前回の未完成交響曲に関する、ベーレンライター版に基づく改変による演奏について述べておく。本番は明日だが…

第1楽章344小節よりベーレンライター版にあるアクセントはブライトコプフ版パート譜にはないようだ。効果的であるので採用する。


第2楽章ではアクセントは柔らかいほうが適切であるので、殊更にパート譜での変更は確認せず、体動によって示すこととする。


第2楽章で興味深いのは、91・92小節232・232小節の小節幅の中央にpそしてppが示されているところである。

練習では最初、第2拍の裏から記号の位置として演奏してみた。しかし、あまり音楽的な意義を感じられなかった。

そこで、これは「2小節後のpppまで滑らかに減衰するための小節の中央あたりへの表記」とらえることとして、パート譜では括弧で囲ってもらい、漸次的な減衰を指示した。


ではなぜこの直前にdim.の表記があるにも関わらず、ここでは使わないのか。

それはdim.が全体像の減衰を表すからだと考える。木管楽器に次々と受け渡されるパッセージには段階を明快に示しているが、弦楽器パートはそれにシンクロしないまでも、木管のソロを感じながら減らして欲しいという意図だったのではないか。音色が様々に変わる場面で単純なdim.を書くことをためらったのではないだろうか。

シューベルトのdim.表記への躊躇は第2楽章の最終場面303小節で顕著になる。ベーレンライター版ではスコア最上段に大きめにdim.が書かれているのみである。

ここでも休譜が多く、小さな動機の掛け合いであり、全体像としてのdim.をパートの桁に書くのをためらったのではないか。



289・299小節において、ベーレンライター版で弦楽器にあるアクセントは有効である。本来この前に来ているフレーズの後には8分音符の順次進行フレーズが来ていた。この場面で初めて16分音符のフレーズが来る。旋律にもアクセントがあることも理由であろう。

よって301小節以降の16分音符フレーズはこれまでの場面どうりに出てくるので、アクセントはないのが正しいだろう。