ところで経済産業省に行ったことありますか。 | ヘリテージング見聞ログ@BLOG

ところで経済産業省に行ったことありますか。

 718日(金)の午後、経済産業省で「平成20年度第1回産業遺産活用委員会」が開かれるというのでノコノコ出かけてみました。この会議は公開制なので申し込めば誰でも傍聴できるのです。

「遺産活用」という言葉が使われていたので、ヘリテージングの普及をライフワークにしているオッサンとしては、古い産業遺産にお国がどんな活用アイデアを示すのか、目からウロコを期待して行ったわけです。

経産省は昨年、「近代化産業遺産群33」という認定事業を行いました。(とてもよくできているので、このホームページのリンク集でも紹介しています)今年も新たな33を選び出そうと開かれたのがこの委員会です。

さて近代化遺産といっても、そこは経産省、やはり「産業」にこだわった選定枠があります。その点、古い教会や学校などの「生活遺産」や、レトロな師団本部、旧陸軍偕交社などの「軍事遺産」にいたるまで、魅力ある近代遺産ならすべてを観光対象とするヘリテージングにくらべると、「産業遺産」だけでは観光活用という面で見劣りがします。33の選定ストーリーもよくできていますが、学術的ではあっても(観光)活用的な視点が感じられず、一般人にはついていけないところもあります。

産業遺産は近代遺産の中核を成す宝物なのだから、ヘリテージングの立派な仲間です。壁を設けるより、日本の新しい観光ムーブメントの主役として堂々と観光デビューさせたほうが得策ではないかと思うのですが…。

委員会はNHKの松平定知氏ら文化人、学識経験者が13名、国土交通省や文化庁からのオブザーバーが4名、さすがに錚々(そうそう)たるメンバーです。それぞれ専門的な立場からの発言はとても勉強になりましたが、こちらが勝手に期待した「活用」に関する発言はほとんどなく、何を選ぶべきかという選定方法に終始していたようです。

重箱の隅をつつくようですが、「活用」の二文字は修飾語にすぎないのでしょうか。これは、地方で行われる「産業遺産活用フォーラム」などにもいえることですが、誰のための活用なのかという最重要な視点が等閑(なおざり)にされているように思えてなりません。誰のための活用か、それはいうまでもなく「観光客」のためです。これがうまくいかなければ地域活性も町づくりもありません。

さて、この産業遺産33に選ばれると、当該施設にはオスミツキの金属プレートが贈呈されます。すでに各地の施設に多数飾られ喜ばれているという事務局からの報告がありました。永久保存を目的とする文化庁の重文プレートならいざしらず、勲章授与みたいなことと産業遺産の活用とどう結びつくのかその先が見えません。選別には知識が必要、でも活用は知恵を絞る作業です。単年度ごとの報告書づくりのための認定事業で終わらぬよう、持続的「活用」アイデアの創出を「活用委員会」に期待します。以上、霞が関からのレポートでした。(T. A.