事前情報は極力排除して読んだため、読み終わってから知ったのですが、作者の長江俊和さんはテレビや映画の脚本や監督もしており小説家としてもご活躍されているというマルチな方だったんですね。

また小説では「放送禁止」がとくに有名と知りました。

 

さてこの「出版禁止」ですが、ライターのルポルタージュを読んで、最後に作者がそのルポを読み解いていくという、体裁としては珍しい小説だなと思いました。

 

内容はミステリー小説として面白く、そして驚かせてくれました。

 

読んでいる途中は若橋も最終的に新藤と心中して、結局新藤が生き残るのかと思ったら・・意外や意外!!

そして猟奇的な方面に向かったのにはびっくりでした。

 

しかし読み終わってもよく分からないことが多く、読み終わってすぐにインターネットのネタバレや解説のサイトを訪問して確認しました。

 

そして私の読み込みの浅さを思い知るとともに、それでもまだわからないこともあり、モヤモヤが残りました。

 

若橋呉成と新藤七緒の名前のアナグラムは全く気が付きませんでした。

しかし結局、若橋の依頼人は誰なのか、そしてさらにその背後に黒幕はいるのか、永津は本当に事故死だったのか・・などなど。

 

若橋は自分を「カミュの刺客」と言っていますが、私が思うに黒幕は神湯で依頼人は神湯の息のかかった者(高橋の政治結社の者?)ではないでしょうか。

 

高橋との会話で『あなたは大きく間違っています。(中略)自分自身与えられた使命と、その役割は何なのか?』といかにも事情を知ってそうな事を言っていますし、若橋は会話の後に『まるで催眠術にかけられた気分だ。』と言っています。

催眠術で人が操れるのかというのはまた別問題ですが(笑)。

 

さて最後にどうでもいいツッコミをひとつだけ。

 

作中ではさんざん「カミュの刺客」と言う言葉が乱れ飛びますが、新藤が熊切を殺すのも、若橋が新藤を殺すのも「カミュの刺客」が実行しているわけですが、あまりにも無駄の多い殺し方だと思うのです。

 

新藤が熊切を殺す場合は、時間をかけて愛人関係になって、心中のふりをする映像を撮影すると唆して、事故死に見せかける・・というのは百歩譲って理解できなくはないです。

 

しかし若橋の依頼人は、若橋に熊切心中事件の調査を依頼するだけで、新藤殺害が達成できると思っていたのでしょうか?

 

新藤殺害だけならそれこそ、作中にも疑惑として出ていた車のブレーキに細工するなどすればいいと思うのです。

とにかく依頼人またはその黒幕は気の長い人のようです(笑)。

 

・・とこの作品は本格ミステリーというよりもエンターテイメント作品に近いものだと思っていますので、無粋なツッコミはこのくらいにします(汗)。

 

謎が残り読後感はスカッとはしないものの、途中物語が二転三転して楽しませてくれたのは事実です。

次はぜひ「放送禁止」を読んでまた長江ワールドを楽しんでみたいものです。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆

驚き   ☆☆☆☆☆

残った謎 ☆☆☆☆☆

モヤモヤ ☆☆☆☆☆