いよいよ中国地方遠征も最終日。
この日は氷ノ山に登ることにした。

氷ノ山は最初ガイドブックに従って仙谷コースを登り三ノ丸経由で下山するつもりだった。
しかし入山前に仙谷コースの雪渓が崩れ非常に歩きにくい、危険だという情報を見つけてしまい、急遽氷ノ山越コースを迂回することにしたのだ。
現地でも同じような情報を聞いたのでコース変更は正しい判断だったのだろう。
さっそく行ってみよう!



キャンプ場の一角に登山者用の駐車場がある。
かなり広いのでよほどのことが無い限り満車ということはないだろう。
なお、登山口には駐車場はない。
キャンプ場内の管理道路に路上駐車は迷惑なのでやめておいたほうがいい。



駐車場からキャンプ場内の舗装路を歩いて登山口へ向かう。
ここには駐車場は無いが登山届ポストがある。

 

良く整備された植林地の中を行く。



キャンプ場の外れに電気柵が設置してあった。
そういえばさっき鹿を見たな。
ワイヤーに触らないように慎重に開けて、通過したらもとに戻すのを忘れずに。

 

鹿よけの柵を越えると登山道は少しずつ急になってくる。
順調に体が温まっていく。
いい感じだ。

 

途中、いくつか分岐がある。
これは北探勝路への分岐。
探勝路に入るとキャンプ場に戻ってしまうので我々はさらに奥へ進む。 



氷ノ越登山道は歴史ある道だという。
昔は山陰地方からお伊勢参りへのルートとして使われていたそうな。
今でも石畳などが随所に残っている。 



そう言われると、この変哲もない登山道が厳かな雰囲気に思えてくる。 



この岩ガレの沢道も… 



急斜面をトラバースするこの道も、昔から多くの人が歩いてきたのだなと思うと感慨深い。
もしかしたら、あの木の影から巡礼装束に身を包んだ旅人が現れるのでは…。
ガラでもなく、そんな想像をしてしまう。



登山開始から50分、氷ノ山越に到着した。
小さな避難小屋が立っている。



峠には一体の石仏が鎮座していた。
いかにも古の街道という風景である。
山旅の安全を祈願していこう。

 

ここからは進路を南に採り氷ノ山山頂を目指す。



すでに山頂の避難小屋が見えている。
残雪も…あるな。
さて、あれが登山道に干渉しているのかどうか。



氷ノ山越から先はしばらく穏やかな道が続く。
尾根道なのだが幅が広くゆったりしていて歩きやすい。 



少し開けた場所に出た。
道の脇に残雪が現れたものの登山道に干渉してはいなかった。

 

とうろう岩?
どれのことを言っているのか、結局わからず仕舞いだった。
わからず仕舞いといえば、地図にはこの辺に「ヤキョウガ山」というピークがあることになっているのだが、それもどこがそうなのかよくわからなかった。



仙谷分岐に到着。
ここで当初計画したコースに復帰ということになる。
分岐からでは仙谷コースの様子はわからないが登ってくる人の気配は無い。

 

仙谷分岐のすぐ先には「こしき岩」という特徴的な大岩が待ち構えている。
北側の足元をトラバースして越える。
氷ノ山越コース唯一の険しさを感じる場所だ。
特に難しくはないが、足元と落石に注意である。

 

こしき岩を越えると、ついに登山道上に残雪が現れた。
とはいえ、通行に支障があるレベルではなく滑落などの危険もない。
良かった。
一応、アイゼンは持ってきているけどね。

 

なぜか「この付近、滑落注意」と書かれた看板のある階段。
とても滑落しそうな場所には見えないが、看板があるということは過去に事故があったのだろう。

 

階段の先に山頂避難小屋が見えてきた。
トンガリ屋根が可愛い小屋だ。 



登山開始から2時間。
思っていたよりあっさり山頂に立つことができた。 



小屋の両脇にケルンがあるので、それぞれ記念写真。 



さらに小屋の北側にお社が祀ってあるので、こちらにもご挨拶。
なんだか色々と情報量の多い山頂だ。 



この避難小屋、山頂の一番眺望がいい場所に陣取っている。
なのでぐるり全方位を眺めたければ小屋のテラスを一周すると良い。
せまいけど。 



奥に見えるなだらかな山は扇ノ山?
時間があれば午後に登りに行きたいと思っている。 



北東側はもう兵庫県だ。
正面に見えているのは鉢伏山だろうか。 



これは西側の眺め。
我々が歩いてきた道のりがそっくり見える。 



南側は笹薮に邪魔されていて見づらいが、この後歩いていく道のりと三ノ丸が見えている…はず。 



ちなみに避難小屋の中はこんな感じ。
四方に窓があるので明るく過ごしやすそうな小屋だ。 



山頂南側にはトイレと休憩所がある。
こちらは壁が無いので宿泊には適さないが一時的な雨宿りくらいはできそう。 



山頂を後にして三ノ丸方面へ進む。
背丈ほどの笹原の中に切り開かれた道だ。 



地図にない分岐点が現れた。
看板の文字も消えている。
うーむ、普通に考えたら直進だが…ちょっと右へ行ってみようか? 



この枝道はすぐに行き止まりとなり、終点には枝ぶりの立派な木が生えていた。
イチイの木かな? 
どうやらこの木を見せたかったらしい。 



登山道に戻り先へ進む。
遠くから見たときは眺めの良さそうな縦走路だと思ったが、笹の背丈が高く左右の眺めはほとんど無い。 



階段の周りだけ洗掘されている。
こうなると誰も階段を歩かず、周りはさらに洗掘されるという悪循環に陥る。 



鞍部付近にはところどころ雪が残っていた。
地面も若干ドログチャで歩き難い。 



場所によっては完全に登山道が隠されている。
西日本きっての豪雪地帯というのは伊達ではないようだ。 



前方の丘のような場所が三ノ丸だろうか。
左右方向の展望が利かないので、一見眺めが良さそうなわりには現在地をつかみにくい。 



なんとなく歩いていたら、なんとなく三ノ丸に到着(笑
例によって笹薮で眺望は利かないが展望台が設置されている。 



ちょっと腐りかけていて怖いが展望台に登ってみた。
笹原の中に我々が通ってきた道がくっきり見えている。
そしてその向こうには氷ノ山も。 



三ノ丸の山頂近くには避難小屋があった。
地図から抹消されているのはなんでだ? 
壊れているというわけではなさそうだけど…。 



避難小屋に続いて宍粟市方面へ下る道との分岐が現れる。
ここは右手へ進む。

 

さらに続けて三ノ丸休憩所となる。
山頂付近にあったのと同じような作りだが、休憩スペースは立入禁止のロープが張られていた。
トイレは使えそう。 



休憩所を過ぎると道は「わかさ氷ノ山スキー場」に向かって緩やかに下っていく。
このあたりは笹の背丈も低く良い眺めが続く。 



尾根筋の先に行くに従って、道の傾斜が急になっていく。 



そろそろゲレンデに出るだろうかという頃には、転がり落ちるような急坂になっていた。 



木立の間からリフトの山頂駅が見えてきた。
ゲレンデまで下れば、多少は傾斜も緩くなるだろうと思ったが… 



ゲレンデもなかなかの斜度だった。
これは…滑ったら楽しそうな斜面だなぁ。
もちろんスキーでだよ?
アイスバーンや重雪だったら地獄だけど(笑 



信じられないだろう? 
これ、ゲレンデ内なんだぜ…。
今日一番の難所は、まさかのスキー場内だった。 



このままゲレンデ内を下っても麓に下りることはできる。
しかしゲレンデ歩きはつまらなそうなので、途中から「自然探勝路」に入ることにした。

 

自然探勝路なんていうから、もっと遊歩道的なものを想像していたのだが、意外とガチの登山道だった。
崩れやすい斜面のトラバースが多く、それなりに緊張を覚える。
足元から小さな石がパラパラと斜面を転がり落ちていった。 



「この先落石注意」と書かれた看板の先に展望台が設置されていた。
ひどい場所に展望台を作ったものだ。
もちろん今は立入禁止になっている。
近くで見ると落石に叩かれてボコボコになっていて、言われなくても立ち入ろうと思わないけれど。 



落石地帯を過ぎると岩ガレの沢筋に下りていく。
この岩の供給源がさっきの落石地帯のようだ。
早めに通過するに限る。 



谷間に美しい鳴き声が響き渡る。
ミソサザイがいるなぁと思っていたら、なんと目の前の岩に止まっているじゃないの! 



今まで何度も声を聞いたことはあったが、姿を捉えたのは初めてだ。
国内最小の野鳥なのに、よく通るいい声をしている。
そしてものすごく一生懸命な感じで囀る姿がカワイイ♪ 



沢を越えると、あとは植林地内の平坦な道となる。
前方が明るくなってきたぞ。 



もう一つのゲレンデに出た。
ここで道型が途切れてしまう。 



道標が斜面の上の方を指し示している。
あまり深く考えずに道標にしたがうとヤマレコアプリのコース逸脱警報が鳴った。
道標が示していたのは仙谷コースに向かう道だったのだ。 



危ない危ない。
登山口に戻るにはゲレンデ内を突っ切るのが正解だ。 



なんとなく踏み跡っぽくなっている場所を辿っていくとゲレンデの下部で仙谷コースと交差した。
仙谷コースとの交差点と言っても、ここでは単なるゲレンデの真ん中なので分かりにくいけれど。

 

ゲレンデが尽きると舗装路に出る。
一応これで下山完了だ。
お疲れさまでした。 



あとは車を回収しにキャンプ場まで歩く。
登り返しになるので、疲労した足には少し厳しい…。 



無事に駐車場に戻ってきた。
思ったより車の数が少ない。
今日は入山者は少なかったようだ。


氷ノ山越コースは距離こそ長いものの、あまりキツイ登りもなく歩きやすいコースだった。
はるか昔からあった伊勢参りの巡礼の道でもあったというし、神話の里山陰遠征の最終日に歩くのにはふさわしかったのだと思う。
この日も天気がよく、氷ノ山越から氷ノ山山頂、三ノ丸まで眺めの良い縦走路を歩くことができた。
登山道脇の笹薮の丈が大きく視界が限られていた部分も多かったが、まずまず満足できた。
氷ノ山は良い山だった。

おしまい