インターネットでミステリー小説を検索して、殺された死者が生き返る話と紹介されていたためどんなミステリーか楽しみにしていました。

 

 

死者が甦ると言う設定を生かして、ミステリー小説を成立させているので、そのアイデアはスゴいと思います。

 

ふだんなかなか死者の視点で考える事がないだけに、妙に納得させられました。

 

この物語の作者の山口雅也さんはアメリカで生活してたことがあるのでしょうか、と思えるくらいアメリカの風景、文化、宗教、風俗などの描写がリアルに感じられ(もっとも私はアメリカに行った事もないので、アメリカのリアルは全然わかりませんが(笑))、まるでアメリカの小説の翻訳を読んでいる感覚でした。

 

 

登場人物も、アメリカの映画やドラマに出てきそうな人たちです。

 

生者であるトレイシー警部はかわいそうな役回りでしたが、笑えるキャラであり、実写で見てみたいと思えるものでした。
警察の人間や霊園の職員の会話は、私が思い描くアメリカ人そのままです。

 

主要登場人物が不倫しまくりの状況の中で、見た目はパンクで奇抜だが、根は真面目なグリンとチェシャのカップルは幸せになってもらいたかったですね。

 

 

そこへきて、ラストのグリンの語りは感動します。

 

この物語の根底には常に「生」と「死」の関係があり、それについて登場人物の口を通して語られています。
最初に出てきたふざけた霊柩車の「性愛と死は兄弟」の言葉がラストでグリンにより再び語られ、分裂の永続性を捨てて性により男女の個に分かれ、愛し合うことで永遠に等しいものを手に入れたと言うくだりは、きっと山口さんの言いたかったことなのでしょう。
最後の1行の - Fade out - を読んだ時はいつもの小説とは違う余韻が残りました。

 

ただとにかく長い!

 

半分の300ページ読んでもまだ事件の導入部が続いている感じでした。
そして物語とは関係のない部分が多いような気がします。
真相が語られ始めるのは残り100ページを切ってからです。
途中は、オチがどうなるか知りたかったので少しずつ読み進めました。

 

この物語が300ページくらいだったら読みやすかったかなと思います。

 

 

読んでいる最中は、死者が甦るようになったのは物語の始まりから1ヶ月ほど前と記述があり、なぜ甦りが急に始まったのか、甦る死者と甦らない死者との違いは何か、甦った死者はそのまま朽ちていくのかグリンみたいに魂の消滅みたいになるのかなど謎がいろいろありましたが、結局原因も結果もはっきりすることはなく終わってしまいました。

 

そういう世界なんだと納得するしかないようです(笑)。

 

(個人的評価)

 

謎       ☆☆☆
消化不良 ☆☆☆
アイデア  ☆☆☆☆☆
せつなさ  ☆☆☆☆☆