2月13日(水曜日)に指揮する未完成交響曲について、今回の演奏において試みる点を書いてみる。

冒頭のコントラバスの旋律は5弦がないと演奏できない。しかし今回の尚美オーケストラではメンバーはE線をDに下げて演奏することは、ベートーヴェン第九の演奏等を通して慣れており、今回もそのチューニングで演奏するので、5小節目Dのみ記譜どおり下げて、次のCisはオクターヴ上げ、次のFisは記譜の音を弾く。
試してみるとDが深い音で鳴るので、次のCisの音色は、チェロの音色と時間の短さによってあまり気にならない。ブラームスが交響曲第2番で行ったDisを省いた処方に近い。

練習記号Aからの旋律に、ブライトコプフではさまざまな長さのスラーがつけられている。ベーレンライターでは1小節にひとつのスラーである。後半の同様の箇所では276小節でヴィオラが入るところから2小節でひとつのスラーとしてある。

ベーレンライターでは練習記号Bと練習記号Gのそれぞれ6小節目からトロンボーンとヴィオラ・チェロ・コントラバスのみに楔点がついていて木管にはない。この差異はシューベルトが意図した交換と考えたい。楔点がついた群は鋭い発声を得意とする。この際チェロ・コントラバスの6小節目1拍目にある楔点はフレーズ上の疑問を生じるのでなしとしたい。

ベーレンライターでは77小節以降4小節と295小節以降4小節にのみ、弦楽器の旋律全ての音に楔点がついている。以降のffの部分にはついていない。ffの部分は従来通りの表現とし、楔点の部分をより軽快に演奏することで、コントラストをつけることにした。

109小節と327小節では、ホルンとファゴットの2番はHを保つように記されている。ブライトコプフでは属和音内の音に書き替えられている。この保続音による不協和音はいくつかの録音でも聴くことができる。魅力的な響きである。

シューベルトはアクセント記号を横長に書いたため、デクレッシェンド記号と混同されてきた。ベーレンライターではほとんどをアクセント表記としているが、演奏上はデクレッシェンドがよい場面もあるので、ブライトコプフ版パート複数で必要なアクセントを加えて、デクレッシェンド記号も生かす方向で演奏する。特にクレッシェンドの後に現れるものは、デクレッシェンドで問題ないだろう。ただし、ところどころで文字書きクレッシェンドと併用されている箇所があり、それを理由としてアクセントと考えることもできるが、文字書きクレッシェンドは全体に対しての表現で記号のデクレッシェンドは個々のパートの表現に関係すると考えれば両者は矛盾するものでもないだろう。

そもそもシューベルト当人のイメージ内ではアクセントとデクレッシェンドは曖昧な境界で認識されていたのではないだろうか?あるいは第三者からの弁別・解釈があると思っていなかったのかも知れない。そもそも演奏未定であり、パート譜の作成も当時されていないので、改訂作業もないのだから。

第1楽章の終結にある記号はアクセントと考えたい。ハ長調交響曲においても同様の考えが成り立つ。シューベルトは相当勢いよくアクセントを書いたのだろう。未完成交響曲における演奏としては、練習記号B及びGにおける表現と呼応する形が全体の統一感を生むだろう。もちろん呼応させる側もアクセント記号と考える。木管の下降する音はそのまま既出の主題を反映している。デクレッシェンドせずしっかり形を現すべきだろう。