ヘルメス思想とは、『ヘルメス文書』に見られる「オカルト哲学」のことです。オカルトとは、「隠された」あるいは「密教の」という意味があります。また、「人知の及び難い自然の諸性質を扱う」という意味もあります。

『ヘルメス文書』は、ヘルメス・トリスメギストスが弟子に伝授する形で書かれた書物です。ヘルメスは西欧神秘主義の多くが祖とする神であり、霊魂を冥界に導く役割と秘儀の支配者としても知られています。

『ヘルメス文書』は、紀元前3世紀頃、エジプトのアレクサンドリアで編纂されたといわれていますが、もっと古い可能性もあります。

『ヘルメス文書』がヨーロッパで知られるようになったのは中世です。

『ヘルメス文書』は、錬金術、自然哲学、魔術、神智学、降神術、宇宙観など、あらゆる分野におよび、新プラトン主義に結びつく思想です。

ここで扱う魔術とは現代考えられているものとは異なり、自然界を理解するための科学と表裏一体のものでした。

魔術とは目に見えない不思議な働きを捉えようとする学問であり、幾何学、絵画論、軍学、天文学、工学、音楽論、占星術などを内包していたのです。

マジックの語源である「マギ」は、神秘的、宗教的知識を持つ知識人を指しています。それは、イエス降誕の際、現れた東方の3博士が「マギ」と言われたことからも分かります。


ヘルメス思想は、ルネサンスや近代科学を生み出す原動力の一つとなり、実験科学や化学、天文学などの基礎となりました。