Slipperの部屋

Slipperの部屋

『仮面ライダー』等の特撮ヒーローを愛好しております。気ままに書きますので不定期更新で失礼。

つなぐ

 

 

 皆様、お久しぶりです。

 当ブログ管理人のスリッパです。

 ライダー映画の記事すら書かなくなって一年以上が経過している自堕落ブロガーですが……

 しかし今回は、記念すべき30周年を迎えるあのネオライダーへのお祝いをしたいと思い、再び筆を執ります。

 

 今回ご紹介する作品は、1994年に公開されたあのジャンボなヒーローの映画です!

 

※以前のブログに掲載していた記事とは別物です。2019年に作成したそれと類似する部分もあれば、違う部分もあると思いますので、ご容赦ください。

※ネタバレを含みますのでご注意ください。なお、ネタがバレていても面白いのがこの『J』だと思います、と私の意見を添えておきます。

 

『仮面ライダーJ』

 

原作:石ノ森章太郎
脚本:上原正三
監督:雨宮慶太
プロデューサー:
 久保聡(バンダイビジュアル)
 堀長文
 角田朝雄
制作:
 東映
 東映ビデオ
 バンダイ

 

~あらすじ~

 ネイチャーカメラマンの瀬川耕司は、怪人集団「フォッグ」から少女・木村加那をかばって命を落とす。
 だが、地底に生きる「地空人」の力で「仮面ライダーJ(ジェイ)」として復活。
 大地の精霊の力「Jパワー」をその身に受け、フォッグ怪人、そして機械獣母艦フォッグマザーと対決する!

 

(仮面ライダー公式ポータルサイトより抜粋)

 

 

1:Jumbo(ジャンボ)な夢ライダー

 

 どうしても先に言っておきたいことがあるので言わしてくださいまし。

 

「仮面ライダーJのジャンボフォーメーションはッ!

 原作者・石ノ森章太郎先生がッ!

『一度きりの奇跡だから』

 と認めたものでッ!

 そんなにポンポン使っていいもんじゃないからッッッ‼」

 

 

 ……ありがとうございます。これで冷静に文字を書くことができそうです。

 また何か変なことを叫んでいるぞ、と思われたそこのあなた。そう、あなたです。

 どうか誤解のないように聞いていただきたい。

 

 仮面ライダーJは、石ノ森章太郎先生が亡くなられる前に携わられた最後のライダー。

 1993年公開の映画作品『仮面ライダーZO』の好評を受けて、お正月映画として企画が進行していたという本作『J』ですが、紆余曲折を経て『ZO』同様にゴールデンウィーク映画として世に出たそうで。

 その一番の売りポイントは、それまでの『仮面ライダー』シリーズでは絶対に有り得なかったこの文字列。

 

「巨大化」

 

 なんと全長40メートルの巨体=ジャンボフォーメーションに変身するのが、この仮面ライダーJなのです!!

 

 ……いやそれ別の特撮ヒーローで観たことあるっていうか、そちらのお家芸では?

 そうツッコミ入れたくなるのもわかります。

 しかし恐ろしいことに、制作会社が違うこの二大ヒーロー、実は公式的に共演したことがありまして。

 

 

 

 生憎と私はまだ観たことがないのですが、どうもこのビデオのパッケージの通り……

「巨神のごときウルトラマンに並んで、等身大ヒーローだった仮面ライダーが、まさかの巨大化!」

 というテレビシリーズでは有り得ない夢が展開されているそうです。

 

 ストーリーに重きを置きたい私個人としましては……

「まあ、お子様たちが楽しいんなら、よろしいんじゃないでしょうか」

 くらいの気持ちなのですが。

 

 いかんせん、商売の世界はいつだって数字が強さ。

 子どもたちの大好きな二大ヒーローが夢の競演するだけでなく、あまつさえライダーが巨大化しちゃうなんて……でっかいの大好きな少年少女たちが大喜びしたのは想像に難くなく。

 

 要するに、ビデオは売れた。

 そうして新作として控えていた『J』の企画にも「巨大化をやろう!」みたいな機運が高まったようで……

 

 しかし雨宮慶太監督は原作者・石ノ森章太郎先生同様に「巨大化には反対」と仰っていたようです。

 やはりライダーのサイズ感は等身大だからこそ。

 雨宮慶太監督の『仮面ライダーZO』や、後に監督が描き出した特撮ヒーロー番組『牙狼GARO』シリーズなどを観ても、その等身大ヒーローを扱った作劇は見事としか言えないものでして。

 

 

(『ZO』、めちゃくちゃ好きなので宣伝させてください……48分で観る芸術。最高!)

(『牙狼GARO』、まだ全部は視聴できていないのですが、基本的にどのシリーズも世界観を共通させているので見やすさがすごいです……初期作品はHDリマスターで美しく、最新作『ハガネを継ぐ者』は連続ドラマ性アップで、どれも面白いです! 個人的オススメは映画『牙狼GOLDSTORM』!!)

 

 

 また原作者である石ノ森章太郎先生にしても、やはり巨大ヒーローの金字塔たる『ウルトラマン』という存在を知っていたでしょうし、作品世界や設定をあまり考えないまま安直に「売れるから巨大化だ!」という向きには賛同できなかったのかなと、私個人は邪推してしまうところ。

 

 ただこの時期の『仮面ライダー』が、いわゆる「マンネリ」からの脱却を求められていたのも事実でしょうか?

 

 1989年に放送が終了した『仮面ライダーBLACK RX』を最後にテレビシリーズは終了。

 生誕20周年記念にと1992年にビデオ媒体専門のVシネマとして制作された『真・仮面ライダー/序章』と、そのヒットを受けて翌年(1993年)に劇場公開された『仮面ライダーZO』と売れ行き好調に見えても、実際は単発作品で連続性は存在しない。

 

(そもそもこのビデオ、子どもが観ることをあまり前提においていないようなので……今風に言うなら「大きいお友達向け」とか「あの頃ライダーに熱中した君へ」とか、そういう感じの作品。でも芯の通った真実の愛のライダーであるのは確かです!)

 

 

 つまるところ、また『仮面ライダー』はテレビにも映画にも登場せず、忘れられてしまうかもしれなかった。

 

(後に『仮面ライダーワールド』というイベント用映像ではZOとJが、まさかのシャドームーンと対決していますが……すみません、私はこれを「つまりは東映さんが、いわゆる何でもありのヒーローショーを映像作品としてお出しされたのですね?」と解釈しております。個人の意見ではあるのですが、これに物語的な連続性はないと解釈しておりますので、もし「いいやアレは公式が出したんだから正史だね!!」という方は、申し訳ありませんが、私にはちょっとわかりません……だってシャドームーン様が巨大化するの、ちょっと色々と理解できない……巨大化できるJと対等に戦わせるためだとしても……なんか、こう……ね?)

 

 失礼、話が逸れました。

 

 

 要するに企画側としては。

「仮面ライダーってバイク乗って、悪者にキックして去っていく、虫っぽいヒーローでしょ?」

 そう刷り込まれた観客たちへ……

「今年のはちょっと、いいや、ジャンボ級に違いますぞ!」

 と胸を張って言える、最強のカードを手に入れたつもりだったのではないかと。

 

 まあ、売上だとか観客動員数だとか、そういう世知辛い話を抜きにしても。

 或いは、ウルトラマンと仮面ライダーが大好きだった子が、大きくなって映画製作の現場に入って。

 

「仮面ライダーだって巨大化する!」

 

 そういう夢を叶えた結果が、あの仮面ライダーJという「巨大化するライダー!」だったのなら。

 特撮の世界に夢を追いかけていった誰かのJunbo(ジャンボ)な願いの結実だったなら、いいな……

 などと思うスリッパでした。

 

 でも大集合映画でJ先輩を雑に巨大化させちゃダメだぞ!

 あれ「一度きりの奇跡」って、原作者先生がおっしゃったんだからね!?

(ここだけ過激オタクですみません……でも何度でも言いたくなるの……むむむ)

 

 

 

2:Jupiter(ユピテル)を抱く大自然の使者

 

 仮面ライダーJの《J》……およそJumbo(ジャンボ)のJであることは疑いの余地もありませんが。

 実は小説版などを読むと、それだけではないことがわかります。

 それが《Jupiter》……ユピテルの頭文字。 

 

 

 

 いやユピテルって何?

 私も思ったのですが、検索してみれば「古代ローマの最高神ゼウス」「気象を司る天空神」など、信仰や崇拝の対象を指す言葉でもあるようで。

 個人的な意見としては、この『仮面ライダーJ』におけるユピテルとは、大自然を源泉とする大いなる神秘の力……といったところでしょうか?

 映画の中では「Jパワー」と呼んでいますが、およそ仮面ライダーJのエネルギー源がこの「ユピテル」というもので、おそらく「ユピテル・パワー」を「Jパワー」とまとめているのかも?

 

 最近だと庵野秀明監督の『シン・仮面ライダー』で多用される「プラーナ」みたいなものでしょうか。

 

(こちらも大気中に存在する大自然のエネルギー。もしかすると庵野秀明監督はこの『J』のJパワーから着想を得た……なんてのは飛躍ですかね?)

 

 

 そうそう『シン・仮面ライダー』といえば。

 時に、こんなセリフをご存知でしょうか?

 

「大自然がつかわした正義の使者……仮面ライダー!!」

 

 これは初代『仮面ライダー』のコミカライズ版における、第一話のライダーが名乗りを上げるシーンで使われたセリフです。

 

(もし『シン・仮面ライダー』をご覧になって気に入られた方、こちらも読んでみると、また新たな発見を携えて『シン』の世界を観られるかもしれません……ご参考までに)

 

 

 

 そう、そもそも『仮面ライダー』というヒーローとは。

 暴走する科学技術を武器に人間を機械化し支配する利己的な秘密結社ショッカーの魔の手から、自然に生きる人々やその自由を守るために立ち上がったヒーローだったはず。

 テレビシリーズが始まった1971年には公害が問題視され、利益の追求で自然と社会を壊してしまう人間のエゴイズムに対するアンチテーゼという側面もあったのだとか。

 そこへの原点回帰も踏まえるように「異常気象」や「壊されていく自然」というテーマが本作にも随所に盛り込まれております。

 

 そんな世界で仮面ライダーJに選ばれた青年=瀬川耕司も、自然を愛し、その破壊を調査するカメラマン。

 同じく自然を愛する少女=木村加那と出逢ったのも、彼女が自然破壊の犠牲になった動物たちの墓を作っているところで。

 仮面ライダーJの相棒とも呼べるバッタ=ベリーも、人間の開発が進む裏で生活の場を奪われる自然動物たちに言及しています。

(ちなみにこのベリー先輩、ライダー最新作『仮面ライダーガッチャード』の制作陣もキャラクターや設定で困った際に思い出し、現在の可愛いホッパー1ちゃんに繋がったのだとか。まさに温故知新!)

 

 

 脱線失礼。

 

 

 さらに本作で敵対する《フォッグ》……メカメカしい機械と生々しいクリーチャー感の融合した彼らの目的は「千年に一度の大孵化を成功させること」。

 言い換えれば「自分たちの子孫で、この地球上の生命全てを喰い尽くすこと」……!

 

 かつて私は、この恐ろしい侵略攻撃を「未来の人類もそうなるのではないか?」と考察しました。

 

 食物連鎖は自然の摂理です。

 しかし「絶滅させるほどに喰い荒らす」のは、連鎖の循環を壊してしまうのと同義。

 宇宙の様々な惑星を喰い荒らすフォッグのそれは、まさに破壊者そのもの。

 

 これ、今の人類もそうなりつつなっていないでしょうか?

 それこそ経済の発展に伴って、過度な競争で互いを蹴落とし、弱者を食い物にして、いっそ社会のシステムごと壊しかねないとわかっていながら「自分さえ良ければ」とする考え方もまた危険なのでは。

 

 もちろん人という種族の習性として、どうしても切り捨てられないエゴはあるし、理想だけでは生きていけないのも確か。

 それでも、自然がなければ生きていけないのが生物としての我々「人間」というちっぽけな存在でもあるはず。

 

 それこそ小説版の『仮面ライダーJ』では、フォッグの首領たるフォッグ・マザーは自身のいた惑星の終末戦争に直面して「死にたくない」という一心で進化した怪物。

 それが気付けば、死にたくないと涙する小さな命を踏み躙って繁栄を謳歌する破壊者と成り果てるのは、いつか人間にもそういう者が現れるのではないかと怖くなるところ。

 

 だからこそ、未来を生きる子どもたちの夢の結晶とも呼べる巨大化を「危機に瀕した地球が起こした一度きりの奇跡」として描き、その暴走する繁栄を砕くというのは、見るだけでも痛快!

(巨大化という設定的な難題を、宇宙への夢というファンタジー感と現実の世界におけるリアリズムの融合で描いていくところ、大好きです……流石は脚本家:上原正三先生&原作者:石ノ森章太郎先生!)

 

 

 そんな感じで。

 自然をバックにしたワイヤーや重機、また売りポイントの為に創られた巨大戦用セットなど、積み重ねた特撮技術の粋を集めて詰め込んだ『仮面ライダーJ』。

 心優しいカメラマンの青年が「大自然の使者」として地球の危機を救う王道ヒーロー物語と、そこに組み込まれた大自然からの警鐘。

 今年のゴールデンウィーク、もしまだ予定が決まっていない・できれば家でゆっくりしたい・何か作品を観たい・お子さんと一緒に自分の子供時代のヒーローが観たい……そんな方にオススメです!!

 

(リアリティある世界やグロテスクさに惹かれるあなたは『真』や『ZO』と一緒にどうぞ!)

 

 

 どうでもいいことですが。

 今回の記事のために改めて視聴していたら、ハチ女ズー、めちゃくちゃ良くない?と自分の中で盛り上がっております。

 怪人態の妖艶さとグロテスクさはもちろんのこと、人間態を演じる万里洋子さんがお美しい……笑

 いえいえ、もちろんトカゲ男アギトのクリーチャー感や、コブラ男ガライの無機質ながら圧倒的な存在感、何よりボスにして母艦であるフォッグ・マザーの脅威の機械生命体っぽさと言ったら……!!

 この1990年代ならではの「生々しいクリーチャー造形」と「随所に組み込まれるCG」の良さは、現代のライダー作品ではなかなか味わえないところでもあるので。

(無論、令和のライダーたちはそこではないところで楽しさ・面白さを見出せると思いますが!それはそれ、これはこれ!!)

 

 そんなわけで、是非『仮面ライダーJ』という夢の詰まった一作、味わっていただきたい!!

 

 

 ではでは、今回はこのあたりで。

 こんなところまで読んでいただき、どうもありがとうございました!!