横山秀夫さんの本は初めて読みます。

 

この物語は青春小説のようで警察小説のようで、しかし時効まであと24時間と言う中での推理や駆け引きのある推理小説でもあり、とても面白く読めました。

 

 

いろいろな謎が多すぎてこの後どうなるんだろうと思っていると、後半に折り重なった謎が一気に解き明かされていくのは爽快です。

 

予想外の展開に驚かされるばかりでした。

 

特にいきなり秋間幸子が冴え渡る推理を披露した時には突拍子もなさ過ぎて「実はこいつが犯人か?」などと思ってしまいました。

 

そしてまさかここで相馬の妹が出てくるとは想像もしていませんでした。

 

また誰が犯人でどうやって金庫に死体を入れたかなど全く想像もつかず、校長が怪しいと思いましたが結局違っていましたし。

 

 

終盤、喜多と幸子の会話のシーンでこのまま重いまま終わるかと思ったら、続いて寺尾と大友の掛け合いと、署長と溝呂木と女性記者の2時間のサスペンスドラマっぽい終わり方で重苦しさはなくなり、明るい感じで終わるのがまたポイントが高いです。

 

まさかラスト手前で大友の生まれた子が男か女かの伏線が回収されるとは(笑)
そしてここでチャーシュー麺が再び出るとは、なかなかいい演出だと思いました。

 

それにしてもこの物語の中の先生はろくでもない人間ばかりでした。

 

とくに最終的にハイド茂吉は最悪でした。
舞子も妻子持ちの元担任の男に捨てられた被害者ではありましたから、元を辿れば諸悪の根源は今も教師を続けているこの元担任かもしれませんが。
暴力教師の坂東がかなりまともに思えるのが不思議です。

 

先生はその学校の中では絶対的な権力の象徴でしたから、普通の生徒は大概従って学校生活を過ごします。閉鎖的な学校で絶対的な権力があれば、人間がゆがみますよね。

 

思えば私の学校生活も、昔の受けたビンタや怒鳴り声もただの先生のウサ晴らしかヒステリーだったのではと思えるようなことはあります。

 

また先生の犯罪も頻繁にニュースになるので、結局は先生も警察官も政治家もお坊さんも人間であり、内海とあんまり差はないのかも知れません。

 

 

さてここでも出てきました私の好きな渋い中年親父!

 

溝呂木や鑑識のヤナさんはかっこいいですね。

 

ラストで溝呂木は、「現代は正論社会でその正論でも濾過し切れないものが内海で、成熟社会はありえない幻想」と言います。

 

私が読んだこの本は2009年に発売されたものですが、横山さんの1991年のデビュー作に2008年に修正されたもののようですが、デビュー作の当時もこの溝呂木のラストの言葉はあったんでしょうか・・
あったとすれば1991年以降、日本はネット社会になり、より正論社会が進んでしまったように思えます。
それも赤の他人が他の人に対して正論から一歩も外れることを許さない、一度の失敗も許さない、そういう風潮が加速している気がします。

 

溝呂木はさらに「これからは邪論が幅をきかせる」と言っていましたが、邪論が幅を利かせる事がどういうことなのかイマイチピンときませんが、そうならないことを祈るばかりです。

 

 

(個人的評価)

 

面白さ       ☆☆☆☆☆
謎          ☆☆☆☆☆
登場人物の魅力 ☆☆☆☆☆
先生のひどさ   ☆☆☆☆☆