たまたま見かけた本で、読んでみたいと思い読みました。
 
タイトルどおり毒殺を題材にして、8人の作家による短編ミステリーを集めたものでした。
あとがきによると「アミの会(仮)」はもともと女性作家の集まりだったそうですね。
 
8人ともそれぞれ味があり、短編であるので読みやすかったです。
 
毒殺がテーマですが、他に共通しているのはほぼ「犯人は女性」であることですね。
この作品では例外として顔のきれいな男子中学生と、なぜか女性にモテモテの男性がいますが。
 
やはり腕力がなくても扱えて、憎い相手と直接対面せずに、かつ直接死体を見なくてすむという心理が働くからでしょうか・・
 
たしかに古今東西、毒殺は女性というイメージがあります。
実際には男性だって毒殺魔はいるでしょうが、他の刺殺や絞殺などの手段に比べてやはり女性の割合が多いからそう感じるのではないかと思います
 
それにしてもいつも読むミステリーとは違う感じに戸惑います。
それはなぜかと言うと、犯人や登場人物がおかしな人物が多いからです。
これを読んでいて、イヤミスってこんな感じだったな~と思い出しました。
 
最初の短編である永嶋恵美さんの「伴奏者」では結局犯人だった鞠香には少しも共感ができないし、その友達の深雪も鞠香に肩入れするし後味はよくありません。
 
また新津きよみさんの「罪を認めてください」と松村比呂美さんの「ナザル」では非常に不愉快なご近所のマダムや保護者が出てきて、短編とはいえ読むのがつらいです(笑)。
 
印象的なのが柴田よしきさんの「猫は毒殺に関与しない」はコミカルで面白かったです。
インターネットで調べると、登場人物たちは「猫探偵正太郎」シリーズらしいですね。主人公の桜川ひとみのお間抜けぶりも面白いです。
 
また「 アリス殺し 」「 クララ殺し 」の小林泰三さんの「吹雪の朝」は叙述で読者を惑わせたり、発言の齟齬から犯人を指摘するなど、短編でありながら読み応えがあり、さすが小林さんと思わせるものでした。
 
最後の光原百合さんの「三人の女の物語」はアンソロジーの締めとして非常にきれいな作品であったと思います。
白雪姫に出てくる魔女の思惑が判明したときにはなるほど!と思いました。
また大トリである名前の出ない女性の心理は、狂っていると思いながらもしんみりとするものがあります。
 
全体を通して、ミステリー小説としてはややパンチが足らないと思いますが、毒殺を通した人間の心理はどの短編も非常に細やかに描写されており面白かったと思います。
 
そして「毒には女性がよく似合う」と改めて思いました(笑)。
 
(個人的評価)
面白さ   ☆☆☆
驚き    ☆☆☆
本格度   ☆☆
イヤミス度 ☆☆☆☆