森博嗣さんの作品を読むのはこれで2作品目になります。
すべてがFになる 」は読んで私には合わないと思いましたが、これはまた別物なのでどんな作品か楽しみに読みました。

 

読み終わってその感想は、これは近未来SF小説で、ミステリー小説というのは少し苦しいかなと思いました。

 

 
そして思い出したのは私が昔読んだ、渡辺浩弐さんの「1999年のゲーム・キッズ」のシリーズです。
(「1999年のゲーム・キッズ」シリーズは科学技術が進歩した近未来において、主に科学技術の進歩による人間の悲劇を描いた近未来シミュレーション的な短編集です。)

 

しかしこの作品は科学技術の進歩を強調しつつも、神の存在や生と死について、また正義とは何かまで踏み込んで描かれています。

 

 

展開として結局、ルナティック・シティの全貌は物語序盤でミチルが考察したとおり、国家的なプロジェクトではなく、個人の金持ちが作った実験場であったわけで・・なのでマイカ・ジュクがルナティック・シティを作ったと判明した時も驚きは特にありませんでした。

 

 

そして金持ちの道楽(実験)に付き合わされたミチルや、マイカ・ジュクの子ども生まされた挙句、その息子を殺されたデボウ・スホがかわいそうですね。

 

 

それにしても「森節」とでもいうべき文体は特徴的ですね。

 

また理系の作者特有の表現や言葉の選び方は独特でした。ただ人により合う合わないはありそうだなと思います。
私はやや苦手かなと思います。

 

最後になりますが、この作品をミステリー小説として読んでいたので王子殺害の真相が分かった後にちょっとずっこけそうになりました。

 

 
「こんなの密室じゃない!」と名探偵たちが泣きながら逃げ出しそうな密室です(笑)

 

神によりルールが作られ、その神の所業や存在そのものを民が語ることをタブーにすると設定されていたら神とされる者は何でもできるし、どこでも密室になります。

 

 

ある意味新しい密室と言えるのではないでしょうか。

 

 

この作品を含め「百年シリーズ」があと2冊あるそうなので、今後それを読んでみるのもいいかなと思います。

 

 

(個人的評価)

 

トリック            ☆
展開             ☆☆
環境設定         ☆☆☆☆
ロイディとの掛け合い ☆☆☆☆