NHK-BSの番組「クラシック倶楽部」《コントラバス・フレンズ》に、演奏者として参加した際依頼されて編曲した。

出演は(敬称略)・山本修・吉田秀・黒木岩寿・小室昌広・渡辺玲雄 の5名である。私を除き、全員都内オーケストラの首席奏者であり、高度なテクニックにも対応できるメンバーであることは、編曲のアイデアに幅を広いげることとなった。

番組の最初に演奏されたJ.シュトラウスの「雷鳴と電光」はコントラバスの現代的演奏可能性である打楽器的な使用法を駆使したものである。

もちろん、楽器を叩くなどの奏法は演奏家からは好まれないものであるので、5番のパートに特殊奏法は集約して、そのパートを編曲者自身が演奏することで、全員の演奏に対するモチベーションを保とうと考えた。

つまり、コントラバス4重奏+打楽器とみてもおかしくないスコアになっている。実際自分で演奏してみると、弓を「持つor持たない」の切り替えは忙しかった(笑)

ほかのパートもポルカ・シュネルの性格上、非常に難しいパッセージが多い。しかし、名手ぞろいの初合わせでは、すんなりと普通のテンポで通ってしまった。

番組でも、冒頭にインパクトと興味を高める楽曲となったとおもう。



番組の最後に演奏された「星空のメドレー」は番組ディレクターの外岡氏(彼も芸大コントラバス科の卒業生である)から「全員にスポットがあたる楽曲を」との要請から生まれた曲である。

当時(2011年秋)は大震災の傷が生々しい時期であったので、少しでも復興への希望を込めた曲を作りたいという思いがあった。

「5」という数字は星型☆を直線で描くときの各線分の端となる点の数となる。武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」でもペンタゴナルトーンによって「星」と「5」は関連づけられている。

そこで、坂本九さんが歌った「見上げてごらん夜の星を」を復興への希望を込めたメッセージとするアイデアが生まれ、それに「星に願いを」を合わせてメドレーとすることにした。

私の映像イメージとしては、星型☆の各辺に奏者が立ち、星型の中央に回転するカメラを置いて、旋律を弾く奏者を追い、加えて全体を俯瞰するカメラも想定して編曲した。

よって、重要なパートは1番奏者から番号順に受け渡され、5番までいくと再び1番に戻るように割り振られている。

映像は私の想定とは違ってしまったが、全員が主要パートを受け渡しながら楽曲が進行する様子は映像からも伺うことができるだろう。

これら2曲は放送後に京都芸術大学の学生から再演の希望があり、彼らの出身地仙台で演奏された。作者のつたない思いが震災の地に伝わることとなった。