「固定的性別役割分担意識」は良くないと言う・・・まあ、そうかもしれない。けれど、人はそれぞれ。「女性は家庭」という選択もアリだし、それを望むのがダメなわけでもないだろうと・・・

 

 

こちら、数日前の中日新聞ベタ記事なんですが、ちょっと驚いた、というか、何やら新鮮でした。

 

(中日新聞3/11-5面)

 

「時代遅れで女性蔑視だ」という批判が、どういった方面からどの程度あったのかは分かりませんが・・・

 

 

●「女性は家庭」を維持

 

ベタ記事とはいえ、自社の「描き出したい物語」に沿わない話を伝えたこと自体は素晴らしい。

 

しかしながら「家族に障害者がいる有権者を中心に、介護に国の積極関与の姿勢がなく障害者差別だとの批判が上がっており否決につながったとみられる」とか言われると、いやいや、その解説は無理があるでしょうと思います。

 

家族に障害者がいる有権者がどれくらいの割合なのか、介護に国の積極関与の姿勢が無いと何故障害者差別になるのか、素朴な疑問が湧きます。

 

 

調べてみると、ロイター通信は、事実関係メインで伝えていました。

 

[ダブリン 9日 ロイター] - アイルランドで8日、家族の定義や家庭における女性の義務に関する憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、反対多数で否決された。

 

バラッカー首相は「女性に関する非常に古風で性差別的な表現」を修正すべきだとして改正を目指していた。

 

改正案は、家族の定義を婚姻に基づく関係から、婚姻かその他の永続的な関係に拡大する内容だったが、67.7%対32.3%で否決された。

 

また、家庭における女性の義務という文言を削除し、家族構成員が互いに助け合うことを認識する内容に置き換える案も73.9%対26.1%で否決された。

 

世話を家族任せにする内容で国が責任を放棄しているなどの批判が上がっていた。

 

バラッカー首相は9日の会見で「過半数の国民に賛成票を投じるよう説得するのがわれわれの責任だったが、明らかに失敗した」と述べた。

 

 

 

一方、CNNは、相当ご不満があるようで。

 

低投票率や宗教界や保守派の動きなどに言及。とりあえず、ケチを付けずにいられないといった感じでしょうか。

 

(CNN) アイルランド政府は9日、憲法の「性差別的」な表現2カ所を変更するための国民投票について、敗北を認めた。

 

アイルランドでは、国際女性デーの今月8日にあわせて国民投票が行われた。

 

国民投票の対象となった表現は、ひとつが、家族という単位は結婚によって「築かれる」というもの。もう一つは、女性は「家庭内での生活」を通じてアイルランド国家を支えるというもの。

 

アイルランドのバラッカー首相は9日午後、国民投票で、改正案が通過しなかったのは明らかだと述べた。

 

ロイター通信によれば、バラッカー氏は今回の国民投票について「女性に関する非常に古風で性差別的な文言」を変更する機会だと訴えていた。

 

地元メディアによれば、投票率は低調で、登録有権者の30%にとどかない地域もあった。

 

改正案が通過していれば、憲法は家族を「結婚またはその他の永続的な関係に基づく」と表現することになっていた。

 

宗教界や保守派は反対票を投じるよう促し、「永続的な関係」という考え方に異議を唱えて、憲法本来の文言を支持するよう訴えた。

 

専門家によれば、1937年に公布されたアイルランドの憲法はカトリック教会の社会教説の影響を強く受けているという。

 

 

 

いずれにせよ、報道だけではいささかボンヤリしているので、具体的に条文を読んでみましょう。

 

 

●これぞ「憲法(国体)」

 

今回、アイルランドで国民投票の対象となったのは、こちら第41条のようですが、我が日本国憲法との比較で、とても羨ましく思ってしまいます。

 

 

第41条

 

1.1

国は、家族が、社会の自然な第一次的かつ基本的な単位集団であること、及び不可譲かつ時の経過により変わることのない権利を有し、全ての実定法に先立ち、かつ、優位する道徳的制度であることを承認する。

 

1.2

したがって、国は、社会秩序の必要な基礎並びに国民及び国家の福祉に欠くことができないものとして、家族の構成及び権能を保護することを保障する。

 

「家族」というものが「全ての実定法に先立ち、かつ、優位する道徳的制度」だと言い切ってます。その上で、国は「家族の構成及び権能を保護することを保障する」としてます。

 

素晴らしい。降参です。

 

が、此度の改正案は、これを「結婚またはその他の永続的な関係に基づく」ものに変えようと目論んだ、みたいです。

 

 

2.1

特に、国は、女性が家庭内での生活により共通善の達成に欠くことのできない支持を国に与えていることを承認する。

 

2.2

したがって、国は、母親が経済的必要からやむなく労働に従事することにより、家庭におけるその義務を怠ることがないよう保障することに努めなければなら ない。

 

「女性が家庭内での生活により共通善の達成に欠くことのできない支持を国に与えている」から、国は「母親が経済的必要からやむなく労働に従事することにより、家庭におけるその義務を怠ることがないよう保障する」努力義務があると。

 

ここにある「女性が家庭内での生活により」の部分を改正したかった、ということのようです。

 

それにしても「経済的必要からやむなく労働に従事することにより、家庭におけるその義務を怠ることがないよう」に、ですよ。

 

我が国においては、いわゆる保守派でも、ここまでは言えません。

 

何か、色々凄いです。

 

 

3.1

国は、家族の基礎たる婚姻の制度を特別の配慮により保護し、かつ、侵害から保護することを約束する。

 

「婚姻の制度を特別の配慮により保護し、かつ、侵害から保護することを約束する」ときました。

 

なるほど、アイルランドにおいては「婚姻の制度」はゆるがせにしないということですね。

 

 

この条文(和訳)は、「国立国会図書館調査及び立法考査局」が、2012年3月に作成した「基本情報シリーズ ⑧ 各国憲法集 ⑵ アイルランド憲法」からの引用です。

 

ちなみに、この資料、アイルランドの歴史や、これまで何度かあった憲法改正にも触れていて、興味深いです。

 

 

●家族と教育

 

せっかくなんで、資料の一部「Ⅱ憲法の内容」のうち、2人権/(2)人権各論/にある「(ⅱ)家族および教育」の「(a)法律婚にもとづく家族の保護」と「(b)教育・家族・宗教」を引いておきます。

 

 

 

 

あと、繰り返しになりますが、条文そのものも。せっかくなんで「教育」第42条も引きました。

 

 

 

 

国立国会図書館調査及び立法考査局

基本情報シリーズ ⑧ 各国憲法集 ⑵ アイルランド憲法

https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3487278_po_201101b.pdf?contentNo=1

 

 

 

 

さて、こちらは、先月のニュースですが・・・

 

 

●“第3新卒”正規雇用を

 

「出生数の減少について、人口問題に詳しい日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員に聞きました」として、こんな「専門家の意見」が紛れ込んでいました。

 

 

「働く女性は増えたが、男女の賃金格差があるままだと女性は働きながら家庭内の家事や育児、介護というものを引き受けざるをえず、結果的に女性の出産や結婚への意欲が低下する。賃金を上げ、社内でのジェンダーギャップをなくしていくことが必要で、男女がともに家事育児をして働くことができ、お互いに支えていく社会をつくっていくべきだ」

 

 

 

「男女の賃金格差があるままだと女性は働きながら家庭内の家事や育児、介護というものを引き受けざるをえず」というのは、つまり、安い給料しか貰えないなら、外で働くより家庭内でという圧力になる、の意味なんでしょうけれども。

 

でも、そこから「結果的に女性の出産や結婚への意欲が低下する」へと繋げられると、そうなのか? という疑問が湧いてきます。

 

 

「働きながら出産・育児」が、あたかも良いことのように、そして、皆がそれを望んでいることのように語られているけれども、本当にそうでしょうか。

 

 

子供を産み育てることと仕事の両立は、言うほど簡単ではありません。

 

というか、一部の(政府の審議会に呼ばれるような)スーパーでスペシャルな女性は、それが可能だったのかもしれませんが、全ての女性(特に夫以外に頼れる人がいない核家族の場合)に同じことができるかと言うと、それは難しいでしょう。

 

氾濫するネガティブ情報に毒された若者達の頭ン中が、わずかばかり出産・育児休暇が認められたくらいで、少しばかり補助や給付金が増額されたくらいで、「よし、それなら生もう」という方向に切り替わるとは思えません。

 

むしろ、出産・子育て時は、(経済的に可能であれば)それに集中して、子離れが進むにつれて、徐々に「社会参加(復帰)」という生き方ができるなら、それに越したことはない、と考えているのではないでしょうか。

 

産休・育休を取っても、ちゃんと会社に戻れるよう、それなりのキャリアを築いてから、ではなく、むしろ、もっと若いうちに結婚、2人3人と出産し、40〜45歳位(30歳で生んだ子が15歳になる)を目処に正規雇用してもらう、みたいな、そんな人生も選べるようになればと思います。

 

言わば“第3新卒”としての就職ですね。

 

実際、子供のため本格的にお金がかかるのは高校・大学からですし。

 

と言っても、そこら辺は、親が何に重きを置くかという問題になりますが・・・

 

 

「働きながら出産・育児」を目指すのは、それはそれで良いけれども、同時に「出産・育児を終えてからしっかり働く」だって、あって良いのです。

 

その方が自然だし、理にかなってもいます。

 

後者の道筋がある程度見えていれば、若い今、たとえ金銭的に余裕が無くても、「えいっ」で結婚し、「やあっ」で子供を生む勇気(勢い?)も出る、というものではないでしょうか。

 

何しろ、若い方が異性に惹かれやすく、卵子も精子も健康、体力もあって子供を生むのに適しているのです。

 

本来、人間は、そういうふうに出来ているのです。

 

 

精神的にも生物学的にも、適齢期というものが、厳然と存在します。

 

 

政治的にそれを言うのは、まあ、無理なのかもしれないけれども・・・

 

 

出生率の低下・少子化を、自治体が消滅するとか、国が衰退するとかいった、社会的問題、国家的課題として語るから、人心が離れるのではないですか?

 

子育て世帯とそうでない人々とが、支援される側と支援する側として反目し合うなんて、不幸の極みです。

 

ワタクシだって、あんまりグダグダしてるのを見せられると、これで国が弱っていくなら、それはそれで、もう、仕方ないよね、くらいに思う時があります。

 

 

●「若者、特に女性の最重視」

 

こんな「提言書」があるそうです(太字は引用者)。

 

 民間の経済人や研究者などの有識者らで構成する「人口戦略会議」(三村明夫議長)はこのほど、2100年を視野に入れた長期の人口戦略などを取りまとめた提言書「人口ビジョン2100-安定的で、成長力のある『8000万人国家』へ-」を岸田文雄首相に提出した。提言書では、人口減少と歯止めのかからない少子化の流れに危機感を示すとともに、3つの基本的課題として「国民の意識の共有」「若者、特に女性の最重視」「世代間の継承・連帯と『共同養育社会』づくり」の3点を提示。2100年に8000万人で人口が定常化することを目標に、人口減少の流れを変える「定常化戦略(人口減少のスピードを緩和させ、最終的に人口を安定させることを目標とする戦略)」と「強靭化戦略(質的な強靭化を図り、現在より小さい人口規模であっても、多様性に富んだ成長力のある社会を構築する戦略)」の実行による「未来選択社会(未来として選択し得る望ましい社会)」の実現を提案している。

 

 目指すべき社会の将来像である「未来選択社会」の具体的な姿については、「一人ひとりが豊かで、幸福度が最高水準の社会」「個人と社会の選択が両立する社会」「多様なライフスタイルの選択が可能な社会」「世代間の『継承』と『連帯』を基礎とする社会」「国際社会において存在感と魅力のある国際国家」の5つを示した。定常化戦略における論点については、「若年世代の『所得向上』『雇用改善』が最重要」「『共働き・共育て』の実現」「多様な『ライフサイクル』が選択できる社会づくり」「若い男女の健康管理を促す『プレコンセプションケア』」「子育て支援の『総合的な制度』の構築と財源確保」「住まい、通勤、教育費など(特に「東京圏」の問題)」の7点の重要性を強調。強靭化戦略では、「人への投資の強化」「一人ひとりが活躍する場の拡大」「人口減少地域で医療・介護、交通・物流、エネルギー、教育などのサービスの質的強靭化と持続性向上」「日本での活躍が世界での活躍に直結するような『イノベーション環境』の整備」などを論点として整理している。

 

 また、「永住外国人」「定住外国人」の政策についても言及。「人口減少を補充するための『(補充)移民政策』はとるべきではない」とした上で、労働目的を中心とする外国人に対する総合戦略の策定と、その政策を遂行する体制の整備、政策の「司令塔」の設置も求めている。

 

 

 

人口戦略会議:『人口ビジョン2100』 ー 安定的で、成長力のある「8000 万人国家」へ ー2024年1月

https://www.hit-north.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/02/01_teigen.pdf

 

 

政府が、こういった民間からの提言をどこまで真面目に検討するものなのか分かりませんが・・・

 

 

結婚する人がいれば目出度いねと言い、子供が生まれると知れば喜ばしいねと思う。

 

それと同じ心で、企業の人も、地域の人も、そして国も、皆が、それぞれ新しい家族に、子供に、子育て世代に優しくなってくれれば良い。

 

 

家族とは「全ての実定法に先立ち、かつ、優位する道徳的制度」なのだから。

 

 

 

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こちら、冒頭のよりも前にあったベタ記事。

 

(中日新聞3/6-5面)

 

 

多くのフランス人は「我こそは普遍」と思うもののようですが・・・

 

いやいや、そんな「今、生きている者だけが全てを決められる」的傲慢には、ちょっと付いていけません。

 

てか、赤ん坊ちゃんだって生きているのに。

 

てか、中絶するくらいなら、そもそも(避妊無しで)アレしなきゃ良いのに。

 

(文字通りの強姦によるものは除く)