核シェルターに閉じ込められて謎を解くの話です。
閉所恐怖症の人にはたまりませんね。

1990年発売の話でありますが時代的な古さはあまり感じなかったため読みやすいです。
しかし今の時代であれば公衆電話で連絡を取らず携帯電話で直接個人に話すので、展開が少し変わったかもしれません。

実際に核シェルターに閉じ込められたら人間はどんな感じになるのでしょうか。
ここに閉じ込められた4人は冷静で理知的で事件の真相にたどり着いたのですが、人によっては殺し合いが始まってもおかしくないかなと思います。

物語の内容ははさておき、どの登場人物にも思い入れできないお話でした。

まずはお嬢様咲子さま!
こういう自己中女は実際いるんでしょうかね~。少なくとも私の人生には富豪のお嬢様と知り合う機会がないのでよく分かりません。
そしてなんで鮎美も千鶴も咲子の性格は分かっているはずなのに、ボーイフレンド(この言い方に少し時代を感じます)を持ち寄る提案に参加するかね~と思いました。

そしてバンドマン雄一はモテ男。咲子の性格を考えれば被害者といえなくもないですが、れっきとした加害者1号。
シェルターの中で探偵役であり脱出を試みる中心人物。
しかし真相が分かってしまった後では「結局お前だったんかい!!」とツッコミを入れたくなります。
悪い人間ではないようですが、シェルターの中にこんな人物がいたら”何をエラそうにっ!!”と思うことでしょう。
ちなみに雄一の魅力(モテ男の秘密)も小説内ではよく分かりません。

鮎美は父親が家出を繰り返すと言う育ちから、ミステリー小説ではありきたりな虐待を受けたかわいそうな生い立ちかと思ったら、そんな記述は一切なく、父親が家出する設定は後に全く物語には生かされません。
たまに思い出したように”タバコが吸いたい”と言い出すあたりに蓮っ葉な感じはがあるくらい。

そもそも咲子が提案した催しで、鮎美はなぜ正志を連れてきたか疑問です。
魅力的な女性と描写があるので、他にも男友達もいてもおかしくないと思います。
それとも正志は幼なじみ以上に大切な存在であったのでしょうか?
高校生の頃に婚約し、事件後にプロポーズを受けたとありましたが、鮎美が喜んでいる描写はないですし。正直ズルい女という印象です。

また幼なじみで真面目一筋で鮎美と結婚を考えている正志をこの集まりに連れてくるくらいなら、会って2,3日で雄一になびくほど尻軽でもないと思うのですが・・雄一恐るべし!!

正志は真面目だけどヘタレな感じで書かれてますね。この物語では被害者的な感じでした。鮎美が好きなのはわかるけど、ラストを読むと、この物語の後は絶対に雄一&鮎美のカップル成立だろうな~と思うと正志の立場に涙を禁じえません。
しかし物語ではこういう一途な男も必要かとも思います。この男の勘違いがなければ事故に見せかけられなかったわけですし。

千鶴は・・この物語に必要であったのかと思わせる、ある意味一番の被害者と言えるかもしれません。にぎやかしの役割でしょうか。しかし千鶴が雄一たちを仲をばらさなければ物語が起きなかったかもしれないので、別の意味で必要な存在かもしれません。
犯人を予想していく中で「千鶴は犯人ではないな~」と思っていたので、結果その通りでした。

ちなみに咲子ママは閉じ込めた4人から真相が語られたら4人を解放します。
それでは早く解放されるにはどうしたらよかったのか考えてみました。

1 

鮎美がさっさと真相を語る。
  これに尽きると思います。
  最初から真相を知っていた鮎美が閉じ込められてすぐに話して、 雄一自身が誤って殺したことを知れば数時間で解放されたかもしれません。
  事件後、正志と結婚を約束したのにシェルターで真相を語った後に雄一を失いたくなったと言っちゃう鮎美って・・正志爆死(笑)

2 

インタホンの線を切る
  話の中でも線を切るか切らないか少しだけ話題になりました。
  反対にあって線を切るのは実行されませんでしたが、もし線を切っていたらもしかしたら本当に咲子ママは様子を知るために開けたかもしれません。そして開けた隙に逃げ出すのです。
  ただ私も小説を読みながら、自分がシェルターの中にいたとしても切ることには反対したと思います。

さて全くどうでもいいことですが、私の思う最大の疑問は咲子ママンはどうやって4人を別々に咲子の東京(?)の自宅に呼び出して眠らせて、離れた別荘(何県でしょうか?警察官が「県警」と名乗っていることから東京ではないですね)のシェルターまで運んで閉じ込めたのか。

おそらく4人を数時間以内に”呼び出し→飲み物を飲ませて眠らせ→て閉じ込める”を時間差で行ったと思われます。
それってかなりの重労働かつ時間的にシビアだと思いますが、中年女性一人で一人実行したの?それとも協力者がいたの?など思ってしまいましたが・・物語的にどうでもいい事なんでしょうね。

(個人的評価)
面白さ  ☆☆
非現実感 ☆☆☆☆☆
登場人物 ☆
謎解き  ☆☆