「親と対立している高校生1」

砂辺光次郎

講義録1092

(2008/04/17)

 まず、身近なことから書きたい。一般論はそのあとに書いたほうが分かりやすいと思う。

 高校生のA君という子がいる。その親子のことはだいぶ以前から知っていた。

 その母親は、子供に大いに期待していた。

 そこまでは普通だが、その母親の子供に対する圧力がすごく強かったと感じている。

 母親は、その子供が「いい子」であり、「できる子」であることを普通以上に強く求めていた。

 これは、母親に劣等感があり、世間の中で「いい子を育てて勝ちたい」「見返したい」という気持ちがあったのだと思う。

 この母親は、子供を自分の路線に乗せたかった。まずは、学校の成績を上げることだった。そのため、まずは、「おとなしい子」であり、「母親の言うことを聞く子」でないと許さなかった。

 おとなしくて従順であれば、ほめた。

 なかなかほめない母親であったが、「勉強ができ」、「親の言うことをハイハイと聞く子」であればほめた。

 こういった母親の場合、その子供の立場からすると、母親からの圧力というか、圧迫感は大変なものがある。

 この子供はこの圧迫を感じたまま、幼少期を過ごし、小学生時代をすごした。

 小学校も高学年になると、そろそろ母親の言っていることにうんざりしてくる。つまり、そろそろ反抗期が来る。小学校高学年になるにつれて、子供はしだいに母親に反抗し始めた。

 表面上は、母親が何か言うことに対して「ちぇっ」と言ったり、「なんだよう。」と文句を言ったりする程度であった。

 無意識の世界では、「僕を認めて欲しい」「甘えたい」という叫びだったと思う。

 こうして子供が反抗してくると、母親のほうは「最近、言うことを聞かなくなってきたわねえ。」「ダメな子」と言うようになる。

 そこで母親はますます押し付けようとする。

 息子のほうは、ますます反発してくる。

 こうして親子対立がだんだんはっきりしてくる。

 こういうとき、子供のほうはどういう態度を取るかと言うと、個性によってそれぞれだ。

 たとえば、敏感体質の子や、気弱なタイプの子は、暗くなったり、元気がなくなったりする。そしてたいていの場合、心の奥に、うらみや憎しみを宿す。

 気の強い子の場合は、母親に対して目に見える形で強く反発してくる。

 いろいろな対立の仕方があるから一概には言えないが、親のいちばん嫌がることを選ぶ子が多い。

 タバコをするようになるのがいやだな、と思っている母親に対しては、タバコをすうようになる。

 受験した学校に落ちるのがいちばん母親に打撃を与えると思えば、人によっては、わざと試験で落ちる。

 試験に落ちたあと、母親ががっかりする顔を見て、「ざまあみろ」「さっぱりした」という顔をしている。

 あるいは、学校に入ってから、母親の嫌がることをする子もいる。自分の将来のこともあるから、学校には入ったが、そこで母親の嫌がることをする。

 髪の毛を金色に染めれば、母親に打撃を与えるだろうと思って、金色に染める子もいる。

 もちろん子供のほうも「金色に染めるのが好きだ」という気持ちも半分ぐらいはあるかも知れない。また、自分の将来のことも考えて、悔しいけど、ある程度のところで止めたりもする。

 自分の保護も考えているが、同時に、母親への反発も行う。

 ではどうしたらいいのか。

 私などは、いろいろな心理学や教育論を読んでも結局よく分からなくなってくるのではないかと感じている。狭い範囲だけを「よし」として、少しはずれると「異常」とみなしているようで、「狭いなあ」と感じる。もっと、おおらかに育ててもいいのではないか、と感じる。

 だいたい、個性の違いをもっと認めてもいいのではないか、と思っている。

 たとえば、個性の違いということで言うと、敏感体質と敏感でない体質がある。あるいは、弱い性格と、強い性格がある。

 そこでたとえば強い性格の親が、敏感体質の子供に「男らしくなれ」と言っても、親の思う通りにはならないだろうと思う。

 そういった個性の違いを認識していたほうがいいと思う。

 そこで、とりあえずの結論としては、まずは、ほめる、と言うことだと思う。

 また、子供たちも、プライドを傷つけられると、かなり心は離反してしまう。プライドを傷つけないことが大事だと思う。そこでその子のプライドを尊重する、と言うことが大事だと思うが、プライドを尊重すると言うことは、その子の意思を尊重する、と言うことと、その子の個性を認める、と言うことだと思う。

 実際の表現としては、何か決めるときにはその子に「相談的に」決める、ということがいいのではないかと思う。

 (文章が長いので、以下省略)