須佐町弥富は、桃源境を思わせる山間のある郷である。

昔、この弥富のある老夫婦が京の都で拾い育ててきた女の子が、実は和泉式部とその情人との間にできた子であって、余儀ない事情から、守り仏にと観音像を添えて、東山の黒谷あたりに捨てたものとわかり、たずねてきた式部に七歳になる女の子を返してやった。

 老夫婦は、金銀の返礼をうけて弥々富貴になったということで、これにちなんで里の名は「弥富」と名づけられたといわれ、ここに式部堂を建てて、守り仏の観音菩薩を本尊として祀ったが、今は全柳寺に安置されているということである。

 

 

全柳寺

 

 

 

(2024.04.28)