1454号「東南アジアでの不思議な体験」


 (強盗の家に行った話)


 砂辺光次郎

 講義録1454号

 (2008/12/2)


 ★次回以降の予定★

 「ラテン系で行こう!」

 「ドラッガーは何を言ったか」

 「私は再びチャンスを与えられた」

 「武闘派・列伝」

 「岡本太郎の成功論」

 「本田宗一郎の成功論」

 「山岡鉄舟の成功論」

 「鑑真和尚とピカソの成功論」

 ・・・・・などです。

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  (ここから本文です。)


 1454号「東南アジアでの不思議な体験」


 (強盗の家に行った話)



 若い頃、東南アジアに一人旅をした。


 その頃はまだ海外旅行の一人旅に慣れていなかった。


 現地について、とりあえずメナム川の付近を歩いてみた。


 川に小舟が点々と並んでいた。


 そのうちのひとつの小舟に青年が乗っていた。


 私に対して、「こっちへ来いよ。」というように手招きしていた。


 近くまでいくと、「舟に乗せてあげましょう。」と身振り手振りで示していた。


 私はすっかりうれしくなった。


 「この国の人はフレンドリィだな。」と思った。


 私が小舟に乗り込むと、青年はすくっと立ち上がり、いきなりエンジンをかけた。


 「あっ、エンジンがついているのか。」と思った。


 青年は、無言のまま、舟を上流へどんどん進めていった。


 だんだん周囲が、ジャングルのようになってきた。


 人家はまだ並んでいて、川に突き出たカタチで建てられていた。


 「ずいぶん奥地に来たなあ。」


 と思った。


 「しかし、こんなところにはなかなか来れないな。これはいいチャンスだ。」


 と思った。


 20分ほどたって、その青年が、私に対してお金を出せというような身振りをした。


 「何だ強盗か。」と思った。


 しかし、わざと意味がわからない、という顔をした。


 どうしようか、と思った。


 ためしに、片言の現地語で


 「君の家に行きたい。」


 と言ってみた。


 強盗の顔が、ぱっと明るくなった。


 このとき、「勝った。」と心の中で思った。


 青年は、一軒の家の前で小舟を止めた。


 私は青年にすすめられて、階段を上がっていった。


 木でできたぼろい階段が、ギーギーと音を出している。


 上がると、木造のバルコニーらしきところに出た。


 バルコニーはなかなか快適だ。


 眺めもなかなかいい。


 空気もきれいだ。


 強盗は家の中に入り、何かしていた。


 しばらくすると、小さい女の子が、「どうぞ」と冷たい飲物を運んできた。


 強盗の妹のようだ。


 「ありがとう。」と言い、しばらくいすに座っていた。


 強盗の青年が、私のほうをじろじろ見ている。


 しばらくして、私は「もう、戻ろう。」と強盗に言った。


 強盗は、「うん、うん」とうなずいて、私を再び小舟に乗せた。


 小舟で川を下る途中、この青年が、再びすくっと立ち、金を出せ、という身振りをしてきた。


 見ると、目がおびえていた


 彼も必死なんだな、と思った。


 彼も、生活がかかっているんだ。


 妹にこの商売で学校に行かせているんだ、と思った。


 しかし、私も、そんなにお金がなかった。


 私は要求額を半分に値切った。


 (日本では、学生バイトが1日で稼げる額だ。)


 金を出したあと、最初の所に何とかたどり着いた。

 私は舟から下りた。


 強盗に向かって、「バイバイ」と手を振った。


 そのとき、強盗は、少しまぶしそうに自分を見ていた。