インターネットのミステリー小説の検索したときに、スタイリッシュなスパイ物語であると紹介文があったので、とても楽しみにしていました。

 

読んで1ヶ月以上が経ち、今更ですが感想を書きます。

 

読んだ感想は・・第二次世界大戦前のスパイ物語なのに本当にスタイリッシュでオシャレな稀有な物語でした。そして短編の集まりなので一気に読めました。

 

短編の集まりなのですが、結城中佐を軸にそれぞれにミステリーの要素もあり、そして他国のスパイと駆け引き、自国内のゴタゴタの処理、そしてスパイの苦悩と悲哀などが一冊に盛り込まれており、探偵物のミステリーとは一線を画しています。

 

とても面白く、私はものすごく好きな作品です。

 

スパイってものすごい事を当たり前のようにこなさなければならないものなんですね。私であれば絶対務まりません。

 

しかし私はすごいスパイの話より、スパイになれなかった(ならなかった)エピソードのほうが印象的です。

 

最初の「ジョーカー・ゲーム」に出てきた佐久間と最後の「XX」に出てきた飛崎は優秀でありながら、自分はスパイに向いていないとしてD機関を後にします。

 

自分を消し冷徹なスパイになりきれず、一人の人間として戦地に赴く事を選ぶ。とても人間的であり、戦時下で天皇制を議論できるような割り切りを持ったバリバリのスパイとの対比で心が痛みます。
しかしそのゴリゴリのスパイマスター結城が飛崎へ武運を祈ると敬礼した人間的な優しさ・・「魔王」なのに優しさを持った結城中佐にキュンキュンしてしまいます。

 

ここでも私の持論である「能力があり、かつ人間味のある渋い中年オヤジはかっこいい」を再認識しました。

 

 

それにしても結城中佐はさすが魔王と呼ぶにふさわしい深謀遠慮をする人物です。結城中佐みたいな人が後2人いれば戦争に負けなかったのではと思ってしまいます。

 

しかし他国にも同じようなスパイマスターがいるからやっぱりダメかもしれませんが。
 

最後にどうでもいいことですが、この本を読んでから映画もアニメもある事を知りました。

そしてそれぞれのダイジェストの映像を見ました。
ダイジェスト映像は数分の短いものでしたが、アニメ、映画ともかっこよくできていました。
映画版は主演の亀梨和也さんの格好よさや派手なアクションシーンなど盛り込んであり、見てみたいと興味を引かれるものでした。

 

しかしこの本を読んでからこの映画の映像を見て思ったことは・・これって原作蹂躙では(笑)??です。

 

 

物語の中で結城中佐が言っていた「スパイであることが発覚したら任務失敗」「死ぬこと・殺すことが一番目立つから絶対ダメ」というのに、登場人物が美男美女で目立つ、銃をバンバン撃つ、爆発する、美女と抱き合う、派手に逃げるなど、およそ物語で結城中佐が訴えているスパイとは程遠いものでした。

 

 

もっともジョーカー・ゲームにはまだ続編があるので、そこではスパイアクションに特化した話があるのかも知れません。またこの物語でも「ロビンソン」でイギリスの諜報機関から脱出するというアクション的な話もありましたから・・

 

 
それにしても欧米のスパイアクション映画に寄せすぎな気がします。

しかし漫画・小説の実写映画化というものはエンターテイメント性に特化して派手にしなければお客さんを呼べないのでしょうから、仕方がない部分はあるのでしょう。

ということで原作と別物として興味はあるので一度映画版も見てみたいと思いました。

 

(個人的評価)

 

スタイリッシュさ    ☆☆☆☆☆
ミステリー       ☆☆☆
スパイの重要性  ☆☆☆☆☆
映画の期待度   ☆☆