ちょっとした都合で2週間ほど読書断ちをした後に、借してもらい読んだ本です。
やっぱり読書は楽しいですね。

 

このぶ厚い上・下巻はなかなか読み応えがあリました。しかし厚みを気にすることなく一気に読めました。とても面白く、印象深い作品でした。

 

 

そして読んだ後の感想は・・

 

重たい高校生ばっかりだな~
やっぱり自殺者もしくは自殺企図者(自殺未遂者)は周りに多大な迷惑をかけるんだな~
です。

 

自分のチャランポランな高校生活と比べてはいけないんですけど、物語の中の登場人物はみなドラマチックな生き様です。

 

 

上巻の1/3を読んだあたりでだんだん話が分かってくると、”もしかして全員分の過去編をやるのか?”と思ったらホントにやってましたね。

 

 

一人ひとり丁寧な心情描写なんですが、丁寧すぎてここまでホント必要かと思ってしまします。特に充と景子と清水と鷹野は、「誰にでも悩みはある。そして自殺する可能性も誰にでもある」と思わせるためにむりやり悩みをつくった感じがします。

 

 

それから清水さんの集団失踪事件のよどみない説明は、(確かドイツの)学者の説らしいですが、なぜあれほど訳が分からない集団失踪事件が体系的に説明できているのか不思議です。

 

 

誰か一人が残って内側から蓋をするとか、世界を作った本人が許せば誰も残らなくていいとか全部学者の憶測でしょうし、それに普通だったらオカルトとして一蹴されるところですが、この物語の中ではそれが正解と受け入れられました。

 

 

しかも深月の精神世界の閉じ込めは、周りからみたらあくまで「みんな寝ている」状態であって、肉体が失踪しているわけではありません。

 

物理的な失踪と今回の精神を取り込まれて目覚めないのは同じではないのでは・・と思いましたが、どうやら学者の説はこの物語では万能のようです。

 

と、いろいろ好き勝手に言わせてもらいましたが、物語としてとても面白かったです。

 

とにかく見事にだまされました。

 

読んでいる時は常に自殺したのを誰か考えながら読んでいて、最初は昭彦と思い、次に鷹野だと思い、後半は絶対に深月だと思ったら、春子だったとは・・

 

自殺者とホストは別だったというのも全く思っていませんでした。

 

そして叙述トリックにもおどろきました。

 

菅原は名前が出てこない、榊は姓か名かわからない、とずっと思ってましたが、まさか榊=菅原だったとは。そして菅原の過去のお坊ちゃんのヒロ=鷹野、みーちゃん=深月は想像もしていませんでした。

 

名前については、今まで小説を読んできて学んだ

 

【「カタカナの名前」「男か女か分からない名前」「姓なのか名なのか分からない名前」「姓か名しか出てこない名前」「あだ名しか出てきていない名前」には注意しなければならない】
というのを改めて思い知りました。

 

それにしても深月の閉じられた精神世界の中の菅原の存在は、深月の意思、願望が反映された何でもアリな世界だけに、ミステリー小説的にはちょっと存在自体がずるいですね。

 

これがミステリー小説でよく言う「信頼できない語り手」というやつなんでしょうか。

 

なおいつもながら読み終わってもよく分からないことは多くあります。

 

 

ラストで春子が鷹野の前に出てきたのは、内側から扉を閉めて閉じこめられていた春子を深月が許したからで、それで現実世界に出られた・・という解釈なのでしょうか?

 

となると春子もあの校舎に取り込まれてたってことでしょうか・・それとも引き寄せられたか・・
 
精神世界に閉じ込めることが普通に説明できる世界では、死んだ2ヶ月後にどこかにいた春子の幽霊が取り込まれて、そして2年後に幽霊として現れていてもおかしくはないんですが。

 

それと充・昭彦・清水・梨香はマネキンになる前に春子が自殺したのか思い出したとき、飛び降りる春子の姿が見えていたんでしょうか。それともホストの深月の姿が見えていたんでしょうか。

 

 

なぜ景子の前には「女っぽい景子」が出てきたのか、またなぜ景子だけ階段を上がるか下りるか選択できたのでしょうか。

 

ここだけ深月の意思ではなく、景子の深層心理とも思えますが・・分からない事だらけです。

 

さてここからどうでもいいことです。

 

読んでる時に、どうすれば脱出不可能な校舎の外に出られるのかを考えてみました。

 

○2階の窓から脱出

 

2階は窓が開くなら、カーテンをロープにして降りれるのではないかと思いました。
しかし4、5階を増築するくらいなので、突然穴を掘って降りれなくするくらい朝飯前でしょうけど。

 

○ホストの意に添わない行動をする

 

例えば閉じ込められた恐怖で錯乱して、思い出す前にいきなり仲間を殺そうとしたら、校舎から強制退去させられて無事脱出できそうです。
しかしみんな精神世界の記憶を共有しているので、現実世界に戻ったらもう友達ではいられなくなりそうですが・・

 

ちなみに最後の解説を書かれていたのが川原泉さんで、その名前を見てうれしくなりました。

 

最近は川原さんの漫画を読んでいませんし、熱烈なファンではなく、また一番有名であろう「笑う大天使」も未読です。しかし「メイプル戦記」は買ってましたし「甲子園の空に笑え!」は単行本で読んでいました。「銀のロマンティック・・わはは」も印象深いです。
もう30年位も前になるとは・・家のどこかに探せばあるかもしれないので見つけたらまた読みたいです。

 

(個人的評価)

 

ミステリー          ☆☆☆
ストーリーの驚き     ☆☆☆☆
深月の迷惑度      ☆☆☆
サトちゃんのかわいさ ☆☆☆☆☆