つながりの書22 3-1『家族の死』 | 地球が喜ぶ仲間を作る! at 千葉県で自然な生き方の追求と普及

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『1000年先へつなぐ地球家族』をテーマとし、地球人としての理想的な生き方を追求していく活動期

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第3章 命の使い方
2-8『内観』の続き> (目次はこちら
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数日後。

虫の声だけが聞こえる、
静かすぎる夜だった。

「おじいちゃんが亡くなったよ」

母から連絡があった。

実家は兼業農家で、
おじいちゃんは米をはじめとして、

にんにくや長芋、
その他いろんな野菜を育て、

僕が子供の頃はよく手伝わされた。

長身で、たばこを吸って
よく咳き込んでいたが、

人と接する時は
大声で笑う元気な印象があった。

身内での集まりでは
楽しそうにお酒も飲んでいた。

2年前に帰省した時、
体が小さく萎んでいた。

ただちょこんと座っていた姿が
衝撃的だった。

入退院を繰り返しているという話も
聞いていたが、

突然の死の知らせに驚いた。

そしてあまり深いコミュニケーションを
とっていない事を後悔した。

家族を失うのは2回目だ。

僕が中学の頃には、
東京で別居していた父親が死んだ。

父親には夏休みに
何度か会いに行っていたのだが、

僕は父親に対しても人見知りをしていて、
親子のように親しくは接していなかった。

それでも

海や遊園地に連れて行ってくれたり、
短い間しか一緒にいなかったのに
ゲーム機を買ってくれたりした。

ひどい話だが、
死の知らせを聞いた時は
あまり悲しくなかった。

だって元々
一緒に暮らしていなかった人だから。

だけど、思い出も少なく、
「もう会えないのか」と思うと
後から悔しさと悲しみが込み上げてきた。

実の父親なのに
共有した過去も少なく、

共にお酒を飲むという未来もない。

前回実家に帰った時に見つけた
父からの手紙にはこんな事が書いてあった。

『でんわもしないで、ごめんね。

 パパはお仕事が忙しいのと、
 2人に申し訳なくて、

 なかなかおでんわが
 できないでいるのです。

 でも、今日は、
 どうしても、 お手紙を書きたくなって、
 書いています。

 ちゃんと学校に行っていますか?

 ママと、おじいちゃん、おばあちゃんの言う事、
 良くきいて下さいね。

 パパなにもできなくて、
 でもできる時に少しでも、
 2人になんとかしてあげたいと思っています。

 もちろん、ママにも。

 でも、もう少し時間を下さい。

 今、いっしょうけんめい、
 また、夏に一緒に海に行きたくて、
 がんばっています。

 今年のお正月に
 年賀状が来ると思っていましたが、

 パパが書いた住所には、
 きてなかったです。

 ですから、こんど、お手紙をくれるときは
 仕事場の方に下さい。

 パパの写真もあとで送りますが、

 2人の写真があったら
 手紙と一緒に送って下さい。

 少しおこづいを一緒にいれますので、
 むだづかいしないように使って下さいね。

 では、又、お手紙を出します。

 仕事場のでんわ番号なので、
 るすばんでんわになっている事が多いので

 でんわするときは、
 ちゃんと名前をいってください。

 ではまた身体に気をつけて元気でいてね。

 追伸
 パパの写真を三枚見て下さい。
 2人の写真を一枚ずつでもいいですからください』


初めて読んだような
記憶にない内容だった。

思えば僕は
お小遣いばかりを楽しみにしていて、

父の気持ちを汲み取らずに、

電話も、年賀状も、
手紙も写真も
何も応えていなかった。

もう遅いけど、
なんて自分勝手だったんだろうと思う。

その後も父からの手紙は
数ヶ月ごとに届いていた。

『私の方は、仕事がいま少しうまくいきません』

『いつも思い出して
 すまないと思っています。

 いつかきっと、なんらかの形で
 2人には父親らしい事をしてあげたいと思いますので、

 どうか元気に過ごして下さい』


 そのうち、元気じゃなくなったのは父の方で……

『状態が今少し良くないとのことで、
 もう少し入院をするそうです』


そして平成7年11月18日。

肝硬変症(C型)、食道静脈瘤、
十二指腸潰瘍を患いながら、
再生不良性貧血で亡くなった。

享受49歳。

2度目の海には行けなかったが、
父親らしいことは気持ちだけで充分だった。

手紙を読んだ時、
僕は斜め上の何もない空間に目を向けた。

そこに父がいるような気がして。

父親と言えば、以前、

宝石を扱っているカリスマスピリチュアル女社長に
こんな事を言われた事がある。

「許しているつもりになっている
 お父さんとの関係にシコリがあって、

 それが人間関係を阻んでいる」


確かに、
本来距離が近いはずの人と親しくなければ、

そこには壁があり、
他人と親しくなれるわけが
ないのかもしれない。

そう思った。

その時は有名書籍「鏡の法則」の最後にある
“許すワーク”をやるように勧められてやってみた。

父親との距離は、
この世にいなくなってから
少しずつ近づいてきた感覚だった。

身近な人の死という衝撃的な事実は、
まだこの世を生きていく人の魂を、

より強く、より重く、
より深くしていくものだ。

僕は自分の魂を感じながら、
今後の生き方を真剣に考え始めた。

束縛されないで自由に生きるという
父がやろうとしていた事と、

幸せにするためには最善を尽くすという
母の想いが、

自分の役割のように感じた。

⇒『ツナガッテイナイ』へ つづく

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