この日、東京・渋谷で開催された『シブヤ区アキハバラ』というイベントにMARY'S BLOODが出演した。


メアリーのライブは先週の日曜にも観たばかりで、おまけに平日だが、たまたま時間が取れたのと、メタルとは無関係な「オタク系」のイベントに出るというのが珍しいので行ってきた。ちなみに、メアリーは結成当初の持ち歌が少ない頃、ライブでアニソンのカバーを披露していたという逸話がある。


会場は「GLAD」。スケジュールを見ると、普段はヒップホップ系のイベントに力を入れているらしい。男性客はサンダル履きでの入場禁止など、独自のルールが設けられていて、かなり敷居が高い感じ。


入場の際、学生服姿の少女たちから観客一人一人にサイリウムが手渡される。彼女らはこの日出演する「ダイヤの原石」というグループのメンバーで、パフォーマンスが良ければ緑、悪ければ赤のサイリウムを掲げてほしいのだという。


トップ・バッターは「鳩サブレーwithホワイトロリータ」。医者の白衣を着たインスト陣とナース姿の女性ボーカルという出で立ちのとおり、80年代の和製ニューウェーブや「イカ天」を彷彿とさせるキッチュなサウンド。ベーシストも女性で、ビリー・シーンを思わせるテクニカルなプレイに目を奪われた。


続く「abnormal psychology」は泣きのギターが印象的な歌謡ロック。アニソンっぽさは皆無。このバンドもボーカルとベースを女性が担当する。とくにベースはドライブ感満点でとても気持ちいい。女子高生のような愛らしい容貌ながら、かなり場数を踏んでいそうな余裕を感じさせた。


しかしボーカリストの方は明らかに体力不足で、息を切らせながら歌っており観ていて心配になる。しかもMCでそれを年齢のせいにして自虐的に笑いを取ろうとしているのがいただけない。このイベントには五十路を過ぎた業界の大先輩も出演するというのに、失礼ではあるまいか。


次は先述の「ダイヤの原石」。あまりにも直接的なネーミングのとおり、アイドル予備軍の十代少女たちが大勢で歌い踊る。セットリストの大半はAKB48や少女時代のカバー。


例の「採点」は中盤の曲の後に行われたが、赤を揚げた観客はマイクで理由を説明しなければならないので責任重大だ。もっとも、そうして当てられた客もメンバーの名前を妙に詳しく知っていたりして、予定調和の節がある。


ラストは、なんと全員でビキニに。さぞかし男どもが前に集まってきて食い入るように観るのかと思ったら、皆“オタ芸”を打つのに懸命なようだった。ある意味ストイックだ。


幕間にやたら豪華なドラム・セットが組まれた後、この日のスペシャル・ゲストである堀川りょうのステージが始まった。ちなみに、今回のイベントで唯一の男性シンガーだ。


アニメに関しては門外漢なのだが『ドラゴンボール』の【べジータ】役で知られるベテランの声優とのこと。長髪を後ろで束ねたダンディな初老の男性で、『聖闘士聖矢』『ルパン三世』『あしたのジョー』といったアニソン・アンセムのカヴァーを、ヘヴィ・メタル調(しかもけっこう“今風”のメタルの刻み)の演奏に乗せて熱唱する。


【べジータ】のテーマ・ソングである『SAIYAN BLOOD』というオリジナル曲も披露。どうせなら『CHA-LA HEAD-CHA-LA』も聴きたいところだったが、親子ほど年の離れた他の出演者たちをも凌駕するエネルギッシュなパフォーマンスに、終始圧倒されっぱなしであった。


続いて登場した「ハルシヲン」は、ユニット名義であるものの実際は若い女性一人だ。親衛隊と思しき中年男性の集団がステージの前を占拠しオタ芸を繰り広げる。


ジャンルとしてはアイドルに属するのだろうが、いわゆるロリータ系とは違い、町の工場(こうば)で経理をしていそうな顔立ち。それでいてサバサバした姉御肌の口調とのギャップが面白い。カバー曲はそつなく歌いこなすのに、オリジナル曲になると歌詞が飛んでしまうというハプニングも。


さてさて。お次が問題の「アンチスター」。結論から述べると、今年観たライブの暫定ワースト1位である。


なんでも「ガクセイウンドウ」とかいうティーンエイジャー向けのバンド・コンテストがあり、そのイメージ・キャラクターである4名の女子高生が、オリジナルのストーリーの中で架空のキャラクターを演じるという趣向らしい。ただこの日はストーリー進行の都合上、その内の2名での出演であった。


まずフロアーが暗転すると、ステージ後方のスクリーンにアニメが流れる。


しかし、これがクソつまらない!


本日登場する2名のキャラクターの馴れ初めを描いているのだけれど、わざとらしいクッサイ台詞に陳腐なストーリー、しかもこれが20分以上続くのだ。またアニメといっても紙芝居に近く、予算の都合なのかはたまた制作者が前衛アートにかぶれているのか知らんが、絵コンテのみの状態で提供される。


当然フロアーはオールスタンディングなので、そのようなものを20分以上、ずーっと突っ立ったまま観せつけられる。もはや拷問だ。


アニメ上映が終わると、ようやく主役の二人とバック・バンドが登場し、演奏を開始する。とはいえ、ステージとフロアーを仕切る形で白い幕が張られ、そこにもアニメが映し出されるので、フロアーから演者は足元しか見えない。もっとも、こちらのアニメはストーリー仕立てではなくPVのような抽象的な映像で、ハードな演奏とリンクしており、悪くない。2曲目に入るとその幕も取り払われ、ようやく全貌を露わにするもこれにて終了。


せめてワンマン・ライブなら問題ないだろう。どうせ熱心なファンしか来ないのだから。しかし対バン形式のイベントには、言うまでもないが一見の客も集まる。それに対し、あのような内輪ノリの独り善がりな演出を押しつけるのは、クリエイターの傲慢ではないだろうか。本人たちの演奏や楽曲自体には惹かれるものがあっただけに、奇を衒ったアピールはかえって逆効果に思える。


もっとも、そうした実験性を評価する向きもあるのだろうし、〈二次元〉と〈三次元〉の融合というコンセプトは理解できる(実際、成功している部分もある)。だがそれなら尚のこと、このレベルで悦に入られても困るので、あえて苦言を呈しておく。


苦あれば楽あり、というわけでもないけれど、ラストはいよいよお目当てのMARY'S BLOODだ。


新曲お披露目会の前回とは打って変わって、新曲1曲の他はミニ・アルバム『ZERO』から6曲中(『PRAY THE MOON』を除く)5曲。さらに2本のギターの音色がきっちり聞き分けられるクリアーな音響で、前回に感じた不満を一掃する、ベストに近いパフォーマンスであった。しいて言えばベースの音が引っ込んでいたことくらいか。


EYEのMCの短さは前回同様だが、この日は年末に発売が決定したニュー・シングルの告知ということで、フロアーを明るく盛り上げていた。スターのオーラ漲る凛々しいステージングもさることながら、こうした硬軟の表情の使い分けにもフロント・マンとしての実力を見て取れる。


終演後、メアリーのメンバーに挨拶してから帰りたかったが、この後に別のイベントが入っているということで観客は速やかに締め出され、物販も早々に撤収させられていた。イベントのトリを贔屓の演者が務めるというのはファンとしても誇らしいけれど、グッズを売る時間すらなくなるのは考えものだ。