浦賀和宏さんの作品を読むのは初めてです。
いつも初めての作家さんの作品を読む時は気分が高揚します。

 

これはひとつ前に読んだ本は読み終わるのに10日かかりましたが、これは同じくらいのページ数ですが1日で読み終わりました。

 

それくらい続きが気になる作品でした。

そしてなかなか読み応えがありました。

 
久しぶりの多重人格ものです。多重人格ものは(※ネタバレ注意)「僕を殺した女 」(※ネタバレここまで)以来ですが、それとはだいぶ系統は違いました。
 
物語の中で語られていましたが、日本では多重人格の存在自体が懐疑的なんですね。でもそれも分かる気がします。
もし私が多重人格だと言う人を見たら、たぶん嘘をついてるのではとか演技をしているのではと疑いますから。
 
読んでいる途中もしかして亜矢子=香奈子かな・・と思いましたが根拠もなかったので、その考えを捨てました。
そして実は多重人格なのは根本の方なのではと疑いましたが違ってました(笑)。
 
この作品のキモは、亜矢子が読んだ本のキャラクターや出会った人の人格を創り出して、その人物になりきってしまうところだと思います。
 
そして正常だと思われた香奈子が実は亜矢子の人格の1つだったのは驚きです。
それに読んでいても、亜矢子=香奈子であることが非常に分かりにくく、読者に分からせないことがすごいと思いました。
しかし読み終わった後に思い返すと、途中ヒントは散りばめられていたな~と気づきます。
 
多重人格ものは人格を作ったり入れ替えたりと書く側にとって便利な反面、読む側としてフェアかアンフェアかの判定が難しい気がします。
 
それにしても多重人格者の亜矢子によって人がどんどん殺されます。
しかし殺人犯(亜矢子)が捕まらなかったり、叔父さんは自殺と判断されたりと、物語の世界の警察は無能ですね。とくに叔父さんを駅のホームで突き飛ばして目撃者はいなかったのか、貴治が殺された時、貴治を呼び出した香奈子(亜矢子)が容疑者に浮上しないのかが疑問です。
 
そもそも多重人格者が人を殺すというのはビリー・ミリガンが有名ですが、多重人格者による犯罪は多いのでしょうか・・と言ってもおそらく警察でそういった統計は取っていないでしょうから分からないのでしょう。
 
さてここからいつも通りどうでもいいツッコミをいれます。
 
根本と恵の若い大学生2人がバズライトイヤーを知らないものなのかなと思いました。
私はトイストーリーを見たことはありませんが、ウッディやバズライトイヤーは知ってます。それにトイストーリーは1995年(平成7年)に第1作が出て、貴治と香奈子は物語の中でトイストーリー2(平成12年)を見てるので、第一作から5年経過した人気作品のキャラクターを根本と恵が共に知らないのはツッコミどこですね(笑)。
 
そして平成12年ごろは携帯電話もドコモならiモードが普及して、画面がカラーになってきたりした時代ですね。
電話のアンテナを伸ばすとか、着信のメロディが和音になったという記述には懐かしいさを感じます。
 
なお小説に時代背景が分かるものはリアリティとして大事だと思いますが、そのせいで古くさく感じるのも事実なので、作家が物語を書く場合は難しいところなのかもしれません。
 
次に亜矢子は読んだ本などで影響を受けたキャラクターの人格を作り出していたようですので、それこそ無数の人格が存在したことでしょう。
もしかしたらその中にバズライトイヤーの人格もいたのかも知れません。
 
そして貴治の前でバズライトイヤーの人格が表れたら、貴治はどんな反応をしたのでしょうか。もしかしたら貴治なら面白がるかも知れませんね(笑)
 
この作品がとても面白かったので、浦賀さんの他の作品もそのうち読んでみたいです。 
 
(個人的評価)
面白さ    ☆☆☆☆
叙述トリック ☆☆☆☆
驚き     ☆☆☆☆
登場人物   ☆☆
 
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