現在、デジタル出版のミュージックベルズより出版を行なっている作品の中に、シマンドルの30エチュードをひとつのパートとするコントラバス三重奏がある。

 

シマンドル30エチュードはコントラバスを習得する際の教材としてよく使われる。実際の楽曲で使われるフレーズを練習できたり、様々な調性の音楽を経験できる点が有用性を高めている。

 

しかしながらこの曲集はピアノ伴奏がついていることが前提としてあるのだが、ピアノ伴奏譜が絶版となってしまっている。(IMSLPには存在している)

私もこの伴奏譜を少し見たことがあるのだが、いまひとつ魅力的には思えなかった。

 

シマンドル30エチュードはコントラバスパートだけを弾いていると、そのフレーズの意味を感じとりにくい場面が多い。これはピアノのの共演ありきのものなので、当然といえば当然のことである。

 

一方で、私の師である永島義男先生とお話した際に「コントラバス三重奏を作ってくれたら良いのに…」ということを伺っていて、ずっと頭の片隅にとどめていた。

 

あるときこの2つのことが結びつき、30エチュードに新しい演奏スタイルでの再創造を図るべく、コントラバス三重奏の形での編曲を試みた。

 

コントラバスを学ぶ者と教える者が共演できる作品ともなるであろうし、コントラバス弾きなら少しは触れたことのある譜面に新たな響きがついて楽曲の世界観が広がるのを聴くのも面白いと思う。シリーズの中から数曲を選んで組曲として演奏会で取り上げても面白いと思う。

 

楽曲のイメージを高めてエチュードでの表現がより工夫できるように、それぞれの曲の個性を際立たせるように工夫した。そのために全ての曲にオリジナルの副題をつけることにした。

 

作成する際にピアノ伴奏譜は一切参考にしていない。コントラバスパートは全く変更せずに、そこから引き出せる音楽世界を膨らませていった。このためシマンドルパートには他の2パートにつけたダイナミックを施していない。シマンドルパート奏者はアンサンブルする際に他のパートをよく聴いて、それに見合った表現を行う必要かある。それはアンサンブルの訓練や表現力の向上につながると思う。

 

シマンドルのパート以外の2つのパートは、シマンドルパートを伴奏したり、あるいはシマンドルパートを伴奏としてメロディーを歌ったり、あるいは3声のポリフォニーを構築したりする。使う音域は基本的にはシマンドルメソッドの第2巻を修了するときに使うことができる範囲としている。

しかし、自然フラジオレットを使っている曲も中にはある。第6曲、第18曲はその好例となる。

シマンドル以外のパートは教授するレヴェルを持つ奏者や、ある程度のテクニックを持つ奏者が演奏することを想定しているので、それなりの難しさはある。その意味でもエチュードトリオを総称とした。

 

既に草稿は全30曲できているので、順次浄書して出版申請を行う予定です。コントラバス3本で多彩な音楽を演奏できる作品集となると思います。