2021年12月14日火曜日、東京オペラシティホールにて森武大和コントラバスリサイタルが行われます。

 

この公演で彼が私に委嘱した新作が初演されることとなります。

 

題名は「Depends on BACH」。コントラバスとピアノのための楽曲です。

 

まさか、長年続いているB→Cのシリーズで私の作品が演奏されるとは!ちょっと夢のようであります。この機会をくれた藝大の後輩森武くんに感謝です(´ー`)

森武くんは彼の学生時代に私のコントラバス5重奏を初演したメンバーのひとりであり、今回の委嘱はその経緯もあったかと思います。

彼は現在はウィーンで活躍していますので、メールのやりとりで打ち合わせながらの作成となりました。

コロナ禍になりたての頃に委嘱を受けたので構想を練る時間はありましたが、結局構想がまとまり着手したのは9月になってしまいました。ですが素材はできていたので、譜面となるのには時間を要しませんでした。

 

「Depends on BACH」は直訳すれば「BACHに頼って」となります。B→Cで初演されることを踏まえてバッハに関連づけた作品をと考えていました。結果としてバッハのスペルを音名に置き換えたモチーフを使い、さらにバッハの作品を引用することとしたので、まさにバッハに頼った曲となりました。

 

特殊奏法として、私の専売特許(?)としていたものを含め、これまでおそらく使われていないであろうものをいくつか使いました。それらはこの曲の概要となるコロナ禍のストーリーの情景として効果を得るように操作しました。

 

曲の流れは、疫病の発生と流行、それに対する人為による抵抗と快癒と希望を描いてみました。曲の終わりにはロ短調ミサの「ドナ•ノビス•パーチェム」がコントラバスのある特殊奏法と混ざって疫病から解放される未来への希望を描きます。

 

全体を包括するモチーフはバッハの名前のスペルBACHをドイツ語音名として読んだシ♭•ラ•ド•シを使っていますが、これに必ずコントラバス開放弦のひとつであるD(レ)を寄り添わせました。これによってコントラバスでの演奏に機能性が生まれると思ったのです。そしてこの5音を使ったモチーフは全体を4度下げた形で反復されることを基本として楽曲の展開を生み出すことにしました。これは引用したバッハの曲とも親和性を持ってきます。なかでも病を療すことをテーマとしたミサに用いられるので引用したカンタータBWV 78 の第1曲ではこのモチーフに類似するものが旋律となっています。