好きな子が出来た。
好きな子が出来た。
僕は右手に煙草を持ち、左手でパチンコ台を叩いた。バンッと、台は跳ねて揺れて、振動検知異常と画面に印字した。一斉に周囲の客は音に驚いてこちらを見た。もういい加減にうんざりした。このまま台に向かって頭突きしてその結果、死んでしまいたい、もしくは入り口に油を撒いて放火して眺めたい、そんな気持ちで帰り際、京楽の確定音が耳に入り、そいつを方向を睨み付け、冬のソナタ、「最初から今まで」が流れ始めるが何食わぬ顔で外に出る。煙草がまずい、梅雨前線が活発のようだ、外はずっしりと湿った空気で、ひどい雨だ。煙草が雨に濡れて憂鬱になる、うつむき加減に煙草が濡れないように吸う。
彼女は今日はいなかった。僕の好きな彼女はこんな陰気な湿った日に仕事したりしない。きっとこんな日には図書館にでも行って、流行りの推理小説を読みながら時おり外を眺めて、明日の天気のことを考えているのだろう。しんとした図書館に見事に溶け込んでいることだろう。僕は車のキーをくるくると手元で回して煙草を捨てる。踏みつけるまでもなく煙草は雨に打たれる。
僕はつくづくつまらない人生を送っているようだ。何故なら僕以外の人間は一様に幸せそうに見えたし、幸せだと言わんばかりの顔をしている。ホームレスの老人でさえ、さも幸せそうな顔をしている。目が悪いわけじゃない。また、客観的に見ても僕の人生は実にくだらない、ありふれた人生なのだろう。僕の頭の中では素晴らしいメロディーも素敵な映画も、綺麗な女性も何もかもがセピア色や灰色に寂しげに感じられる。
彼女の後ろ姿が僕は好きだ。彼女は綺麗で、セピア色で灰色で寂しげだった。僕が話しかけると、じっとこちらを見つめて首をかしげて、下を向く。パチンコの効果音がうるさすぎて聞こえていないのだと考えて僕は「君はどんな音楽が好きなの。」と繰り返し同じ質問をするが、彼女は黙ったまま踵を返す。言葉が通じなかった。韓国人だから。きっとそうだ。そうなるに違いない。
彼女が日本にやってきたのは5年前、ちょうど内戦が始まる前だ。5年前の内戦で日本の人口は3分の1に…というのは大袈裟か。彼女が日本にやってきたのは3ヶ月前、日本の文化に憧れて…いや、そんなはずはない。彼女は生まれたときから韓国人で僕は日本人だ。
車のキーを回すのを止めて、店に引き返した。彼女は客からの呼び出しがあったのだろう、玉で一杯の箱を空箱に交換していた。やっぱり、思った通り彼女は居た。僕は早歩きして斜め後ろから彼女に近づいて「君はどんな音楽が好きなの」と質問した。彼女は作業を止めて僕の方を見た。「えっ」と言って、明日の天気のことを考えた。「やっぱりそうだ、君は韓国人だ」と呟くと、鞄からキムチを取り出して彼女に「好きだ」ど、キムチを投げつけて抱き締めた。
僕は右手に煙草を持ち、左手でパチンコ台を叩いた。バンッと、台は跳ねて揺れて、振動検知異常と画面に印字した。一斉に周囲の客は音に驚いてこちらを見た。もういい加減にうんざりした。このまま台に向かって頭突きしてその結果、死んでしまいたい、もしくは入り口に油を撒いて放火して眺めたい、そんな気持ちで帰り際、京楽の確定音が耳に入り、そいつを方向を睨み付け、冬のソナタ、「最初から今まで」が流れ始めるが何食わぬ顔で外に出る。煙草がまずい、梅雨前線が活発のようだ、外はずっしりと湿った空気で、ひどい雨だ。煙草が雨に濡れて憂鬱になる、うつむき加減に煙草が濡れないように吸う。
彼女は今日はいなかった。僕の好きな彼女はこんな陰気な湿った日に仕事したりしない。きっとこんな日には図書館にでも行って、流行りの推理小説を読みながら時おり外を眺めて、明日の天気のことを考えているのだろう。しんとした図書館に見事に溶け込んでいることだろう。僕は車のキーをくるくると手元で回して煙草を捨てる。踏みつけるまでもなく煙草は雨に打たれる。
僕はつくづくつまらない人生を送っているようだ。何故なら僕以外の人間は一様に幸せそうに見えたし、幸せだと言わんばかりの顔をしている。ホームレスの老人でさえ、さも幸せそうな顔をしている。目が悪いわけじゃない。また、客観的に見ても僕の人生は実にくだらない、ありふれた人生なのだろう。僕の頭の中では素晴らしいメロディーも素敵な映画も、綺麗な女性も何もかもがセピア色や灰色に寂しげに感じられる。
彼女の後ろ姿が僕は好きだ。彼女は綺麗で、セピア色で灰色で寂しげだった。僕が話しかけると、じっとこちらを見つめて首をかしげて、下を向く。パチンコの効果音がうるさすぎて聞こえていないのだと考えて僕は「君はどんな音楽が好きなの。」と繰り返し同じ質問をするが、彼女は黙ったまま踵を返す。言葉が通じなかった。韓国人だから。きっとそうだ。そうなるに違いない。
彼女が日本にやってきたのは5年前、ちょうど内戦が始まる前だ。5年前の内戦で日本の人口は3分の1に…というのは大袈裟か。彼女が日本にやってきたのは3ヶ月前、日本の文化に憧れて…いや、そんなはずはない。彼女は生まれたときから韓国人で僕は日本人だ。
車のキーを回すのを止めて、店に引き返した。彼女は客からの呼び出しがあったのだろう、玉で一杯の箱を空箱に交換していた。やっぱり、思った通り彼女は居た。僕は早歩きして斜め後ろから彼女に近づいて「君はどんな音楽が好きなの」と質問した。彼女は作業を止めて僕の方を見た。「えっ」と言って、明日の天気のことを考えた。「やっぱりそうだ、君は韓国人だ」と呟くと、鞄からキムチを取り出して彼女に「好きだ」ど、キムチを投げつけて抱き締めた。