この本も叙述トリックやどんでん返しの小説として必ず検索に引っかかる作品ですので、読むのをとても楽しみにしていました。
背表紙の紹介文で「・・最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。・・」とありましたので否が応にも期待は高まります。

 

結果は見事にだまされました。これは確かに物語がひっくり返ります。

 

しかしこの物語は最初に読み終わったときは、たっくんが別人だった以外には、私は内容が理解できずに、驚きはしましたが頭に??がいっぱい出ました。

 

そこでインターネットでネタバレや考察サイトで調べて、改めてこの物語の面白さを理解しました。

 

そして「マユ!なんて女だ!!」と理解できた時のほうが衝撃は大きかったと記憶しています。つまり読んでビックリ、理解してビックリの2度おいしい物語でした。

 

この本のアマゾンの書評では悪い評価も目立ちますが、私はものすごく好きです。

 

ストーリーとしては盛り上がりに欠けるかもしれませんが、キャラクターが一人ひとり悩みながらも生きている(マユは悩んでいたのか不明ですが)のがとても印象的です。
そして最後まで読んで意味がつながる叙述トリックは私は良かったと思います。もっとも私は自分では理解できなかったためネタバレサイトのお世話になりましたが・・

 

なお私はside-Bを読んでいる最中は「マユはかわいそうな子。完全な被害者」と思い、過度に思い入れを持って読んでいました。

 

そしてラストでたっくんは辰也であり、マユは夕樹とハッピーなままであることが判明したため、感想としては「みんな落ち着くとことに落ち着いたからよかったじゃん」と思いました。
だから私にとっては物語のラストでみんながハッピーエンドになったと思っています。

 

マユを責めることができない私ですが(笑)、辰也は少しかわいそうですね。

 

side-Bを読んでいる時はマユと美弥子と二股をかけて、なんて自分勝手な奴だと思っていました。しかしマユも二股をしていたわけですし、辰也が東京にいる間、マユは静岡で夕樹と遊んでいただけなのに、辰也はできるだけ東京から静岡に来るように努力をしていたわけですから。しかもマユの勘違いした電話対応で罪悪感に苛まれてますし・・ある意味マユと別れて良かったのではないでしょうか。

 

そう考えると夕樹はおいしいところだけを持って行ったわけですから、得だけして損をしていないと言えるでしょう。

でも夕樹とマユもそのうち別れる気がします。その時夕樹はこの世の終わりのような気分になるかもしれませんしものすごく傷つくかもしれません。

対して辰也も「絶対という言葉を捨てた」と言っている通り、美弥子との将来を不安視していますし、この物語の登場人物みんなの先行きは不透明で、後味がいいわけではありません。

 

 

 

しかしイニシエーションラブの言葉通り、ラストでそれぞれの位置に納まったカップルの恋愛も「通過儀礼」に過ぎないと考えれば、この後をどんなに悲観しようが希望に満ちていようが、なるようにしかならない現実を受け止めるしかないですね。

 

 

 

(個人的評価)

 

叙述トリック         ☆☆☆☆☆
マユのしたたかさ      ☆☆☆☆☆
読了直後の驚き      ☆☆☆
真実を知ったときの驚き  ☆☆☆☆☆☆