(前記からのあらすじ)

謎の声から進展が無いまま
約1ヶ月が経ち、
教官付き運転や荷卸し業務に合格し、
1人乗りの作業としてハンドルを握る
毎日を送っていたが
あの夜の恐怖を残したまま
最終納品である某病院に
トラックを走らせていた。


音台車(家庭用の汎用台車)と
私の靴音だけが響く廊下の最後は
ガラス製でお馴染みの
自動ドアがある。
時間外は手動になっている為、
力ずくで右方向へスライドし、
中通路に出ないといけない。


上の画像は実際の中通路を
撮影したもの。
異様な静けさの中、
夜間一番奥の暗い所まで行くには
かなりの怖さを伴う。
待ち合いスペースや
生ゴミのストックヤードを通りすぎ、
約100㍍程歩いて
照明スイッチの場所に到着すると
電源の保護カバーを上に跳ね上げ
スイッチを押す。
するとLEDの白い光に照らされた
納品用の2基のポナコンが現れる。
病院側から預かっている
専用の鍵を出し
ポナコンに近づいたその時、
!!!!
手前の業務用エレベーターのドアが
スーと開いたのだった。

実際のドアを撮影。右側がポナコン

断っておくが許可された施設以外に
入室もしくは手を触れる行為は
常識的にも違法であるし、
コンプライアンスの面においても
会社から厳格に処分される。
作為的に開けたものでは無い事を
断言する。
腰が抜けそうになった。
しかし(証拠画像を撮りながら)
納品を終えないといけない私は
負けるものかと、強く心に念じ、
いつもの倍くらいの時間を要して
やっとの思いで納品を完了した。
視野を拡げず伏せ目がちに
トラックに戻ったが
イグニッションスイッチを回す手は
小刻みに震えていた。
帰りの車中、
頭の左側を刺す様な頭痛が起こり
深夜の道路をどう帰ったのか
記憶が無い。
終業のアルコール検知を終え
自宅に戻った私は
鏡に写る自分の顔を見ながら
脳梗塞を疑った。

ると左耳の5㌢位離れた所に
違和感をおぼえた。
私の耳元に
誰かが手をかざしている様な
そんな変な感じだった。
左を見ても誰もいない。
すると今度は耳元で
パクパクと音がするのだ。
鏡を見ながら女性が口紅をつけた時の
あの“パクパク”と全く同じ音。
幻聴かも?
我を疑いながら次の日に休みを取り
飛び込みで脳神経外科へと出掛けた。


高齢者が待合室に溢れかえり、
問診票に記入してから、
MRI撮影まで2時間弱。
ようやく診察室に呼ばれると
全く問題の無い
きれいな脳です。
白髪混じりの短めのロン毛、
どっしりとした低音の担当医は
そう呟いた。
モニターに写し出された私の脳は
医師のマウスによって
縦横無尽に操られ
脳血管の細部までをあらわにした。
処方薬の勧めも無く
窓口で料金を支払った後
“あの頭痛はなんだったのか”
という疑問が頭の中で一杯になった。

がっていては前へ進めない。
私は拒む事無く、
強い心で対峙しようと
そう決めた。