インターネットでミステリー小説を検索したところヒットした作品です。
滝田務雄さんの作品は初めて読みます。

 

タイトルや紹介文からほのぼのとした内容と思いきや、読んでみると思ったほどほのぼのではないことが分かりました(笑)。

 

 

息子を殺された父親の復讐、散弾銃を持ってコンビニ立て籠もり、青酸カリばら撒きなど、事件で人は殺されませんでしたが、事件の内容的に重いものが多かったです。

 

 

事件は重いですが、登場人物の掛け合いが軽妙であり文体も読みやすく、かつ短編の連作集なので読み始めたらさくさく読めます。

 

 

ところでこの作品は滝田さんのデビュー作だそうですね。上では文体が読みやすいと書きましたが、途中で「 」の会話文が誰の話した言葉なのか分からなかったり、理解しにくい文章があったような・・気がします。

 

 

デビュー作だからまだ文章が荒削りだったかもしれません。

 

しかしだからといって面白さを損う物ではないですし、理解しにくいのは私の理解力が足りないという事で処理しました(笑)。

 

他の方の感想やレビューでもありましたが、この面白さを支えているのは、黒川の白石に対する憎しみのこもった心の中のツッコミや、奥さんに対する黒川の魂の叫びでしょう。

 

 

そして黒川の奥さんはいろいろな意味でヤバさが面白いです。

 

奥さんのヤバさは物語上、明らかにウケ狙いで極端に描写されていますが、ここまで突き抜けると次はどんな手段で黒川を絶望に陥れるのかが楽しみになります。

 

最初の短編の「田舎の刑事の趣味とお仕事」では黒川は仕事と称して自宅で奥さんに隠れてネットゲームをやり、しかもネカマを演じるような人間ですし、奥さんのヤバさは描写されないので、黒川の方が二面性を持つヤバイ人間に思えました。

 

 

しかし物語が進むにつれ奥さんの本性(?)が表れるようになり、後半の黒川の壊れ具合はかわいそうと思いながらも笑ってしまいます。

 

 

腹話術人形に奥さんの本心と思えるブラックな事を語らせるのは、ギャグとしてよくある表現ではありますが、よくあるゆえの鉄板的な面白さがあります。

 

 

なおこの作品は歴としたミステリー小説ですので、犯人がどんなトリックを使い、そしてそれを黒川が解き明かす様子も楽しめます。

 

 

この「田舎の刑事」シリーズはあと2作品あるようなので、機会があれば読んでみたいです。

 

 

(個人的評価)

 

面白さ    ☆☆☆☆
ミステリー  ☆☆☆
黒川     ☆☆☆
黒川の奥さん ★★★★★