山口市下清水のおぼろ池には、目の見えない泥鰌(めくらどじょう)が棲んでいるといわれる。

 

 昔、音次郎という美男の若者が、鰐石の螢狩りに出かけ、宵の河原で小町娘の深雪と知り合い恋仲となったが、互いに名をうちあかしかねたはじらいがもとで、偶然にも親がもちこんだ縁談を当人同士のものとは知らず、無下に断ってしまう羽目となり、音次郎は旅立ち、残った深雪も、日毎夜毎に泣く涙がかわかず、盲となってしまった。

 

 それから歳月は流れ、さすらいの果てに音次郎がふるさと山ロに帰りついたとき、恋しい深雪とおぼろ池のほとりで再会したが、悲しや深雪は盲の身を嘆くばかり、手をとりあった二人がほろほろと流す涙がおぼろ池にこぼれ落ちた。と、不思議や、深雪の目はひらけてきた。池に棲む泥鰌が深雪を憐れんで身代わりとなり、両目をつぶして盲になったといういい伝えである。今もそうした泥鰌を時にはみかけることがあるという。

 

おぼろ池

 

キショウブが満開でした

 

おぼろ池

 

説明版

 

鰐石のホタル狩り

 

鰐石は山口ゲンジボタル発生地です

 

(2024-04-22 撮影)