より安心・安全な世の中を希求すること自体は、まあ、良いとして。しかしながら、過ぎたるは猶及ばざるが如し。多くの人が、程よく諦観して生きる、という知恵を失っているのではなかろうか。
正直、またか、です。
●鳥インフル発生、全処分
豊橋市の採卵養鶏場で4日に判明した高病原性鳥インフルエンザの疑い事例で、県は5日、死骸から高病原性鳥インフルエンザを疑うウイルスの遺伝子が検出されたと発表した。農場では31万羽のニワトリが飼育されているが、すべて殺処分し焼却する。この日午前9時から開かれた大村秀章知事を議長とする緊急対策会議で決めた。
中日新聞でも一面トップでした。
(中日新聞12/6)
豊橋の養鶏場 鳥インフル
31万羽処分 200万羽搬出制限
クリスマス需要前に…
生産者落胆、風評懸念も
そりゃ「落胆」もしますわね。
市内では2009年、11年にも、鳥インフルエンザのため飼育されていた鳥が大量に処分された。
「産地に『豊橋と書いてあるだけで返品され、悔しい思いをした」。半径3㌔〜10㌔の「搬出制限区域」にある養鶏場のある男性責任者は、11年の記憶がよみがえった。
そうですね。ワタクシの記憶も蘇りました。
●「全処分」の必要、有りや無しや?
ついでに、もっと遠い記憶も蘇ったりして。
何を隠そう、ワタクシの実家は、かつて養鶏業を営んでおりました。
そして当時、昭和時代のこととて、子供といえども当たり前のように「手伝い」などしていたもんです(それと引き換えの「小遣い」でした)。
で、たまに「今年は鳥がたくさん死ぬなあ」なんてこともあったりして。
ただ、そんな時でも、大人は特に慌てるでもなく「ああ、また死んだか」くらいで、「仕方ない。そのうち収まるだろ」と呑気なもんだったような(子供にはそう見えた、だけかもしれませんが)。
それはたぶん、今で言うところの、高病原性を含めた鳥インフルエンザの流行だったんじゃないかと思うんでございます。
でも、そんなわけだから、社会的に広く注目されることはなく。もちろん、風評被害なんて起きるはずもなく。
しかしながら。
いつの頃からか、科学的に(!)ソレが定義され、 "見える化" され、マスメディアがいちいち騒ぐようになり、それを抑えるために、見えちゃったモノ関連は全処分、という流れになったのではないかと。
つまり、科学的知識によって経験的知恵が駆逐されてしまったというね。
そういう意味における人間社会の進歩は、そこに生きる個人として、幸せなことなのか、不幸せなことなのか。
あんまり関係ないですけど、台風で鶏舎一棟丸ごと潰れて大惨事、なんてこともありました。
翌日の社会面には、こんな記事もありました。
(中日新聞12/7-24面)
動物園や農家 厳戒
豊橋・鳥インフル 展示中止、消毒徹底
だそうで。
〜〜〜6日から一部を除いて、展示を中止した。病原体を持った野鳥やそのふんが入らないように、休園日の5日から飼育ケージをシートなどで覆ったほか、園内の池で野鳥が集まりやすいコイのえさやりも取りやめた。〜〜〜
と言うんだけれども、う〜ん・・・
「感染」は見える化されても、感染ルートの方は未だ見えてないわけで。こういった対策に、はたして意味が有るのか無いのか。
いや、ソレ以前に、そうまで騒いで、そうまでして「絶対に」防がなければならないのか、それで防げるものなのかと。
●死ぬのは、あくまでも(ほぼ)鳥
ということで、改めて厚生労働省、鳥インフルエンザに関するQ&Aを見てみましょうか(赤字は引用者)。
(2) 鳥インフルエンザとは何ですか。
鳥類に対して感染性を示すA型インフルエンザウイルスによる感染症が、鳥インフルエンザです。
鳥インフルエンザの原因となるA型インフルエンザウイルスの自然宿主は野生の水きん(カモ)類です。この野生のカモ由来のウイルスが家きんの間で感染を繰り返すうちに、鶏に対して高い病原性を示すウイルスに変異した場合に高病原性という表現をします。
(3) 高病原性鳥インフルエンザとは何ですか。
鳥インフルエンザのなかでも、鶏に感染させた場合に、高率に死亡させてしまうようなものを高病原性鳥インフルエンザといいます。その原因となるウイルスは高病原性鳥インフルエンザウイルスといいます。高病原性鳥インフルエンザウイルスとしては、A/H5亜型のものとA/H7亜型のものが知られています。
(4) 鳥インフルエンザウイルス(高病原性鳥インフルエンザウイルスを含む)はヒトにも感染するのですか。
鳥インフルエンザウイルスは、通常、ヒトに感染することはありません。しかしながら、感染したトリに触れる等濃厚接触をした場合など、きわめて稀に鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染することがあります。
(5) 鳥インフルエンザウイルスはどのような場合にヒトに感染するのですか。
報告されている患者のほとんどが、家きんやその排泄物、死体、臓器などに濃厚な接触があったとされています。
また、鳥インフルエンザウイルスがヒトからヒトに感染するのはきわめて稀であり、感染の事例は、患者の介護等のため長時間にわたって患者と濃厚な接触のあった家族等の範囲に限られています。
(6) 鶏肉や鶏卵を食べて、鳥インフルエンザウイルス(高病原性鳥インフルエンザウイルスを含む)に感染することはありますか。
鳥インフルエンザウイルスについては、これまで、鶏肉や鶏卵を食べることによってヒトに感染したという事例の報告はありません。
だったら放っとけば良いじゃん!
と思ってしまうのはワタクシだけ?
弱い個体が淘汰されるうちに、ウイルス自体は変異弱毒化して流行は勝手に終息する(というか、生き延びた個体にとっては悪さをしないウイルスになる)んじゃないんですかね。
●流行自体ではなく、それへの対策こそが禍
こういう遣り過ぎ感を垣間見るにつけ、何かね、此処のところの "新型コロナ[対策]禍" に通じるものがあるなと。
というか、鳥インフル、豚インフル、あるいは狂牛病とか、何なら放射線とか、とにかく「全」とか「ゼロ」とかを求める欲求があり、その延長線上に、此度の騒動があるような気もします。
要は「きわめて稀」でも、死が有り得ること自体に耐えられない。そういう人が増えたということではないでしょうか。人は必ず死ぬのにね。
殺処分に鈍感な人々に問いたい。
もともと仮初の命が「きわめて稀」に失われる、かもしれないというだけで、その可能性と引き換えに、万単位の「命」を奪うのは良いんですかね。
ミミズだってオケラだってアメンボだって、みんなみんな生きているんだし、友達なんじゃなかったの? です。
こちら、別の新聞ですが、続報。
(東愛知新聞12/9-7面)
県は、感染した鳥の肉や卵を食べてもウイルスに感染することはないと考えられるとして、冷静な対応を呼びかけている。
だからさ、だったら全処分なんてしなければ良いでしょ。
自分達がそういう熱烈な対処をしておいて、人には冷静な対応をって言われても、こちとら、どうして良いか分からないんでございますよ。
行政(とマスメディア)の支離滅裂は、今に始まったことじゃないんだなあ。
愛知県曰く・・・
本県は11月1日(火曜日)から新型コロナウイルス感染の第8波に入り、新規陽性者数の増加に伴い、病床使用率が高い水準にあります。
今後も、医療体制の機能を維持・確保していくため、本日12月8日(木曜日)、愛知県新型コロナウイルス感染症対策本部会議において、「愛知県医療ひっ迫防止緊急アピール」の発出を決定しました。
「愛知県医療ひっ迫防止緊急アピール」に基づく感染拡大の抑制に向け、県民・事業者の皆様には改めて感染防止対策の徹底をお願いします。
・・・だそうで。
「愛知県医療ひっ迫防止緊急アピール」感染拡大の抑制に向けた県民・事業者の皆様へのメッセージ
いやいや・・・「オール愛知一丸となって」とか言われましても。
「愛知県医療ひっ迫防止緊急アピール」に基づく感染防止対策・パネル(2022年12月8日~2023年1月15日)
いやいや・・・バ○の一つ覚えのように「医療ひっ迫防止」とか言われましても。
県によると「第七波」で、新型コロナが原因で死亡した人はいない。重症者は他の病気が原因で重篤な状態となっている人がほとんど。
って話だったんだから、そりゃ「第8波」だって、新型コロナが原因で死ぬ人はいないでしょ。
なのに、相変わらず「キラーウイルス」「死病」であるかのような扱い(いわゆる1.5類相当)をやめないから医療が逼迫するんで。
大村さんも、やっぱり支離滅裂だ。