連城三紀彦さんの作品を読むのは「戻り川心中」に続き2作目になります。
「戻り川心中」は暗い世相に男女の業のダブルパンチで暗さ倍増の作品でした。
なので”この作品やいかに!?”と言う気持ちで読み始めました。
読んでいる途中はイヤミス並にイヤな気分にさせられました。
物語の中の4人の精神疾患の患者の言動を読んでいるだけで気が滅入ります。
4人とも自分ではどうしようもない状況なのでしょうが、自分の妻、自分の夫に対して明らかに迷惑がかかっているので、なんともやりきれない気分になります。
そして、物語が終わるまでにこの支離滅裂に思える物語に現実的なオチが付けられるのだろうか?と心配になりましたが、そんな心配は無用とばかりに怒涛の終盤での推理には驚きました。
ただいろいろ都合のいい展開だな~と思う部分はありましたが(笑)。
特に高橋に「ようこをけせ」の指令を出すためにマンションの部屋の電話番号を調べて、真夜中にマンションの部屋に電話をかけて住人を起こして部屋の電気を点けさせる・・昔は電話帳に結構マンションの人も載ってましたが、かなり無理があります。
また今は固定電話もない世帯も多く、かつ枕元に携帯電話を置いていたりするので、この方法で思い通りに部屋の電気を着けさるのは無理でしょう。
もっとも波島の示した推理は真相を示していると思うのですが、その正しさは物語では明かされないため、個人的にはやや消化不良で終わってしまった感じがします。
この作品の大きな特徴は精神病院とその患者を取り扱っていることですが、私は精神疾患の患者や精神病院の現実を知りません。
なので4人の狂気の描写を読んでいると、本当にこういう症例があるのかなと思うと同時に、読んでいるこちらが精神疾患になってしまいそうでした。
現実に鞍田惣吉のように妻から「あんたは死んだ」と言われ続けたら、最初は「そんなバカな!」と思いつつも、そのうち「おかしいのは自分なのでは?」と思うかもしれません。
そう思うと、精神疾患は周りの精神状態に影響を与えるので、対応する人は注意が必要ですね。
また波島も人間的にまともとは言えないですし、森河はいい人っぽく見えて最終的には殺人者でしたし・・メインの登場人物でまともなのは弘子だけです(笑)。
総評するならば、全体的に「戻り川心中」並に暗く、そして「ドグラ・マグラ」よりは「読むと精神に異常をきたす」度合いは高いと思います(笑)。
(個人的評価)
急転直下 ☆☆☆☆
トリック ☆☆
面白さ ☆☆☆
心理的負担 ☆☆☆☆☆