宮部みゆきさんの作品を読んだのはこれが初めてです。
インターネットでミステリー小説の検索をしていて、結構ヒットする作品だったので読んでみたいと思っていました。そしていつもながらタイミングよく読書の先輩が貸してくれました。

 

宮部さんはベストセラー作家でいろいろなジャンルの作品を手がけた方だと聞きます。

 

この作品もとても読みやすく、かつ読み初めから面白くて引き込まれ、そのまま最後まで読めました。
さすがベストセラー作家!

 

夏からミステリー小説を中心に読んでいますが、初めから面白いと思えるのは少なかった気がします。物によっては初めから三分の一は読むのが苦痛だったとか、前半は話の展開が訳が分からないというものありますから。

 

 

推理物ではないので特別なトリックはありませんでしたが、カードローンの落とし穴や、戸籍制度、社会保険制度などいろいろな社会問題を取り扱った社会派ミステリーでした。

 

 

私のこの物語で一番の驚きポイントは、本間の「彰子が何番目の候補だったのか」のところでした。

 

私は彰子一人だけをターゲットにしていたと思ってましたので、この考え方にはなるほどと思いました。

 

1992年と現在では貸金業に関した法律は大きく変わったでしょうが、クレジットカードの現状は私の見える範囲では変わっていない事が分かります。

 

それにその当時からグレーゾーン金利って言葉があったんですね。

 

そしてあのラストは・・私はきれいに終わったと思っています。

 

 

結局犯人は誰かというのも全て推測であり、最後まで真相は明らかにされていませんが、本間たちが見つけ出した状況証拠が真相を物語っていると思っています。

 

 

だから2時間のサスペンスドラマっぽくラストで喬子の独白でつらい過去と事件の真相が明らかならなくてもいいのかなという感じです。

 

 

もっともこのラストはインターネットで調べると賛否両論のようですね。

 

 

なお物語の中で借金地獄の問題は交通事故と同じで誰にでもなる可能性がある、真面目に借金を返そうとする人間がはまる罠と力説されてました。

 

言おうとしていることは分かりますが、しかし借金で家計が火の車と言う人はやはりだらしない人、もしくは幻想を追い求めて現実を直視していない人であるというのが私の印象です。

 

蛇の脱皮の話は無理矢理感がありますが、「足さえ生えれば幸せになれる」というのはまさに幻想に取り憑かれた人間を表す逸話でした。

 

 

ところで女性作家が書いた物語だからかもしれませんが、私には女性の登場人物がみんな個性的に思えました。チョイ役であってもそれぞれ個性が出ています。

 

 

個人的には今井事務機のみっちゃんは何であんなにチョイ役なのに印象に残るんでしょうか(笑)。

 

 
物語の中の同僚と共謀して夫を殺害した妻や、喬子や彰子も男にべったりではなく自分で生きていこうという自立心があります。
男性作家の書く女性、特に被疑者となる女性は碇が物語でも言っていた「背後に男がいる」という感じになるのではないでしょうか。
その点、宮部さんの書く女性は男の影を感じさせないですね。

 

女性の描写の巧さが目立ちますが、男性の脇役も皆それぞれに個性があるので、宮部さんは人物を描くのが上手なんだと思いました。

 

 

最後にどうでもいいことですが、天涯孤独の者が同じく天涯孤独の者の戸籍を乗っ取って別人として生きる話は物語としてはありがちです。

 

パッと思いついたのが金田一少年の事件簿ですが(笑)。
現実にもあるんでしょう。
それとも戸籍売買の方が多いのでしょうか。

 

とにかく簡単に書類提出だけで他人になれてしまうほうが、借金よりも怖いですね。

 

 

(個人的評価)

 

面白さ       ☆☆☆☆
謎          ☆☆
借金の怖さ   ☆☆☆
喬子の短絡さ ☆☆☆☆☆