[ Reborn ]
が上がらなくなる位
一心不乱にクワを振りかぶっていると
土の中から古びた鞄が現れた。
鞄の表には東芝府中工場と書かれていて
恐る恐るそれを開けると
一万円の札束がぎっしりと詰まっていた。
人の気配を背後に感じ
振り向くとあの3億円犯人だった。
2人の壮絶な取っ組み合いになり
彼の振りかざした刃物は
私の腹部を貫いた。
午前3時。
嫌な悪寒と喉の痛みで
夢から覚めた。


達夫婦は遥か昔、
親も公認の婚前旅行に出掛けた。
それも大晦日。


新年に向かってカウントダウンし、
2人して初詣をする位のお手軽旅行で
神戸は生田神社のすぐ近くにある
ホテルモントレーに泊まって
初春を祝おうという計画だった。

過ぎにも関わらず
神戸三ノ宮や元町界隈は活気に溢れ
大勢の買い物客や参拝客で
ごった返していた。
私はその日少しばかり体調が悪く
年越しそばさえも喉が通らず
少し熱があるんじゃないの?
と妻は繋いだ手の熱さで
そう言い当てた。
みるみる体調が悪化していき
ホテルにチェックインした頃には
悪寒で歯がガクガクと鳴る位
最悪の状態となっていた。
ホテルで借りた体温計は
40度近くを示していて
2人で思案の末、宿泊をキャンセルし
お互いの実家で新年を迎える
悲しき結果となった。

宅へ戻り
救急扱いで病院に到着したのは夜10時頃。
かかりつけの病院の先生は
快く受け入れてくれ
すごく救われた気持ちになった。
寒さで震える体、度重なる咳。
先生は聴診器を当て喉の奥を検診すると
インフルエンザですな。
と、低くしわがれた声でそう言った。
すぐさま腕に注射を一本。
今では処方薬に注射は聞かなくなったが
当時注射をするという事は
それだけで治るという安心感があった。
帰りには医薬用イソジンうがい薬と
頓服薬を処方され、
新年を迎えた2日目の昼頃には
驚く様な回復劇をみせた。
どれだけの汗が私の体から出たのだろう。
敷き布団のシーツ上には
体の形を縁取った塩の結晶が
面白い様に点在していたのを思い出す。
しかし、
あの注射の成分は
何だったのか未だに謎なのだ。

ロナウイルス感染は未だ終息しない。
ごく近いところではお孫さんが通う
保育所の先生が発症したらしく
とうのおじいちゃんは心配でならない。
妻も言う。
近所のスーパーでは
パートタイマーの奥さんが発症とか。
ジワジワ私の周りに
コロナの恐怖が押し寄せてきている予感。

は戦々恐々としながら
同僚のLINEを見ながら
吸い込んだリレンザ(注)
使用済みカートリッジをゴミ箱に放り込んだ。


(注)インフルエンザの特効薬