この作品は例によって面白そうなミステリー小説をインターネットで検索していた時に見つけました。

表紙を見るとライトノベル的で読みやすそうな感じだったので紹介文も読まずに買いました。

そして野﨑まどさんの作品も初めてなので、楽しみにして読み始めました。

 

この作品自体が物語中の「月の海」や「アムリタ」の絵コンテほどではありませんが、人を引き込む力がるようで、あっという間に読み終わりました。

 

かなりインパクトのある作品でした。

そして評価が難しい作品でもあるなと思います。

物語中の最原の絵画や映画は賛否両論とありましたが、この作品の評価もそこまで大げさでないにしても賛否両論ある気がします。

 

ちなみに読み終わってこんなに戸惑うのは初めてな気がします。

それだけ私がどっぷり作品に浸かってしまったからだとも思います。

 

ところで何にそんなに戸惑っているのかと考えた時、その理由は途中までは若者の恋愛を描いた作品だと思っていたのに、オチがイヤミス以上にイヤミスだったからだと思います。

 

終盤、真相に気づき定本になる覚悟でアムリタを見ようとした二見に感動したのに、それすらも最原のシナリオ通りであり、そして最後は二見の覚悟を決めた数日の行動の記憶も消す・・ここまでくると最原は天才ではなく、人智を超えた恐ろしい存在です。

 

それにしても一体何が本当の事なのかよく分からないです。

最原の目的は、二見遭一の人格はすでに殺されていたと知った時の二見の表情が見たかったと「一番輝いていた」目をして言っていました。

 

しかし物語中では最原は「嘘つき」としばしば言われていますし、演技も絶賛されていたことからから、最原の言っていた事、取った態度は嘘という可能性もあります。

そう考えると本当の目的も何だったのか不明のままです。

 

最原は天才ではあるけれど、本質は恋愛を夢見る少女であり、自身が『現実に演出は存在せず、世界は常に偶然で、少し手を入れていかないとドラマを作ることができないと』と言っています。

 

そこから思うに、最原は偶然にも死んでしまった定本と少女漫画のようなキラキラして命を懸けたような恋の続きをしたかった。そして偶然にも最原には定本を再現できる才能があったので、映画で二見の人格を定本にして恋の続きをしようとした。

 

しかし定本の人格になっているはずの二見は最原を「愛している」と言わなかったし、命を懸ける覚悟ができていた二見も、すでに二見の人格が殺されていたことを知ったときに怯えていたので、それを見た最原は結局は自分の思い通りにはならない事を知って、悲しい思いをしたのではないでしょうか。


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ではここからいつも通りのどうでもいいツッコミをしていきます。

最原はヴァイオリンの旋律で聞く者にシーンを明確にイメージさせたり、演技も絶賛される、絵も字も上手・・もう何でもアリですね!

 

しかし絵コンテで生命の危機に瀕するまで人を引き込ませ、映像で人格まで変えさせたり記憶も操作できるなら、最原の奏でる音楽、最原の書いた字、最原のスピーチでもなんでも人を操れそうな気がします。

 

もしそれができるなら、完全に現代に降臨した神ですね。

国家や組織などがこれを知ったら凄まじい争奪戦が始まるでしょう。


また自身が望むならスピーチで民衆を扇動できる独裁者になれます。

 

定本の人格を二見によみがえらせたというけれど、定本の人格や思想などを完全に把握してたうえで二見にコピーしたのでしょうか。

それとも最原の中の定本のイメージをなんとなく二見に乗せたのでしょうか。

 

最原は読心のようなこともできるので定本の人格を詳細に把握はできていたと思われますが、完コピでないと中途半端な定本ができあがってしまう気がするのですが(笑)。


もっとも完コピだど嫌な定本も再現されるので、最原のイメージで「いい部分だけの定本」を二見に再現させればいい気がします。

 

感情を操作したり人格を変えたり動物嫌いにすることもできるそうですが、そもそも映像でどうやってできるのでしょうか。

サブリミナル効果のようにジュースが飲みたくなるようにジュースに関係ある映像を瞬間に差し込むならわかりますが、最原の手法は全く関係のない映像のようですし。

 

そもそも映像のどこに人格のようなあやふやで膨大(?)な情報を保存しているのでしょうか。

 

もっともそれを知ったところで天才(もしくは神)のすることなので、凡人には理解できないんでしょうけどね(笑)。

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さてこの「[映]アムリタ」には続編(?)があるようですね。

すぐにでも読みたい気分ですが、その作品は野崎さんの他の作品ともリンクしているようなので、そのリンクした作品すべてを読んでからになりそうです。

続編を読むまでに先は長いです。

 

(個人的評価)

面白さ  ☆☆☆

衝撃度  ☆☆☆☆☆

キャラ  ☆☆☆☆☆

イヤミス ☆☆☆☆